第三章 暗礁
箱崎守は、木下から受け取ったUSBメモリの防犯カメラの映像を何度も見ていた。
深夜2時から始めた解析は、既に明け方に差し掛かっていた。
モニターの光だけが、暗い部屋を青白く照らしている。
「おかしいな。どこにもノイズがない」
彼は解析ツールを起動させ、映像の光量、ガンマ値、色温度といったパラメータを徹底的にスキャンした。
通常の映像加工であれば、圧縮やコピーの過程で必ず生じるはずの不可視のノイズ(アーティファクト)が、この映像にはほとんど検出されなかった。まるで、オリジナル映像と同じ環境で撮影された、完璧な別素材であるかのように見えた。
「合成か? それとも、映像の専門家が、フレーム一つ一つをデジタルで手描き補正したのかな?」
箱崎の細い瞳に苛立ちが滲む。そもそもこの映像はなにか加工されている?
彼は解析アプローチを根本から変えた。畑が柱の影に消える直前の、たった3フレームに絞り込む。
彼は映像の「時間軸の連続性」を検証する特殊なアルゴリズムを走らせた。
そのアルゴリズムは、被写体の影の移動速度や、背景の遠近法といった物理法則との整合性をチェックするものだった。
最初、結果はグリーン。問題なし。
「映像的には畑さんがその場にいたということで納得できる」
箱崎は立ち上がり、冷えた紅茶を一気に飲み干した。
そして、彼の脳裏に、ある微細な物理現象が閃いた。
箱崎は再びデスクに戻り、解析設定を変更した。
彼が検出を試みたのは、「空気の揺らぎ」だった。
熱源や気流によって生じる、背景の光の屈折の僅かな歪み。
駅の構内であれば、空調や人の体温で常に変化しているはずだ。
彼は問題の3フレームに、超高感度フィルタを適用した。
そして、拡大された映像を凝視する。
微かな、しかし決定的な「不連続性」があった。
畑さんのスーツの向こう側に見える、遠景のタイルの目地の歪み方が、その前後のフレームで全く同じパターンを繰り返していた。
本来、生きた映像であれば、人間の体温や空調の気流によって、目地の歪みは常にランダムに変化するはずだ。
「これだ...!」
箱崎は声を上げた。
「静止画の貼り付けだ。あるいは、熱による屈折のない、デジタル空間で作成された背景。彼らは、畑が柱の裏へ入ったように見せるために、畑さんが消える数瞬だけ、『変化のない背景のループ』を使った。
完璧な動画だと錯覚させるために、最も常識的な『生きた映像』の要素を排除したんだ」
彼の顔に、疲労を上回る純粋な興奮が広がった。
「映像加工というより、これは映像を使った心理トリックだ。
畑さんは、この場所には最初からいなかった。警察は、存在しない場所で、存在しない移動手段を調べている」
箱崎はすぐさま木下へ電話をかけた。
勝利を収めた技術者の、高揚した声が響いた。
「木下さん、見つけましたよ!奴らは、畑さんを駅構内に入ったように見せる映像を、合成しました。解析の結果、この映像は『生きていない』
畑さんが行方不明になったのは、自由が丘駅構内ではないんですよ。
捜査の起点を駅構内に入る前の畑さんの足取りの映像を確認して欲しい。
そこには本物の畑さんがいます。
主要道路に繋がる道の手前、そこの防犯カメラに映っているのが、本物の畑さんの最後の姿です。
僕はさらに調べます。
「木下さんの方も、捜査本部へ連絡してね。」
箱崎は少し興奮していた。さらに言葉を続ける。
「感謝します、木下さん!面白い!本当に面白い!
