第6話 魔法使いエリス・レイフォード
「とりあえず森を出るわよ」
エリスはそう言って歩き始めた。
「こんなところに一人でいたら、そのうち本当に死ぬから」
「助かる」
エリス・レイフォード。
十八歳。
C級冒険者。
火属性魔法使い。
「Cってどのくらい?」
「……そこから?」
ランクは下から上へ。
上位にはS級まであるらしい。
「じゃあ結構強いんだ」
「まあね」
少し得意げだった。
「冒険者ギルドもある?」
「あるに決まってるでしょう?」
「本当にあるんだ……」
「だからその反応何なの?」
「いや、俺には珍しくて」
「どんな田舎なのよ」
「……まあ色々」
危うい。
気を抜くとすぐボロが出る。
「で、魔法なんだけど」
「まだ聞くの?」
「聞く」
「即答しないで」
エリスは呆れながらも説明してくれた。
魔力。
属性。
適性。
術式。
「これが《イグニッション》」
杖先に小さな炎。
「おお……」
「まだ感動するの?」
「する」
炎へ近づく。
「これ熱い?」
「火なんだから熱いわよ」
「術者は?」
「制御してるから平気」
「制御……」
また新しい言葉。
「術式完成、魔力投入、現象発生……この順?」
「だいたいね」
「魔力っていつ減る?」
「……何?」
「発動時? 術式を作った時?」
「そんなこと気にして魔法使う人、初めて見た」
「途中で止めたら?」
「危ないわよ」
「何が起きる?」
「だから試さないの!」
「試してないなら分からなくない?」
「なんでそうなるのよ!」
面白い。
魔法そのものも。
エリスも。
俺はこっそりログを見る。
《火属性現象》
《詳細情報:閲覧権限不足》
「やっぱりロック……」
「何が?」
「何でもない」
今度はエリスが質問した。
「リクは何ができるの?」
「何って?」
「剣とか魔法とか」
「たぶん無理」
「たぶん?」
「剣なんてまともに振ったことない」
「じゃあ本当に何で森にいたのよ……」
「気づいたら」
「そればっかりね」
「一応、これなら」
石を取り出す。
収納。
消す。
再び取り出す。
「空間収納?」
「似たようなもの」
「……珍しいスキル持ってるのね」
とりあえず《インベントリ》は収納系能力で押し通せそうだ。
「エリスの目標は?」
「S級」
「一番上?」
「もちろん」
即答だった。
その目は少しだけ強かった。
「へえ」
「何よ」
「いや、いいなと思って」
歩きながら、ふと思い出す。
「そういえば」
「何?」
「この近くに遺跡があるんだけど」
エリスの足が止まった。
「遺跡?」
「石造りの。結構古い」
「……この森にそんな場所あった?」
知らない?
「案内できる?」
「できると思う」
「なら行きましょう」
「戻るの?」
「未知の遺跡ならギルドに報告が必要よ」
俺にも戻る理由はある。
《世界仕様書》。
あれが落ちていた場所。
「分かった」
ただし。
あの本のことは、まだ黙っておこう。




