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言葉の遺伝子組み換え

 タイトルは私が好きな言葉で、しょっちゅう使っています。


 世の中には何万、何十万という言葉が存在しており、一つの言葉をとっても複数の意味があるものもあります。

 また、その言葉の本来の意味だけでなく、例えば比喩で用いられたり、用法を変えて使われたりすることもあります。さらに、時代によって意味が異なったり、別の言葉と組み合わせることで新しい意味を作ったりすることもあります。


 よく言われる「きれいな日本語」というものは、言葉の本来の意味を正しく使ったり、正しい文法で書いたりしたもの(だと思います)ですが、実際には誰もがそのように使うとは限りません。

 親しい人と話す場合はタメ口になったり砕けた言い方になりますし、ビジネスの場では丁寧な言い方になるでしょう。正式な文章では、硬い表現だったり難しい言葉を多用したりします。

 そんな言葉や文章を扱う場の中で、小説はかなり自由な位置にあるのではないかと思います。


 ある程度言葉には「定義」というものがありますが、長い歴史の中で、言葉が持つ意味は多種多様になりました。その中に「熟語」や「故事成語」、「ことわざ」といった、本来の言葉の意味から転じたものがたくさんあります。

 また、詩や歌詞、俳句などになると、同じ音をリズムよく並べたり(韻を踏む)、一つの単語で二つ以上の意味を持たせたり(掛詞)、そういった言葉遊びが芸術的要素として用いられています。

 小説でも同様に、比喩表現というものがよく使われます。こういった事柄については、詳しい本やウェブページがあるので、いろいろ調べてみるとよいでしょう。


 小説において、言葉というものは絵における絵具や下書き用の鉛筆のようなものだと思います。自分の表現したいことを、好きな言葉を使って、好きなように組み合わせる。それが単語になり、文になり、文章になり、物語となります。

 小説作法や文法といった決まりはあるものの、表現方法は基本的に自由です。言葉を使うにも、その言葉をその意味として使ったり、その言葉に合う言葉と組み合わせて使ったりする必要はないわけです。


 例えば「ケーキ」という単語から、どういう動詞が思い浮かぶでしょうか。普通は、「食べる」とか、「作る」とか、そういうものが思い浮かぶと思います。

 しかし、普段は使わないような言葉を組み合わせると、不思議な文章が出来上がります。例えば「走る」とか、「締め付ける」とかいう動詞を組み合わせるとどうでしょう。世にも奇妙な話が頭に思い浮かばないでしょうか。

 動詞に限らず、組み合わせる助詞によっても、かなり不思議な文章になります。例えば「ケーキ」に対する「食べる」「作る」でも、「ケーキが食べる」とか、「ケーキと作る」とかにすると、ケーキが生き物であるかのように表現できます。


 言葉同士の組み合わせだけでなく、シチュエーションとして適切でないと思われる反応を示すことで、読者にその意味を考えさせることができます。

 例えば、告白シーンで女性が「付き合って下さい」と男性に言ったとします。それに対して男性は「ごめん、好きな人がいるんだ」と振ったとしましょう。

 普通はこれに対し、女性はがっかりしたり、悲しんだりするのが普通の反応でしょう。しかし、ここで例えば「ありがとう」と感謝されたり、「よかった」とほっとされたりしたら、読者はどう思うでしょうか。


 言葉というものは決まった使い方がありながら、使い方次第で読者を不思議な空間に導きます。

 言葉と言葉が織りなす化学反応。不自然を混ぜ合わせた、奇妙なシチュエーション。

 私はこれを、「言葉の遺伝子組み換え」と呼んでいます。

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