「お題」「テーマ」を軽視してはいけない
何もないところからいきなり何かを作る、というのはなかなか大変なことです。
前回の話もありましたが、人は何らかの制限をある程度することで、その制限に沿ったものを考えようとするのでより考えやすくなります。
話を作る練習として、「決められた文字数、決められたお題を使う」という制限をかけたり、「三十分以内で書く」など、時間に制限をかけたりして、その範囲内で話を作る、ということをしている人もいると思います。
特に、制限した方が書きやすいのが「お題」や「テーマ」で、自分で決めるよりも誰かに決めてもらった方が、お題を決める時間を話を作る時間に費やせるでしょう。一つ何かが決まっているだけでも、話はぐっと作りやすくなるものです。
基本的には、お題やテーマが決まっている場合、それを元に話を構成すると思います。ところが、先に「何か書きたいもの」があって、それにお題やテーマとなっている物を組み込む、というやり方をしている人もいると思います。
特に「書きたいものはたくさんあるけどなかなか書けない」といった人に多いと思います。
そういう人が陥りやすいのが、「お題やテーマのものが活かせていない」話です。
あらかじめ自分の中で書きたいものが決まっている場合、どうしても話の中心は「書きたいもの」となってしまいます。
そこでお題やテーマを組み込もうとすると、どうしてもおまけ要素みたいになったり、大きな役割を果たせていなかったりすることがあります。そうなると、結果的に、お題やテーマを使用した部分が、「別になくても問題ない」部分に成り下がってしまいます。
訓練のための制限や、個人的な企画で使用しているお題やテーマが決まっている物なら、ある程度アイデアが良かったり、文章がしっかり書けていればそれでよいかもしれません。しかし、例えばコンテストに出す場合や賞を取る場合は、おそらくそうはいかないでしょう。
わざわざ「お題」や「テーマ」を設定しているということは、審査員は「お題やテーマをいかにうまく使っているか」というところを見るはずです。なのに、せっかくのお題やテーマがほとんど役割をはたしていなければ、たとえどんなに素晴らしい話でも、どんなにしっかりかけていても、そのコンテストではどこかで落とされてしまうでしょう。
ここ「小説家になろう」でも、いくつかコンテストが行われています。例えば以前のアリアンローズ新人賞だと、「異世界で働く女の子」がテーマとなっています。
異世界という世界観は、小説家になろうではおなじみでよく見かけますし、「働く女の子」というのも、設定はしやすいと思います。
ただ、このコンテストでおそらく重要なのは、「異世界という世界観を活かせているか」「働く女の子の職業が活かせているか」と言うところだと考えます。
つまり、ただ「異世界が舞台だ」「働いている女の子が主人公だ」だけだと、上位賞には到底入らないでしょう。
上位賞を目指すなら、「何故異世界でなければいけないのか」「異世界だとその職業がどう活かせるのか(現代社会では活かせないのか)」「何故女の子でなければならないのか」「働いている女の子の職業が、その知識や体験をどう活かしているのか」などといった要素を盛り込む必要があるでしょう。
例えば、飲食店の店員なら、その腕で国のトップに提供する食事を作ったり、隣国との争いを料理で解決する、といったような話が考えられますし、服飾業だと異世界で特殊な生地を使うことで特殊な衣装を作るとか、踊りをより魅力的に見せる衣装を作るとか、そういう話ができます。
一番考えやすいのは、異世界ではない職業を始めることですね。異世界では見慣れないものですから、様々な話の展開が考えられるでしょう。
制限をかける、ということは、その制限内でどのように工夫して面白い話を作るか、という技量が試されます。とくに賞やコンクールに出す場合は、お題やテーマをしっかりと意識した話作りができるようにしましょう。