では、また何かわかったら連絡しますね!」
木下は受話器を置くと、すぐに捜査本部に電話をかけた。
箱崎の興奮した声が、まだ耳に残っている。
ハトポッポは、警察を完全に欺いていた。
木下の手が、わずかに震えた。
捜査本部から緑川に連絡があったのは朝の4時過ぎ、緑川は何度も駅構内の複数の防犯カメラの映像を確認している時だった。
隣では、長年親交のある映像解析のプロ、後藤源(ごとう げん、58歳、大阪出身)が、モニターに顔を近づけている。
防犯カメラの映像を、繰り返し確認している最中だった。
「どうだ、源さん。本当に何も出ないか?」 緑川は疲労で顔を歪ませた。
後藤は、モニターに顔を近づけたまま、首を振る。
「何度も言いますが、この映像はノイズレスですよ。コピー痕もない。畑さんが柱の影に消えるまでの流れに、物理的な矛盾は検出されません。これは完璧な映像ですわ」
そのとき、緑川のデスクの直通電話がけたたましく鳴った。相手は捜査本部の筒井からだった。
「緑川さん、大変です!」
電話口の筒井の声は上ずっていた。
緑川は受話器を握る手に力が入った。
「木下事務次官から連絡がありました。映像解析の専門家が、駅構内の映像は加工されていると!畑さんは、最初から駅構内に入っていない可能性があります!」
「詳しく聞かせてくれ」
筒井が説明したのは、空気の揺らぎの不連続性、静止画のループ、熱源のない背景。
箱崎という人物が発見した、映像の「生きていない」部分。
「映像は加工されている」
「畑は駅構内に入っていない」という衝撃的な情報がわかる。
緑川は電話を切ると、すぐに源に向き直った。
「源さん、映像の物理的な解析じゃなくて、素材の不自然さを見てくれ。数フレームの継ぎ目、光の屈折の違和感、熱源のない場所の空気の揺らぎ、何でもいい。人間が気づかない歪みをだ!」
源さんは、緑川の急な変化に驚きながらも、すぐに解析ツールを起動し直し、人間の知覚の盲点を探り始めた。数分後。
「……ほんまや」
源の声が、低くなった。
「加工されてますわ。しかも、これは本来できない。防犯カメラの内部データを直接いじらなあかん。提出される映像そのものが加工されてるなんて……捜査の基本から外れてますわ」 源さんが、驚きとともに言った。
「鉄道会社の中にハトポッポがいる。そいつはプロや。けど……」
源は首を傾げた。
「こんな加工技術があるやつが、なんで鉄道会社で働いてるんや? 引く手あまたのはずやで」
緑川は眉間にしわを寄せた。
またあの言葉が蘇る。
監視対象の一人が言った言葉。
「今では素人のほうが、プロのようなことを平気でしますよ」
もしかして、ハトポッポは……?
緑川は、一抹の不安を胸に残して、源に伝えた。
「畑の最後の姿が映っているのは、主要道路に繋がる道の手前の防犯カメラです。ここを起点にして、畑を探しましょう」
「源さん、主要道路の手前の防犯カメラから、周辺の映像を出してくれ」
源は、大型モニターにパソコンを繋げて、複数の防犯カメラの映像を映し出した。
2人は、6分割された各防犯カメラの映像をくまなくチェックしていく。
畑が映った時刻。その前後。
2分後。
「源さん、待て。一番上の右側の画像を拡大してくれ」
緑川が、何かに気づいた。
「了解」
源はスムーズに映像を拡大する。
そこには、黒いワンボックスカーが走り出しているのがわかる。
タイミングは、畑が映った直後。そして、車は明らかに急いでいる。
「源さん、画面を止めて、ナンバープレートを拡大してくれ」
「任せとき」
源さんは、黒いバンのナンバープレートを拡大する。
「わ」ナンバー。
2人はすぐに理解した。レンタカーだ。
「源さん、この黒いバンを防犯カメラの映像で追ってくれ」
「もちろん」
源さんは、黒いバンの追跡を開始する。
黒いバンは、首都高3号線三軒茶屋出入口から首都高に乗った。
緑川と源は、この黒いバンが栃木方面へ向かう江北JCTから東北自動車道に入るかどうかを、固唾を呑んで見守っている。
Nシステムの映像が切り替わる。
黒いバンが、東北自動車道の料金所を通過していく。
「緑川さん……」
源が、静かに言った。
「ビンゴです。江北JCTから東北自動車道に入りました」
緑川は、すぐに捜査本部に電話をかけた。
「筒井か?」
「はい、緑川さん」
「怪しい黒いバンを見つけた。レンタカーだ。ナンバーは『目黒わ20-24』。至急、照会してくれ。それと——」
緑川は一呼吸置いた。
「東北自動車道を北上している。おそらく、鬼怒川方面だ」
電話口で、筒井が息を呑む音が聞こえた。
「すぐに照会します!」
黒いバンが鬼怒川方面へ向かっていることを確信し、源はマウスを巧みにいじりながら、追跡カメラの映像を次々に表示させている。
しかし、緑川は違和感を感じていた。
出来すぎではないか?
