設定提示の優先順位
小説を書く上で、様々な設定が必要となります。
物語の舞台、登場人物、ストーリーの柱となる出来事、イベント、システム、季節、使用される道具や機械と、ジャンルにもよりますがさまざまです。
話の長さによっても、設定するものの量はかなり違ってきます。
小説を書く前には、プロットを作ったり、ノートに設定をメモしたりすると思います。出来るだけ細かい設定をしておくことで、ブレない話を作ることができるでしょう。
しかし、設定を細かく決めておくことと、それを小説内でくどくど説明することは違います。
何度も書いていますが、たくさんの設定がある小説の場合、序盤から一気に設定しておいたことを説明してしまっても、読者はまったく頭に入りません。
読まれない小説の特徴の一つとして、「序盤から世界観や用語の解説が延々と続く」というものがありますから、設定の説明は小出しにしていくべきです。
小出しにするといっても、自分の設定の中でも優先順位があるはずです。
まず何を知ってもらいたいのか、知ってもらわなければ困ることは何なのか。それを考えながら設定の説明をしていかないと、読者は何を重視してみればいいのかわからなくなります。
【最重要項目】
まずは「絶対に知っておいてもらわなければ困ること」です。どんな設定よりも真っ先に理解してもらうために、物語の序盤での説明が不可欠となります。
ただ、細かいことを言われても、後々覚えていないことが多いため、ここではほとんどが「おおざっぱな設定」の説明になるでしょう。
・メインキャラクターの外見、おおざっぱな人物像
主人公やメインヒロイン、物語終盤まで登場するような、物語の主要となる登場人物の人物像は、早めに把握させる必要があります。
細かな設定(例えば家族構成や体重などのパラメータ、深い人間関係など)は序盤から説明する必要はありませんが、外見や性格は最初からある程度分かるようにしておきましょう。
あまりにも性格が読めないと、キャラが立たなくなってしまいます。
逆に、あまり物語に関係しない登場人物に関しては控えめにした方が、主要キャラがが立つでしょう。
・物語のメインとなる場所
現代なのか異世界なのか、はたまた建物の中なのか、登場人物が活躍する場所は様々ですが、読者が物語を読む上で舞台の描写は欠かせないものとなります。
特に異世界や特殊な建物の中など、読者が想像しにくい部分はイメージがつかみやすいように描写したいものです。
ただ、説明しすぎると理解できなくなるので、序盤の描写は「最低限知っておいてほしいこと」にとどめておきましょう。
・主要システムや能力のおおざっぱな説明、話の流れ、道具のおおざっぱな使い方
例えば能力ものであれば、その能力がおおまかにどんなものであるかの説明、バトル物であれば、何と戦っているのか、というような、物語の軸となるものの説明です。
ほかにも、特殊な状況における状況説明、ゲームものにおけるルール説明、物語における最終目標の提示などが挙げられます。
この話がどんな話なのか分かるように、序盤で簡潔にまとめましょう。
序盤では主要となるシステムの説明にとどめておき、間違っても、すぐに使わないような細かい設定は書かないようにしてください。
基本的な能力を使ったり、倒しやすい敵を準備したりして、実際に使ってみるチュートリアル的な話を入れるのが一つのパターンです。
【重要事項】
急いで知ってもらう必要はないけれども、物語に関係するような設定です。
基本的には、必要な場面で提示していく方がよいでしょう。
・サブキャラクター、メインキャラクターの詳細、メインキャラクターの過去の話やエピソード
序盤はメインとなる登場人物をよく知ってもらうためにメインの登場人物紹介が主となると思いますが、サブキャラクターも、物語進行には欠かせない存在となります。
ただ、関連性としては優先順位が低くなるので、サブキャラクターが登場した時は簡単な説明にとどめておき、メインとなる話で詳しく描くとよいでしょう。
・主要システムの詳しい説明
序盤の説明が「基礎」とすれば、中盤に向けて「応用」を説明するといった感じです。
能力ものであれば、より高度な能力や変わった能力、バトル物であれば戦っている相手の詳細や戦いに至るまでの経緯、ゲームものであればさらに詳しいルールや追加ルールといった具合です。
単一パターンでは読者も飽きますから、少しずつ能力やルールといった設定を付け加えていくとよいでしょう。
最初に一気に説明しすぎると、覚えきれない上に後半の話の設定がさらに複雑になってしまいます。
・主人公の目的
どんなに長い話であっても終わりはやってきます。また、主人公にも「この物語においてやりたいこと」というものがあると思います。
そういった、「ゴール」をある程度提示しておけば、読者にも登場人物のストーリー中の行動が理解されやすくなるのではないかと思います。
・中盤から後半にかけての伏線
序盤の段階でも、ある程度の伏線を張っておいた方が後々伏線だらけにならずに済むのではないかと思います。
重要な伏線は早めに張る必要があるでしょうが、回収し忘れないようにメモを取っておきましょう。
【あまり重要でないもの】
基本的に知らなくても物語に支障はないものです。
ただ、外伝的なエピソードや息抜き回などで役に立つことがあるので、そういった時に提示しておくとよいでしょう。
・キャラクターの詳細なプロフィール
身長体重などの身体的なことから、趣味や特技、友達付き合いなどのプライベートなことまで深く掘り下げたい場合は、その登場人物にスポットを当てた話にするとよいでしょう。
特にサブキャラクターは設定が簡単なものになりやすいですから、こういうときに色々と設定していたことを出して、エピソードを作り上げるとよいでしょう。
ただ、サブキャラクター中心の話は、読者が登場人物の特徴をある程度とらえ、物語に慣れてきた頃にやらないと、「別にお前の話なんか聞きたくない」という状態になってしまうので、注意しましょう。
・主要システム、道具、乗り物、機械などの詳細な設定
武器のスペックや乗り物のスペックなどがあげられると思います。
ただ、こういうものは設定資料レベルになるほど細かい設定なら、別枠にしたほうがよいでしょう。
どうしてもスペック解説が必要な場合のみ、詳しく書くようにしましょう。
せっかく頑張って設定を作ったのですから、すべてを書きたい気持ちはわかります。
しかしながら、読者は興味ない設定を延々読まされても、そこから先を読もうとは考えません。
序盤はどうしても知ってほしいことを中心に、物語が進行するにつれて設定を肉付けしていく、という感じで設定を公開していくとよいでしょう。
どうしても説明が多くなりがちな人は、プロットを組む時に説明枠をどの程度取るか、というのを決めておくとよいかもしれません。
説明だらけの文章は読まれない元ですから、設定の出し方、優先順位を考えたストーリー構成を心掛けましょう。