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人称設定と得意分野

 いろんな小説を読んでると、書き方も千差万別で、作者やジャンルごとに書き方に特徴があるのが分かるかと思います。

 小説を書いていると、自然と「○人称小説」と言うものを目にする、あるいは意識するようになると思います。これは、「語り手がどういう風な視点で見ているか」ということで分別されます。

 大きく分けると「一人称小説」「二人称小説」「三人称小説」と分類され、それぞれ表現の仕方や読者のとらえ方、描ける描写の制限などが異なります。

 ほとんどの人は知っていると思いますが、簡単に説明しておきましょう。


【一人称小説】

 語り手が登場人物であり、地の文も喋り口調で書かれていることが多い文体です。基本的には主人公が語り手となりますが、たまにサブキャラクターが主人公を追う、という方法も使われるようです。

 学園ものや日常もの、恋愛ものなどで多く見られます。ラノベだと、この形式が多いですね。


【二人称小説】

 少数ながらも、二人称で描く小説もあります。

 語り手は読者に話しかけるように、今見ている出来事を解説するような感じで話を進めます。

 小説ではありませんが、演説やハウトゥー本ではこの形式を用いることが大半でしょう。


【三人称小説】

 登場人物とは無関係な、第三者からの視点で描いた小説です。商業小説の大半は、三人称で書かれています。

 三人称小説も、どのように書くかによって三つに分かれます。


・一人視点

 あるシーンで、ある登場人物から見た光景を書くパターンです。一人称小説の地の文で、「俺」や「私」などの一人称を「彼」や「○○」といった三人称に変えたような感じでイメージするとよいでしょう。

 一人を追っているため、追っている人物の心理描写を描ける他、場面によって追いかける登場人物を変更することも容易です。


・カメラ視点

 あるシーンを、カメラで撮影したように描くパターンです。

 起こっていることをありのままに淡々と書いていくのに便利です。


・神の視点

 作者が天から覗いているような視点です。神が覗いているので、すべての登場人物の心理描写を描くことができます。大抵なんでもありです。


 イメージ的には、カメラの撮影方法を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。

 一人称小説は、視点がカメラそのもので、自分でカメラから見えている物について解説したり、考えを述べたりしていくという感じ。

 二人称小説は、カメラに移っているリポーターが、今の状況を解説している感じ。

 三人称一人視点は、ある一人にスポットを当てて、その人に時々インタビューをしているという感じ。

 三人称カメラ視点は、今の状況をずっと映していて、その状況のみを解説している感じ。

 三人称神の視点は、全員を追いながら、たびたび登場人物にインタビューしているという感じです。


 これらの手法には、長所と短所、得意ジャンルと不得意ジャンルがあります。

 例えば一人称小説の場合、語り手が登場人物であり、登場人物が見た光景がそのまま文章になっているため、読者は非常に共感しやすくなります。しかしながら、視点がその登場人物視点で固定されてしまうため、他の人が知っている情報は誰かから聞くしかありません。よって、書ける範囲がかなり限定されてしまいます。

 一方で、三人称神の視点では、ありとあらゆる場面、心理描写を書くことができますが、視点がバラバラなので、読者が共感しにくいという欠点があります。


 読者の共感のしやすさから言えば、断然一人称小説が有利です。扱いにくいですが、次点が二人称小説。三人称小説は、いろんな登場人物を追っていくため、登場人物への共感がしにくいです(三人称一人視点だと、若干共感しやすくなりますが)。


 描ける範囲の広さは、三人称が全体的に広く、一人称や二人称小説は語り手が特定されているため、かなり狭くなります。


 さらに、心理描写は、一人称と二人称は語り手の登場人物のみ、三人称一人視点では追っている登場人物のみしか描けず、三人称カメラ視点ではまったく心理描写を描くことができません。三人称神の視点は、すべての登場人物の心理描写を描くことができます。


 このように考えると、得意なジャンルがある程度見えてくると思います。


 一人称小説は、語り手自身の心理描写が描けるため、その人物の葛藤を描いたり、考えを中心に描くことが簡単になります。ですから、恋愛小説や日常の学園系の小説で、登場人物を葛藤させるのには向いているでしょう。推理小説も、探偵役(あるいは犯人役)を語り手とすることで、自身の考えを示すのに地の文を使うことができ、効果的になります。

 逆に、全体の出来事を見る必要がある冒険物やバトル物は不向きと言えます。


 三人称一人視点だと、いろんな場面を見ることができるので、逆に冒険ものやバトル物には向いています。逆に、恋愛ものだと、共感が得られにくいのであまり向いてはいないでしょう。

 カメラ視点は、心理描写が描けないので、淡々と物語が進む推理物なんかは適していると思います。

 神の視点はかなり自由が利きますが、うまく書かないと誰の心理描写を書いているかわからなくなってしまいます。


 最近はラノベの影響からか、一人称視点の小説が多いように思えます。おそらくは、自分が書きたいことをガンガン書ける上に、地の文もセリフのように使えるので、書きやすいのでしょう。

 しかし、前述にもあるように、一人称は書ける対象範囲が非常に狭く、長編で書くとなるとかなりの工夫が必要となります。

 しかも、その範囲の狭さを解消すべく、視点変更を頻繁に使っている小説もよくみられます。

 基本的に一人称では、視点切り替えはめったなことでは使わない方がよいです。というのも、せっかく登場人物に共感しやすい一人称を選んだのに、視点切り替えを使うと共感しにくくなる上に、読者は誰の視点で読めばいいのか混乱してしまいます。

 極端な小説になると、何人もの視点に切り替わっているものがありますが、それをするなら最初から三人称一人視点で書けばいい物です。

 一人称の視点切り替えは、せいぜい二人までに抑えておき、頻繁には行わないようにしたほうがよいでしょう(「side○○」という形式も、商業用にないことはないですが、よほどうまく使わないと、読者に嫌われている上に視点切り替えをわかりやすくする技量がないと思われるので、やめた方がいいです)。

 

 また、人称設定は、一度決めたらその小説内では変えない方がいいでしょう(例えばずっと三人称だったのに、突然一人称になる、など)。

 もし何かの理由で変えたい時は、必ず話の区切りの良いところで行ってください(一つのイベント中に一人称と三人称がごっちゃになったりすると、読みづらいことこの上ないです)。


 人称設定で注意する点としてもう一つ、描写範囲に注意すること。例えば一人称なのに他の登場人物の心理描写を書かないようにしましょう(その登場人物が心を読めるとかなら別ですが)。


 人によってどの書き方がやりやすいかは異なりますし、不得意なジャンルだからといってその人称にしてはいけないことはありません。

 しかしながら、性質を理解したうえで人称設定しないと、後々自分が苦しくなってきます。

 読者に読みやすい小説にするのはもちろん、書きやすくするためにも、適した人称設定を心がけましょう。

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