拉致して移動させるのに、黒いバンを使う。
テレビの刑事ドラマで使われる典型的な形だ。
実際の事件でも拉致用に黒いバンは多用される。
普段なら疑わない。だが――
「源さん、また6分割にして、時間を黒いバンを発見した所にすべての画像を戻してくれ」
「えっ」源は、思わず声を上げた。
「緑川さん。黒いバンは鬼怒川に向かっています。畑さんはこの車で拉致されてますよ」
「源さん、我々が見たのは、黒いバンが走り出す映像だけだ。畑がこのバンに乗っている場面は確認していない。黒いバンが鬼怒川に向かっていることは事実だが、一旦、捜査本部の照会結果を待とう」
「わかりました」
源は、モニターを6分割に戻し、再び黒いバンを発見した時間帯に映像を巻き戻した。
緑川は、入念に6分割された画像を再度くまなくチェックしていく。
再度入念に6分割の画面を見る緑川。源も同じく画面を凝視している。
沈黙が部屋の中に流れ出す。
6分割された各防犯カメラの映像が流れていく。尋常ではない集中力で二人が画面を凝視している。
5分後。
2人は右下の画面に同時に視線が動く。
「源さん、右下の画面だけにして奥をできるだけ拡大して下さい」
その言葉は、さっきの黒バンを探していた時と比べ、あきらかに遅かった。
冷静に緑川は見極めようとしている。
それに応えるように源はゆっくりと画面を拡大していく。
「緑川さん、黒いバンはおとりや」
緑川も拡大された映像で、ついに拉致の瞬間を確認した。
黒い帽子、眼鏡、マスクで顔を隠した男に、畑が白い乗用車に無理やり乗せられる姿だった。
「源さん、畑の体型適合率を測って欲しい」
その男だけでなく、畑らしき人物もまた黒い帽子と眼鏡とマスクをさせられている。
畑である確証はないと緑川は直感で思った。
「了解!」
源さんは素早くキーワードをたたく。
画面には適合率92%以上となった。
2人は無言で視線を合わす。
92%以上——ほぼ間違いない。だが、100%ではない。
緑川の心の中で、確信と疑念が交錯した。
ついに、ハトポッポの主犯を捉えた。
これで映像加工をした鉄道会社の人物が特定できれば、一気に解決する。
でも——。
わずかな違和感が、胸に残った。
「源さん、白い車のナンバープレートを照合できるか?」
「あいよ!」
源は慣れた手つきでキーボードを叩いた。
そして、一瞬、眉を上げた。
「緑川さん、ナンバープレートも偽造されてる可能性が高い……何ちゅう奴らや」
その言葉を聞いた緑川は、逆に自信に満ちた声で言った。
「これで間違いない。白い乗用車は、おそらく高速道路を使わずに鬼怒川方面に向かったはずだ」
源は、白い乗用車を追い続けた。
環八通り。
国道16号。
そして、国道294号線。
「緑川さん、間違いない。栃木方面や」
源の声に、確信があった。
この道を北上すれば、鬼怒川だ。
緑川は電話を取り、捜査本部にかけた。
再び筒井が出た。
「筒井、もう一台ある。白い乗用車だ。ナンバーは『品川599 あ 21-48』」
緑川は一呼吸置いた。
「おそらくナンバーは偽造されている。この車は栃木方面に向かった。一般道を使っているため、完全には追えていない」
「鬼怒川近辺で、この白い乗用車を確認してくれ。栃木県警との協力を頼む」
「了解しました!」
筒井の声が、高揚している。
緑川は、その声を冷静に聞いていた。
ついにハトポッポの主犯を見つけたと、これで映像加工をした鉄道会社の人物が特定できれば、一気に解決する。
・8月15日——畑拉致の1ヶ月前
自由が丘にあるビジネスホテルの一室。
パソコンの前に、3人の男がいた。
