空賊との戦い方
「ひゃっはー! 撃て撃てぇ!!」
空賊船から放たれた無数の砲弾が、私たちのドラゴンを目掛けて飛んでくる。
「させるかよッ!!」
大空へと飛び出したカイトが、その大きな両翼を激しく羽ばたかせた。凄まじい暴風の壁を作り出し、飛来する砲弾の軌道を強引に捻じ曲げて雲海の彼方へと吹き飛ばしていく。
軌道が狂ってドラゴンの背に掠めそうになった砲弾は、すかさずトニーが完全復活した剣でガギィィンと完璧に弾き返し、フランが「隙だらけだな!」と、ドラゴンの背を蹴って空賊船のロープへと飛び移り、驚く空賊たちを次々に剣で叩き伏せていった。
空賊たちが慌ててフランを狙おうとするが、今度はナターシャがアイリスに直してもらったばかりの杖を高く掲げた。
「メアリー様、今です! ――防壁展開!」
ナターシャの杖から放たれた温かい光が、フランやドラゴン全体を包み込む。空賊たちの銃撃を完全にシャットアウトした。
「ありがとう、ナターシャ! ――おばあ様、力を貸して!」
私はおばあ様が命を込めて遺してくれた、新しい魔剣を強く握り締め、空賊船へ向けて突き出す。
前世のレーザーの知識と、新しい剣の増幅力が混ざり合う。放たれたのは、細い光線ではなく、大空を文字通り焼き尽くすほどの【巨大な炎の光線】だった。
ドゴォォオオオオン!!!
一閃。私の放った炎の奔流が、空賊船の頑丈なメインマストを一瞬で消し飛ばし、大火災を巻き起こした。
カイトが神速の飛行で空賊たちの度肝を抜き、フランとトニーがドラゴンの背の上で砲弾を完璧に迎え撃つ。幸先の良いスタートを切ったかに見えた空中戦だったが、空賊たちもさるもの、一筋縄ではいかなかった。
「ちょこまかと鬱陶しいわ! 全艦、主砲をあのドラゴンへ合わせろ! 木端微塵にしてやれッ!」
雲海の奥から、二隻目、三隻目の空賊船が不気味に姿を現す。全方位から放たれた無数の一斉射撃に、ドラゴンの背全体を護っていたナターシャの防壁が、悲鳴を上げるように激しく火花を散らした。
パシィィィンッ!!!
「う、あっ……!?」
ついに限界を超えた結界がガラスのように粉々に砕け散り、ナターシャが激しく吐血してその場に倒れ込んでしまう。
遮るもののなくなった私たちの目の前で、敵の巨大な主砲が、禍々しい闇の魔力を湛えて発射寸前の輝きを放った。ドラゴンの上は逃げ場がない。直撃すれば、全員がただでは済まない――誰もが死を覚悟した、その絶体絶命の刹那だった。
「……させない……。みんなを、絶対に傷つけさせないッ!!」
小さなリオールがドラゴンの先頭へ飛び出し、その両手を空賊船へと真っ直ぐに突き出した。
彼の身体から、あのおばあ様が命を懸けて練り上げていたものと同じ、圧倒的な黄金の魔力が爆発的に吹き荒れる。
カチカチカチカチカチカチカチカチッ!!!
空間に美しい金属音が響き渡ると同時に、発射寸前だったすべての空賊船の巨大な大砲が、ネジや歯車、鉄のパーツへと凄まじい速度で【空中分解】し、大空へと虚しく散らばっていったのだ。
「主砲が……分解されただとおぉお!? あのガキ、一体何をしやがった!!」
完璧に「作り上げる」才能を持つ者は、その構造の「弱点」をも一瞬で見抜く。魔導具の国の最高峰の血脈が、戦場で目覚めさせた最凶の解体魔術。
「リ、リオール……!? 今の、一体どうやったの……っ!?」
私が驚きのあまり声を震わせると、トニーもフランも、カイトさえもが、開いた口が塞がらないといった様子でリオールを凝視した。
そんな驚く私たちを振り返り、リオールは額に汗を浮かべながら、けれどいつもの元気いっぱいの笑顔で誇らしげに答えた。
「へへ……。みんなが僕のために、命を懸けて魔導石を取りに行ってくれた間にね、僕もみんなの役に立てるように、ずっと魔力を磨いてできるようになったんだ!」
ただ守られるだけの子供じゃなかった。彼は私たちがいない間、おばあ様やアイリスの元で、自分もみんなを護る強さが欲しいと、血を吐くような努力をしてこの力を手に入れていたのだ。
主砲をすべてバラバラにされ、完全にパニックに陥る空賊船。
それまでずっと静かに戦況を見つめていたゼインが、ゆっくりと腰の大剣へ手をかけ、フッと満足げに口角を上げた。
「……よくやった、リオール。お前の努力、確かに見届けた」
王のその言葉と共に、ゼインの持つ【桁外れの魔力】が解放される。
「私利私欲のために世界の闇を望む虫ケラどもが。――大空から失せろ」
大剣が一振り、横一文字に払われる。
放たれた漆黒の巨大な斬撃が、空間そのものを引き裂きながら走り、空賊船を文字通り真っ二つに両断した。凄まじい爆発音と共に、悪党たちの船はバラバラの破片となり、遥か眼下の雲海の底へと一匹残らず叩き落とされていったのだった。




