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「読むテンポ」を考える

 小説を読んだ時、すらすらと読めていたのが突然止まってしまうと、不快感を覚えるのではないかと思います。

 推理小説などで考えるために読み返す場合などは別ですが、例えば突然読めない漢字が出てきたり、状況を理解しにくい文章が出てきたりすると、テンポを崩されてしまうと思います。


 テンポが崩れてしまうパターンにはどんなものがあるか、小説作法と併せて考えてみました。


・肝心なところでの誤字脱字


 推敲する際には誤字脱字がないかを中心に行うと思いますが、自分一人ではなかなか全部の誤字脱字を見つけるのは困難ではあります。商業誌ですら、誤字脱字が時々見つかるくらいですから。

 ただ、肝心な場面、感動的な場面で誤字脱字があると、一気に今までの感動が台無しになり、読者は手が止まって白けてしまいます。

 少なくとも、「ここ一番」の場面では、誤字脱字を壊滅させるようにしましょう。


・助詞の連続


 よく言われるのが、「の」を三つ以上続けて使わないことです(例:車の中の箱の側面の猫の絵)。

 二つまででは不自然には見えませんが、三つ以上続くとどうにも読みにくい悪文となってしまいます。

 こういった場合、例えば不必要な情報を消したり、別の助詞を使ったり、文章を並べ替えたり、途中で文を切ったりすることで解消できる場合が多いです(例の場合だと、「車の中にある箱の側面に描かれた猫の絵」など)。


・体言止めの乱用


 これもよく言われることですが、体言止めの使い過ぎもよくありません。

 体言止めは、バトルシーンなどのスピーディーな展開や、引き締まった印象を与えるのに有効です。しかし、体言で終わるということは動詞が省略されているということなので、読者にその先を想像させる部分となります。

 体言止めには、文章によってはあいまいな表現になるため、乱用すると読者に丸投げしている、自分に酔っているという悪印象を持ちます。

 そもそも、小説で不必要な体言止めは感心されない傾向にあるようです(おそらく、基本的に「~した」「~する」で終わるという、小説は「主語+述語」をきちんと示すものであるため、そこにその形にそぐわない体言止めが入るのは不自然だから、ではないかと思われます)。

 ですから、「基本的には体言止めを使わない」「使うとしてもここぞという場面で使い、数を少なくする」ということを心がけるべきでしょう。


・不必要な漢字変換


 パソコンで文章を作成していると、ワープロ変換に頼ってしまうことが多くなります。そのため、何でもかんでもワープロ変換して、ひらがなで書くべきところまで漢字になってしまう、ということが多くなります。

 例えば、「~ということ」を「~と言うこと」としていたり、「~となっている」を「~となって居る」としていたりすることです(後の話で出てくる「補助用言」と呼ばれるものです)。

 書くときはよくても、いざ目で追ってみるとやはりおかしいと感じます。

 日本語としては「完全に間違い」ですので、推敲する際には変なところが漢字変換されていないか、注意しましょう。


・突然の硬い文章


 読み慣れているところに違うものが入ると、人は違和感を覚えるものです。

 最初からガチガチに硬い文章で書いているなら、読者は「この話は硬い文章でできている」という認識をするため、特に問題ないと思います。

 しかし、そうでもない文章に硬い文章や硬い表現が出てくると、読者はそこで引っかかって読むテンポを崩されてしまいます。

 特に難しい意味の熟語や、想像しにくい比喩などがそれに当たります。

 基本的にはわかりやすい意味の言葉を選んだ方が、読者としてはイメージしやすいでしょう。


・同じ単語、同じ発音の言葉の連続


 例えば、「流れていた流れ星は、いつの間にか流れなくなった」という文章には、「流れる」という表現が三つも使用されており、読みにくい印象を与えます。

 例えば、「彼女の容姿を原稿用紙に書いた」という文章には、「容姿」と「用紙」という同じ発音で違う意味の言葉が使用されており、読むと引っ掛かりを覚えます。

 小説作法でも、「同じ言葉の連続」「同じ発音の言葉を重ねること」は避けるべきとされているので、こういった文章ができてしまったら、重なってしまった言葉を、同じ意味の別の言葉で言い換えましょう。


・突然の難読漢字、難しい意味の熟語


 今まで読める漢字ばかりだったのに、突然読めない漢字が出てくると、「これ何て読むんだろう」と考えてしまい、テンポが切れてしまいます。

 また、突然難しい意味の熟語が出てくると、「これ何ていう意味なんだろう」と考えてしまいます。

 特に新しい言葉を知った時は、その単語をすぐに使いたくなり、こういう現象が起こり得ると思います。

 最初から難読漢字や意味が難しい熟語がたくさん出てくる話、あるいは想定している読者層の年齢が高いならともかく、中高生対象の話で突然出てくると戸惑ってしまうでしょう。

 ルビを振ったり、開いたり、もっとやさしい単語に置き換えたりしたほうがいいでしょう。

 実は、私が読んだ「なろう」作品では、「ラノベ調で中高生が読者層だと思われる話」で、よく難しい意味の熟語が使われていました。

 私が読んでいても、「一瞥する」「蹂躙する」「踵を返す」などと出てくると、一瞬「何て言う意味だっけ」となってしまいます。


・突然の視点や場面変更


 話の途中で視点や場面が変わると、読者は一体誰の視点になっているのか、どこが舞台になったのかと混乱しやすくなります。

 視点や場面を切り替えたい時は、話の区切りをつける、章の開始時にする、と言ったことを心がけた方がよいでしょう。

 また、視点や場面が変わる際は、読者が混乱しないように、最初に「誰の視点なのか」「どこが舞台になったのか」ということが分かるようにしましょう。


 どんなに面白い話でも、あまりにテンポよく読めないと、読者はストレスや不快感を抱えることになり、おもしろくないと感じます。

 ですから、読者がストレスを感じない文章を作る、と言うことは非常に重要です。

 ただ、なかなか「スラスラと読める文章」を作るのは難しいと思いますから、たくさん本を読んで、「どんな書き方であれば読みやすいか」というのを研究するとよいでしょう。

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