パソコンを操作しているのは、羽鳥。51歳。
その隣に、堀北。同じく51歳。頭頂部が薄くなっている。
そして、2人を見つめる青年——名取。
「この映像加工技術、すごいですね」
名取が、満面の笑顔で言った。
「そんなに褒めないでください」
羽鳥は、照れたように首を振る。
「名取さんはいつもそうだ。会ったときから、私のことを褒めてばかりです」
「だって、本当にそう思うんですから。堀北さんもそう思うでしょう?」
羽鳥と堀北は目を合わせ、無言で「名取さんはいつものことだ」と頷き合った。
羽鳥は口を開く。
「この映像加工のミソは、鉄道会社の中の人が加工したと思わせることができるんですよ。でも実際は、複数のサーバーを経由して防犯カメラのデータに入り込み、映像を加工しています」
「複数のサーバー経由って言葉! ミステリー映画でよく聞きます。ワクワクします」
名取は、満面の笑顔で目を細めている。
堀北は、そんな名取を見て言った。
「ワクワクしますって……名取さん、これは畑拉致の最初のトリックですよ。ワクワクよりドキドキですよ、私にしたら」
堀北は、ハゲた頭頂部を右手で触りながら言った。
羽鳥と堀北は、1976年生まれ。揃って就職氷河期世代の2人だ。
「そうでしたね」
名取の笑顔が、一瞬消えた。
「まずは、このトリックを見破れるか?」
名取が目を見開く。
その目の奥には、深い憎悪が宿っていた。
羽鳥と堀北は、思わず息を呑んだ。
名取の覚悟は、本物だ。
この青年は、本気で畑を——いや、あの「計画」に関わったすべての者を、消そうとしている。
名取は言う。
「そして、次に白い車も用意しました」
羽鳥と堀北は頷く。
堀北が続ける。
「私たちは、存在を完全に消すために、あらゆることを考えました。映像加工の細工に気づくことを前提に、車も2つ用意しました。警察は、これで確信するでしょう。白い乗用車で畑が拉致されたことに」
羽鳥が頷く。
名取が、再び笑った。
「白い乗用車までたどり着いてほしいですね」
少し間を置いて、続ける。
「まあ、彼らがたどり着いたところで、徒労に終わりますが」
羽鳥と堀北は、その言葉の意味を理解している。
黒バンも、白い車も、すべておとりだ。
警察は、存在しない犯人を追い続けることになる。
名取がさらに続ける。
「このトリックの要になる人たちを、闇バイトで募集しましょう。闇バイトに募集してくれる人は、老若男女選び放題です」
名取の声に、皮肉が混じった。
「この国は、意図的に日本人を貧困にさせてきましたから。最初の犠牲になったのは、羽鳥さん、堀北さんたちの氷河期世代です」
名取の声が、少し低くなった。
「これが計画的に行われたと知ったのは、ある人との出会いがあったからです」
羽鳥と堀北が、名取を見つめる。
「2人にも、その人が誰なのか、まだ明かしていませんね。すべてが終わったら、その人と一緒に、祝杯をあげましょう」
羽鳥と堀北は、その言葉に黙って頷いた。
名取が信頼する「ある人」。
その人物こそが、この計画の真の起点なのだと、2人は感じていた。
3人は、目を合わせた。
そして、無言で誓った。
必ずやり遂げる。
畑重俊は、始まりに過ぎない。
次は——。
白い乗用車の映像こそがハトポッポに繋がると確信していた緑川にとって、その後の落胆は大きかった。
映像加工トリックには、鉄道会社の中の人間は誰も関わっていなかった。複数のサーバーを経由して、映像を加工していたのだ。
そのことを知った時の、源の言葉は重かった。
「映像加工の技術だけでも、プロ中のプロや」
源は、画面を見つめたまま言った。
