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魔力判定

 魔道具店に着くと、ユリウスは何やら店主と交渉し、二人は奥の個室に通される。


 机の上には、簡易的に魔力が判定できるという不思議な(はかり)が置かれていた。

 秤には光、花、水など10個ほど絵が描かれている。

 針が止まったところが、その者が持つ属性を示す。

 


「すみません、少し痛みますが」

 ユリウスはそう言って、ナイフでリリアナの指を浅く傷つけた。


 じわっと滲む血を、秤の皿に落とすと――

 針が一度大きく跳ね、次の瞬間、狂ったようにぐるぐると回り始めた。



 ユリウスは眉をひそめた。


「あぁ……やっぱり……」


「なにか、悪い結果が?」


 心臓の鼓動を押さえながら問いかけると、ユリウスは静かに首を振る。


「いいえ。むしろ逆です。――魔力がなければ、針は一切動かないはずなんです」


 彼は秤を覗き込みながら、ゆっくりと言葉を選んだ。



「これは……オスカー様のように“すべての属性を持っている”か――」



 言いかけて、ユリウスは言葉を切った。

 その視線が、秤ではなくリリアナへと移る。


「――あるいは、この秤では測れない“別種の力”を持っているか、どちらかです」



 リリアナは黙った。やはり隠し書庫の鍵が欲しい。そこに行けばすべてが分かる――



 突然、ユリウスがリリアナの血がでている指を――彼の口元へ含んだ。


「ユ、ユリウス……!」


 驚きの声が思わず漏れ、彼は慌てて手を離す。




「! すみません……姉がケガするとしてくれていたのでついっ!」


 彼は真っ赤になっていた。

 そう言えば、姉がいると言っていたことを思い出す。


「もう……気をつけてくださいね。驚きます」


「はい……」


 小さくなった彼を横目に、リリアナは時計を確認する。


「そろそろ、城に戻らないといけないわね。そういえば……ユリウスはなぜ今日町に? てっきりオスカー様と一緒かと……」



「……オスカー様に、リリアナ様を見張るように言われました」


 リリアナが身構えたのを見ると、ユリウスは手を振る。


「違いますって、あくまで僕はリリアナ様の味方ですから」


「……だけど、どうして助けてくれるの? オスカー様に背くことになるのに……」



「放っておけないんです……」


「え?」


 ユリウスは困ったように笑う。


「僕の姉と似ているんです、リリアナ様は……。無鉄砲なところが特に。先ほども止めるのも聞かずにバーに入っていくので、肝が冷えました……」



「そうだったの……心配させてごめんなさい」



 ユリウスは、やっと止まった(はかり)の針を見つめる。

 

「……リリアナ様は、まだオスカー様を信じてくれていますか?」


 リリアナは迷うことなく頷いた。


「ええ、怖いけれど……だけど、真実を知りたい。オスカー様一人に背負わせたくないの」

 


「僕も同じです。オスカー様はリリアナ様がきてから変わりました。周りが驚くほど空気が柔らかくなって……

それなのに、リリアナ様を閉じ込めてからは……」



 ユリウスは唇を結んだ。

 オスカーを救いたいという共通点が、二人の絆を固くする。



 今なら頼めるかもしれない――リリアナは小さく息を整え、視線をユリウスに固定した。


「ねぇ、ユリウス。お願いがあるの……

書庫の鍵を――」


 その提案に、ユリウスは目を見開いた。


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