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 猫が死んだ。名前をビビと言った。十二歳だった。俺は生涯で初めて、心の底から、本当に悲しい気持ちになった様な気がした。母や弟は俺よりも悲しんでいたようだ。思い出話をするとすぐに涙ぐんだ。

 十二年も一緒に暮らした。その間ずっと、あいつには言葉が無かった。十二年間一言もしゃべらなかった。それでいて言葉では表現しきれない程の愛らしさを持っていた。あいつは間違いなく言葉以上の存在だった。存在は、ただそこにいてくれる事は、どんな言葉よりも素晴らしいものだと思った。

 ビビ、もう十二月だ。もうすぐ年が明ける。俺は君を長いトンネルの中に置き去りにして、一人明るい出口の方へ歩いている様な気がしている。そのことになんだか戸惑いを覚える。後ろ髪を引かれている。

 君は今も何処かで俺を見ていてくれているだろうか。


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