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異世界転生した看護師の規格外な冒険物語 ※なお、スキルに頼れたのは最初だけ(悲)〜冒険編〜  作者: VANRI


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闇の国

 太陽の光が降り注ぐ世界を背に、私たちの乗ったドラゴンは、ついにその境界線を越えて『暗黒の国』へと突入した。


 ――その瞬間、世界がガラリと色を変えた。


 昼間であるはずなのに、頭上は重苦しい漆黒の暗雲に覆われ、まるで深い夜の底に沈められたかのように薄暗い。

 肺に流れ込む空気はひどく冷たく、まるでドロリとした粘り気があるかのように重苦しい。大気そのものに禍々しい闇の魔力が満ちており、肌に触れるだけで、元看護師としての私の防衛本能が「ここは異常な世界だ」と激しい警鐘を鳴らし続けていた。


 ――グルゥゥオオオオ!!!


 おぞましい大気に息を呑んだ直後、引き裂かれた霧の向こうから、闇の魔力によって全身の皮膚が赤黒く変異した狂暴な大型魔獣の群れが、私たちのドラゴンを目掛けて一斉に飛びかかってきた。


「メアリー! 教えた通りにやってみろ!!」


 先頭のゼインの鋭い声が響く。私は深く息を吸い込み、両手へ意識を集中させた。 左手には、おばあ様が命を込めて遺してくれた『魔力封じの石』が組み込まれた魔剣。 右手には、新しくなった私の炎の魔剣。


「……いっけぇぇええええ!!!」


 迫り来る魔獣の群れに向けて、私は左手の魔剣を突き出し、同時に右手を天へと掲げた。

 その瞬間、カルミラの手枷と魔剣が左手側で激しく共鳴し、目に見えるほどの透明な『アンチ魔力の波動』が放たれる。直撃した魔獣たちの闇の魔力が一瞬で完全に封印され、彼らの動きがピタリと硬直した。


 そして――魔力封じの力が左手だけで完結しているお陰で、私の右手からは、かつてないほどの最大火力の炎のレーザーが爆発的に解体された!


 ドゴォォォオオオオン!!!!


 一閃。闇を封じられた魔獣たちは、防ぐ術もなく右手の劫火(ごうか)によって一瞬で灰へと帰していく。


「すっ、すごい……!  本当に、魔力封じと魔法の同時発動ができるなんて……っ!」


 フランが驚愕の声を上げ、トニーも、「これならどんな闇の魔術にも対抗できるぞ!」と、大歓声を上げる。リオールも「メアリー、かっこいい!」と目を輝かせていた。


 これが、私の手に入れた世界に唯一の新しい力。 


 勢いにのったまま、私たちはカイトの空中索敵とナターシャの道案内により、魔獣の群れを次々と退けながら、アーシュの囚われている黒き居城の目の前へと辿り着いた。


 だが、さすがは本拠地というべきか。城の巨大な城門の前に着いた瞬間、地を揺らすほどの地鳴りと共に、これまでとは次元の違う超巨大な闇の守護魔獣(ガーディアン)が私たちの前に立ち塞がった。


「ガァァァアアアアン!!!」


 守護魔獣が放った、おぞましい魔力の衝撃波がドラゴンの足元を爆破する。凄まじい爆風に吹き飛ばされ、私たちはドラゴンの背から硬い地面へと無残に放り出されてしまった。


「くっ……、みんな大丈夫!?」


 立ち上がろうとした私の視界の先で、守護魔獣の巨大な質量が、私を踏み潰そうと天高く振り上げられていた。衝撃で魔剣を手放してしまい、しかも恐怖で身体が硬直して動けない。


 嘘、間に合わない――!


  ゼインやトニーたちが叫びながら手を伸ばすのが、スローモーションのように見えた、その絶対絶命の瞬間だった。


 キィィィン――ッ!!!


 一筋の、眩い銀色の閃光が、暗黒の空気を鋭く切り裂いた。


 ズドォォオオオン!!!


 凄まじい金属音と共に、私を踏み潰そうとしていた守護魔獣の巨体が、真横から強烈に弾き飛ばされて地面へと転がった。


 冷たい風が吹き抜ける中、私の目の前に、サラサラとした美しい銀色の長い髪をなびかせた、中性的で端正な美青年が立っていた。

 そのシルバーの瞳が、私を見つめて優しく、不敵に細められる。


「お待たせしました、メアリーさん。……約束通り、暗黒の国へ駆けつけましたよ」

「アーサー……!!」


 人間の姿のまま、愛用の剣を肩に担いで、これ以上ないほど格好よく私を救い出してくれたアーサー。

 自国の仲間たちの救出を終え、この決戦の地へと見事に凱旋してくれたのだろう。


 私が感動で胸を熱くさせていた、まさにその直後だった。


「――ってお前、てめえええええ!!! なに一番いいタイミングで、いいとこ取りしやがってんだよ――っ!!!」


 後ろから、頭から煙を噴き出しそうなほど真っ赤になったフランが、怒り狂いながら猛スピードで突っ込んできた。


「ああ、フランさん、いたんですね。お久しぶりです。何をそんなに怒っているのですか?  私は一国の王女であるメアリーさんをピンチから護っただけですが?」

「それが気に入らねえっつってんだよ!! メアリーちゃんの前でカッコつけやがってよ!! 」


 アーサーのケロッとしたマイペースな態度に、フランの怒りの大爆発が暗黒の国の重苦しい空気を一気に吹き飛ばしていく。


 緊迫していた戦場に、トニーの「相変わらずだねぇ」という苦笑いと、リオールの笑い声が響き渡った。


「フっ……揃ったな。……行くぞ、お前たち」


 ゼインが不敵に笑い、大剣を引き抜いて城門を見据える。

 アーサーが加わり、全員が揃った私たちは、いつもの最高の笑顔と強い絆を胸に、アーシュを救うため、ついに黒き居城の扉へと突入していった。




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