三人称視点は簡単なのか?
前回は一人称の話をしましたので、今回は三人称の話です。
一口に「三人称」と言っても、書き方はいろいろあります。
今回は大きく分けて3パターン説明していきます。
【一人視点】
登場人物一人を追いかけた視点です。
一人称視点の「僕」や「俺」などの一人称を、登場人物名の三人称にしたような形になります。
カメラとしては一人を追っていますが、全体的な描写や、追っている登場人物が見えていない部分まで書くことができるため、一人称よりも広い範囲を書くことができます。
また、追っている登場人物に限り、心理描写を書くことができます。三人称小説なので、視点切り替えも容易に行えます。
一人称と違う点としては、完全に一人だけを追っているわけではないため、一人称ほど感情移入しにくいことと、視点が広いので、情景描写をより詳しく書く客観的に書く必要があるということでしょう。
【カメラ視点】
主人公やメインヒロインといった位置づけはありますが、登場人物をまんべんなく追った形です。
一人を追っているわけではないので、情景描写をかなり詳しく書くことができます。また、メインの舞台と関係ない場面も、いろいろと設定することができます。
ただ、他の視点とは違い、登場人物の心理描写をまったく書くことができないため、心理描写が必要な話では不向きと言えるでしょう。
淡々と物事を進めていく、推理小説のような話がこの視点に合うでしょう。
【神の視点】
まるで上から神様がすべて見透かしているように書いた視点です。
情景描写も心理描写も、ほぼどんな描写も書くことができます。
ただ、書くことができる範囲が膨大すぎるため、あまり詳しく書きすぎると読み手が追いつかない可能性があります。
また、どんな登場人物の心理描写も書けますが、どの心理描写が誰のものかをはっきりさせないと、読み手が混乱してしまいます。
なんでも書ける分簡単そうですが、実は読みやすくするには工夫が必要です。
「小説家になろう」の小説では、一人称の小説が結構ありますが、何故か意図が分からず視点切り替えをしている作品が多いです。
一人称で視点切り替えしてしまうと、せっかくの感情移入がリセットされてしまいます。視点切り替えが多くなる場合は、三人称一人視点で書いた方が無難でしょう。
ここまで説明して、「書くことができる範囲が広い分、三人称の方が書きやすいのか?」と思う人もいるかもしれませんが、三人称にも難しい点があります。
まず、地の文に関しては主観ではなく、客観的に書かなければならない点です。
一人称の場合、多少表現が間違っていたり、おかしな点があったとしても、それは主人公(登場人物)が見ていることなので、「登場人物はそう見えていた(思っていた)」で無理やり通すことができます。
しかしながら、三人称の場合は、誰が読んでもほぼ同じ光景が想像できるように地の文を書かなかければいけません。
特に知識やうんちくに関する部分では、一人称では「主人公のうろおぼえ」「たしか~と書くことでごまかす」「主人公の勘違い」などで済ますことができますが、三人称ではウソを書くことができません。
なので、しっかりと調べて裏付けを取って書く必要があります。
また、一人称では、対象の登場人物が見えている範囲だけ書けばよいのですが、三人称だと書ける範囲が広い分、より細かな情報が必要となります。
特に情景描写や舞台については、より多くの設定が必要となる上に、最初から設定ばかり書いていると読者が離れてしまうため、そのバランスが難しくなります。
三人称小説は一人称小説よりも心理描写が少なくなる分、地の文で情景描写がどのくらいうまく書けるかが勝負になるでしょう。
そのためには、いろんな三人称小説を読んで、どういう風に情景描写しているのかを勉強しなければ、うまく書くことができなくなります。
こういった要素も、一人称小説から始めやすい要素の一つではないかと思います。