創作にリアリティは必要か
エッセイやノンフィクションでもない限り、小説の世界は、作者に作り上げられた世界、作者に作り上げられた人物になります。
たとえ舞台が現代であっても、必ずしも日常的に起こり得ることとは限りません。通常だと考えられない事件が起こったり、登場人物が妙な能力を持っていたり、登場人物が思わぬ行動を取ったりするのは当たり前です。
ましてや、異世界やゲームの世界ともなると、私たちの住む世界の常識や法律、マナーや生活習慣がまったく違うことが当然とされます。
小説の世界は、私たちの世界とは違う、「非日常的な世界」と言えます。もちろん日常を描いた話もありますが、通常読者は自分たちの世界とは切り離して考えることでしょう。
作者が創り出す世界、ですから基本的には「何でもあり」になります。どんな世界観にしようが、どんな登場人物にしようが、そこで登場人物がどんな行動を取ろうが、どんな法律があろうが、どんな生活をしていようが、作者の自由です。
しかし、じゃあなんでもかんでも設定すればいいかというと、そういうものでもありません。
読者は現実世界に住んでおり、現実世界の知識しか持ち合わせていません。ですから、何も知識がなければ、現実世界の常識で読み進めることでしょう。
ですから、現実世界とこの話の世界はどう違っているのか、きちんと説明し、読者に理解させる必要があります。どういう世界であるから、こういう出来事があって、こういうことをしなければならない。登場人物はどういう能力があって、どういうことが出来るから、こういうことをしている。いわゆる「5W1H」をしっかり書いておかないと、読者は混乱してしまいます。
他にも、人間や動物、植物にもそれそれ人が持っている特性の知識があります(例えば「アリ」は小さくて黒くて、甘いものが好き、など)から、その知識と世界観にずれが生じる場合は、ある程度の描写が必要となってくるでしょう。
よく「創作にはリアリティを持ち込むな」ということを聞きます。しかし読者は現実世界にいるのですから、リアルと差があれば違和感を覚えてしまいます。
創作物が現実に忠実である必要はありませんが、大半は現実世界の常識に、自分の書きたいものを混ぜて一つの世界観を作りだしているのではないかと思います。
現実世界との違いは何か。自分の物語に読者を引き込むためには、そこを理解させることが大切でしょう。