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異世界の仕様書を拾った元廃ゲーマー、世界のバグを攻略する  作者: Naoya


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第7話 白紙の本

「本当にこっち?」


「合ってる」


 エリスと森を戻る。


「この辺で狼に追われて――」


「よく生きてたわね」


「途中に遺跡なかったら死んでたと思う」


「笑えないわよ」


 やがて石造りの入口が見えた。


「これ」


 エリスが眉を寄せる。


「……知らない」


「新発見?」


「嬉しそうに言わないで。未知ってことは危険も未知なの」


「でも新発見?」


「たぶん」


「おお」


「だから喜ぶな!」


 遺跡へ入る。


 エリスが《イグニッション》の炎を照明代わりにする。


「便利だな」


「魔法は戦うだけに使うものじゃないわ」


 壁の古代文字。


「読める?」


「私は考古学者じゃないわよ」


「専門家いるんだ」


「そりゃいるでしょう」


 奥へ進む。


 その時。


《接地状態変化》


《構造安定性低下》


「止まって」


「え?」


 俺はエリスの腕を掴んだ。


 直後。


 前方の床が崩れ落ちた。


「…………」


「危なかったな」


「なんで分かったの?」


「……勘」


「嘘」


「早いな」


「今のは勘じゃないでしょう」


 鋭い。


 俺は黙った。


 するとエリスは少し考え、


「……言いたくないなら今は聞かない」


「いいの?」


「助けてもらった直後に無理やり聞き出すほど性格悪くないわよ」


 そう言って先へ進んだ。


 その言葉で。


 少しだけ考えが変わった。


 《世界仕様書》を見つけた場所へ戻る。


「ここで拾ったんだ」


「何を?」


「……一つだけ見せたいものがある」


 インベントリから本を取り出す。


「本?」


「開いてみて」


 エリスが開く。


 数ページめくる。


「……何も書いてないけど」


「やっぱり」


「やっぱりって?」


 俺が受け取る。


 俺には見える。


WORLD SPECIFICATION


「俺には読める」


「何が?」


「世界の……仕様」


「仕様?」


「物がどう動くとか、何を一個として扱うとか。そういう決まり」


 エリスの顔。


 完全に怪しんでいる。


「宗教?」


「違うと思う」


「思うなの!?」


 簡単な実験を見せる。


 木についている枝。


 収納できない。


 折る。


 収納できる。


「収納系なら普通じゃない?」


「じゃあこれは」


 泥のついた石。


 収納。


 石だけ消え、泥が落ちる。


 エリスが少し黙った。


「……偶然?」


「俺も最初はそう思った」


 全部は話さない。


 異世界人。


 《ログ》。


 管理者。


 まだ伏せる。


 でも、この本だけは共有する。


「それ、本当に持ってて大丈夫なの?」


「俺も思ってる」


「なんで嬉しそうなのよ」


「世界の仕様書だよ?」


「だから危ないって言ってるの!」


 さらに奥へ。


 やがて巨大な石扉。


 そして離れた床に、不自然な石板。


 エリスが踏む。


 ゴゴゴゴ……。


 扉が開いた。


「……スイッチ」


「みたいね」


 エリスが足を離す。


 扉が閉じる。


「一人が踏んで、一人が先へ進む仕掛けか」


「たぶん」


 俺は扉を見る。


 そして。


 少しだけ目が輝いた。


「……何?」


「何でも」


「今絶対よくないこと考えたでしょう」


「まだ何もしてない」


「“まだ”って言った!」

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