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へへへ、芸術ね。お前もよくぞここまでやったもんだ。大概は始めて三日くらいで馬鹿らしくなっちまってフェードアウトするのが落ちなんだけどな。まあ凝り性なのは認めるよ。へへ、そういうのは根気強さっていわねえんだよ。本当に根気強い奴ははなっから芸術なんかに手を染めねえもんだ。曖昧なもので誤摩化さずに地をしっかり踏みしめて生きてる。そうじゃねえか。芸術って何だ?と言われてお前明確な答えがでてくるか?出てこねえだろう?そりゃあ大分ふわふわしてるよ。
それはそうと、あの作家についてだ。お前がずっと憧れ慕ってきたあの作家先生だ。この間ネット上に動画がアップされていたんだが、お前見たか?ありゃあ大したビジネスマンだよ。いや、もうサラリーマンだねありゃ。隣にいる偉い老作家に媚び諂ってな、ボケて受け答えもままならない爺さん先生をいとも巧みにフォローしてたよ。淋しいだろう?お前にはあんな芸当は無理だもんな。まあまだ見てないならチェックしてみろ。きっと自分にはやっていけそうにないなあ、なんて溜め息をつく事になるから。前の奴と言う事が重複してるけどな。ほんとにその通りだよ。
いや、俺は別にお前を芸術から引き剥がそうってんじゃないんだ。そこが前の奴とは違うところさ。書く事を止めちまったとしても、お前には取り立てて他にやる事もないんだろう?暇を持て余しているだけだろう?じゃあ続けていれば良いさ。別に他人に迷惑がかかるわけでもなかろうからな。お前がそのせいでどんな生涯を歩む事になろうとも俺の知った事じゃない。
でも俺には一つだけ関心がある。お前は無謀だと分かっている事を、日の目を見ないと分かっている事をどうして飽きもせずに続けているんだ?俺だったらとっくに止めてるね。まあお前は俺じゃないから、感じ方は違うんだろうし、俺が止めろと命令することはできない。それにしてもだ、それはどういう考えでやってるのかを一応聞いておきたいというのはある。お前の末路には興味がないが、そこには少し興味があるね。
金か?無駄だぞ。作家で食っていける可能性すら限りなく低いって言うのに、増してそれで金持ちになれる可能性なんざあほぼゼロだ。いや、もう完全にゼロだと言い切っても良い。物書きは貧乏だと昔から相場が決まっているんだ。お前がイケメン俳優でもない限り駄目だ。何?違う?金の為じゃないって?じゃあ名声か?馬鹿な。それはもっと無理だ。お前が思っている程世間の人は本を読まない。増して純文学なんて殆ど読まれない。まあ既に評価の定まった古典ならいざ知らずだ。どこの馬の骨とも分からん現代作家の純文学何て誰が読む?何の役にも立たん、映像化もされなければ大して話題にもなっていないものをだぞ?要するに純文学の作家になったってお前の事なんざ今まで通り誰も知らねえって事よ。何?それも違う?本当か?お前嘘ついてるだろ?じゃあ何だ、暇つぶしか?後世にまで名を残したいとか?何?自分でも分からない?けっ!話にならねえな。もういいよ。俺には到底理解できん。理解したくもねえな。
おい、明日も仕事だろ?早く寝ろよ。寝坊すんぞ?お前の仕事はそれじゃねえだろ?




