「主視点」を決める
小説には一人称小説、三人称小説、中には二人称小説といった、視点によってさまざまな分類がされます。
どのような視点であっても、出来るだけ一貫性を持つことが、読者への配慮であったり、読みやすい文章であったりするわけです。
さて、小説を書くにあたって、皆さんはどのように「視点」を意識しているでしょうか。
特に主役を定めていない「マルチ主人公」という方式を取っている人もいると思いますが、基本的には「主人公の視点」を中心に書いていくのではないかと思います。
主人公はいわば、読者と一緒に物語を進めていく分身ともいえる存在ですから、しっかりと「誰が主人公か」ということを意識して書き進める必要があるでしょう。
筆者はもちろん、登場人物の中で誰を主人公にし、誰をメインヒロインにする、というような役割を決めていると思います。しかし、それが読者に伝わらなければ、「誰を中心に追いかけて行けばいいか」というのが分からなくなります。
ですから、まずは「誰の視点を中心に追いかければ話が分かるか」ということを決めておきましょう。
そこで重要なのが、主人公視点での話(「主視点」とでも呼びますが)を出すタイミングです。プロローグなんかは、過去起こった出来事やこれから起こる出来事を示唆するような話になるため、主人公の視点ではない場合も多いでしょう。
問題は「第一話」です。読者は第一話の視点で出てきた登場人物を中心に、話が進んでいくと考えているはずです(自分が本を読む場合を考えるとわかりやすいと思います)。
つまり、第一話で中心となっている登場人物を、読者は「主人公」と認識します。ということは、第一話で中心とするべき話は、作者が想定している「主人公」を中心とした話にするべきと言えます。
もし第一話が、主人公ではなくてサブキャラクター中心の話にしてしまった場合は、読者はそのサブキャラクターが主人公だと思うでしょう。そうすると、第二話を主人公視点で話を進めたとしても、作者が想定している主人公は読者にとってはサブキャラクターに映ってしまいます。
こうなった場合、読者はしばらく「第一話に出てきた主人公出てこないな」と思いながら読み進め、しばらくしてようやく「あ、この登場人物が主人公だったのか」と気付くことになってしまいます。
この問題は、一人称小説だと起こりにくいと思います。そもそも一人称小説では何度も言っている通り、視点切り替えを頻繁にするべきではありませんし、第一話が主人公の視点ではないというのは、よほど何らかの効果を狙っていたりそうせざるを得ない場合以外、もう論外だと思っておいてください。
しかしながら、三人称小説だとありえない話ではないでしょう。プロローグでは語れなかった部分を第一話に持ってきて、それが主人公の視点ではない話などが当てはまると思います。
最低限、「第一話は主人公視点」と決めて書いた方が、読者も作者もわかりやすいのではないかと思います。
マルチ主人公の場合や、メインの登場人物が変わる場合も同様です。話ごとに、「誰の視点を追えば話が分かるか」ということを読者にわからせる必要があります。ですから、最低限第一話は、メインとなる登場人物の視点で話を進める必要があります。
主人公がわかりにくい小説は、読者を混乱させます。まずはきっちり追いかける人物の視点、「主視点」を決め、読者にそれを意識させるようにさせましょう。そうすれば、たとえ視点変更があっても、「このエピソードは主人公のエピソードとは違う場面だな」ということがわかりやすいと思います。