「複数サーバー経由で鉄道会社の防犯カメラに入り込む。こんなことができる奴なら、映像関連の会社で高給で働けるはずや。何不自由なく暮らせる」
源は、首を振った。
「なのに、何でや? なんで、こんなリスクを冒してまで、畑の拉致に関わってるんや?」
源の落胆ぶりも、大きかった。
さらに士気が落ちたのは、捜査本部の面々だった。
黒バンも、白い車も、すべて空振り。
畑の行方は、依然として不明。
手がかりは、何一つない。
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黒いバンはレンタル。
運転していた人物も、すぐに割れた。
森山豊、22歳。
だが、彼は闇バイト募集でこの黒いバンを運転しただけだった。
闇バイト——。
警察では、この手の事件が多発していた。対応に悪戦苦闘している。
手口は同じ。
募集主がわからないように、特定のアプリをインストールさせる。そのアプリ内だけで、やり取りを完結させる。
追跡は、ほぼ不可能だ。
森山は、報酬を確実にもらえたため、不審に思っていなかった。
森山は住所を募集主に教えていた。黒いバンを運転する前日に、報酬がポストに入っていたという。
捜査本部は、これに一縷の望みを託した。
だが、結局ハトポッポの手がかりを掴むことはできなかった。
森山が住んでいるアパート近辺には、防犯カメラは設置されていなかった。
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白い乗用車の追跡も、徒労に終わった。
白い乗用車は鬼怒川まで来ていた。
だが、車を運転していた男も、無理やり乗せられていた畑役の人物も、ハトポッポのメンバーではなかった。
役を演じたのは、今井道隆(25歳)と馬渕真一(70歳)。
2人は13時に、駅前の某コンビニで待ち合わせ。
そこで1人の女性から、仕事内容を確認した。
14時に、あの場所で、車に人を無理やり乗せる演技をする。そして、一般道で栃木方面に向かう——。
用意された帽子、眼鏡、服を着る。
着替える場所は指定されていた。そこは防犯カメラの死角。
あの場所だけが、防犯カメラに映る場所だった。
報酬も、森山同様に住所を教えていたので、ポストに入っていた。
この2人が住むアパート付近にも、防犯カメラはなかった。
つまり——。
黒いバンと白い乗用車は、警察を騙すためだけに鬼怒川まで行って、戻ってきただけだった。
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緑川は、白い乗用車に無理やり乗せられる映像を止めたまま、画面を凝視していた。
これも、フェイク。
だとしたら、どうやって畑は鬼怒川まで運ばれたのか?
鬼怒川までの移動方法は、一旦置いておく。
今は、畑の餓死現場に行くしかない。
優秀な検視官ですら、手がかりを見つけられなかった。
私が行って何か掴めるとは思えないが、それでも行くしかない。
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緑川は、画面を凝視したまま、思考を巡らせた。
闇バイトまで使った、完璧な犯行。
ハトポッポは、完全に姿を消している。
そして、次に何を仕掛けるのか?
奴らは、我々の捜査を無力化させる方法を熟知している。
畑の次は、誰なのか?
それとも、別の何かがあるのか?
緑川の胸に、不安が広がった。
一つだけわかっているのは——。
捜査が、暗礁に乗り上げたという事実だけだった。




