「わかりやすく説明すること」は難しい
あなたが家庭教師になったとして、小学生、中学生、高校生のうち、誰の勉強を教えるのが一番難しいでしょうか。
もちろん「高校の授業は分からない」など、個人の学力もあるでしょうが、実際やってみると高校生が一番教えやすいのではないかと思います。
高校生ともなると、ある程度理解力がありますから、難しい言葉で説明してもある程度理解してくれると思います。
しかしながら、小学生に教える場合はどうでしょう。例えば算数の場合、方程式を使えば簡単に解ける問題でも、そんなもの小学校高学年にならないと習いませんから使えません。その上、理解力は高校生に比べて低いでしょうから、難しい説明をしてもわからないでしょう。
小説を書く、ということは、自分の考え、物語を相手に理解してもらう、ということです。何度も言っていますが、どんなにおもしろい話を考えても、読者に伝わらなければ意味がありません。
ですから、自分の考えた話や世界観を、少しでも相手に伝わるように説明しなければなりません。
ところが、いざやってみるとなかなかそれが難しいことがわかります。
十分説明したつもりでも説明不足だったり、あまりに説明が長すぎて余計わからなくなったり、そういうことが多々あります。
どのようにすれば相手にきちんと理解してもらえるか。今まで書いたこともありますが、いろいろと考えてみました。
【専門用語やオリジナルの固有名詞を最初から多用しない】
物語の都合上、どうしても専門用語や自分の小説内で使うオリジナルの固有名詞を説明に使わなければならないことがあるでしょう。
ただ、専門用語はそのジャンルに詳しい人はわかってくれますが、知らない人はそれを使って説明されてもよくわからないことが多いです。
また、オリジナルの固有名詞は、まずそれ自体が何なのか、という説明が必要になってきます。その場合は、最初にその固有名詞が出てくる場面での説明を加えるといいでしょう。
【最初から設定を複雑にしない】
おもしろい作品の中には、複雑な設定やシステムを使ったものがあり、それを組み合わせることでおもしろい物語を作り上げているものもあるでしょう。
しかし、それらは最初から複雑な設定を出しているわけではなく、物語が進むにつれて明らかになっていくものではないかと思います。
まずは「この話はこういう話だ」ということをしっかりと書き、それに付随するルールや能力、あるいはシステムなどは、使う場面で説明描写するようにしましょう。
【最初から登場人物のエピソードを語らない】
登場人物は、物語が進むにつれて、読者になじんでいくものです。「どういう人物か」というものを示すために、最初からいろいろとその登場人物に関するエピソードを語りたくなるものです。
ところが、あまりに登場人物のエピソードを最初から語っていくと、肝心のストーリーがおろそかになって、読者は「この話は一体何の話なのだろう」と混乱してしまいます。
必要な情報は描写しておく必要がありますが、登場人物のいろんなエピソードは、ある程度物語が進んだ時に書くとよいでしょう。その方が、読者も読みやすく、世界観に入りやすいと思います。
【難しい言葉を使い過ぎない】
語彙が増えるとどうしてもかっこいい言葉、難しい熟語などを使いたくなるものです。ただ、そればかりだと堅苦しい文章になったり、イメージしにくい文章になったりして、読者の脳がそこで止まってしまいます。
説明する場面では、あまり難しい言葉を使わない方がよいでしょう。
【例えを使う】
能力やシステムなどの説明の都合上、過不足なく書こうとするとどうしても文章が長くなってしまうことがあります。そうなると、自分ではわかっていても、読者にとっては「それってどういうこと?」となってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、「例えば○○が××したときは□□になる」といったような例を挙げるとよいでしょう。
【要約を入れる】
説明の文章が長いと、読者の頭に入らず、そのまま読み進めてしまうことがあるでしょう。特に書きたいことをどんどん書いていくと、いつの間にか説明だけで一話分出来る量になったりすることもあるかもしれません。
その場合、最後に「つまりこういうことだ」という「要約」を入れてみるとよいと思います。途中の説明を読み飛ばしても、「ここだけ読めばなんとか話が進められる」といった場所を作るのです。
もちろん、説明が長ったらしかったり、最初から設定が複雑だったり、難しい言葉を多用した説明だったりする作品でもうまくいっているものもあるでしょう。ただ、それらの作品はちゃんと理解している上で、読みにくくならないように工夫されていると思います。
なかなかわかりやすい説明を作るのは難しいですが、参考にしてみてください。