第3話 それ、仕様なのか?
翌――と言っていいのか分からないが、しばらく検証を続けた結果、一つ分かったことがある。
どうやら《インベントリ》へ入れられるのは、独立した物体らしい。
木についている枝は無理。
折れば入る。
地面に生えた草は無理。
抜けば入る。
岩盤の一部は無理。
転がっている石なら入る。
「ゲームのオブジェクト判定みたいだな……」
独立した存在として認識されているかどうか。
そんな感じがする。
次に見つけたのは、小さな川だった。
「水……」
正直、かなり助かった。
喉が渇いている。
とはいえ、このまま飲むのは少し怖い。
手で水へ触れる。
《収納しますか?》
「入るんだ」
収納。
水が一部消えた。
「液体も一個扱いできるのか……?」
気になる。
ものすごく気になる。
だが今は飲み水の方が大事だ。
少量取り出して確認する。
透明。
匂いも変ではない。
「……まあ、死ぬよりマシか」
口にする。
冷たい。
「うま……」
水を確保。
これで少なくとも即座に干からびることはない。
そこからまた森を歩いた。
途中でも気になるものがあれば触ってみる。
収納できるか。
ログはどう出るか。
「これも独立……こっちはダメか」
夢中になっていた。
だから。
背後の唸り声に気づくのが遅れた。
「……ん?」
振り返る。
灰色の毛。
鋭い牙。
大きさは普通の狼より明らかに大きい。
「……モンスター?」
一瞬だけ、胸が高鳴った。
「本物……?」
ゲームでしか見たことがないような生物が、目の前にいる。
すごい。
そう思った次の瞬間。
狼が地面を蹴った。
「――無理!」
俺は走った。
好奇心より生命の方が大事だった。
「速い速い速い!」
後ろから足音。
振り返れない。
でも気になる。
どれくらい速い?
曲がる時の速度は?
何メートルまで追う?
「今考えることじゃないだろ!」
自分にツッコミを入れながら走る。
木々の隙間。
岩。
そして――石造りの建物。
「遺跡!?」
森の中に半分埋もれるように、古い石の入口がある。
考えている暇はない。
飛び込む。
数歩走って振り返った。
狼が入口まで来る。
――止まった。
「……?」
唸り声を上げる。
しかし入ってこない。
数秒。
やがて狼はゆっくり後退していった。
「助かった……」
その場に座り込みそうになる。
視界にログ。
《領域移動を確認》
《追跡接続を解除しました》
「追跡……接続?」
さらに。
《WARNING》
《定義情報との不整合を検出しました》
「……不整合?」
気になる。
でも。
入口の外を見る。
狼が完全にいなくなった保証はない。
「ここから出たら、あいつの餌食……」
なら。
「中を進むしかないよな」
俺は息を整え、薄暗い遺跡の奥へ向かった。
壁に触れる。
ログ。
《対象情報を取得できません》
《未登録》
「未登録……?」
ただの石壁に見える。
なのにシステムは認識できていない。
「……なんなんだ、この遺跡」




