表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

3-3軟禁


 見覚えのない若い侍女が、銀盆を片手に入ってきた。どこか周囲をうかがうようにしている。


「王妃様、お薬をお持ちいたしました」


「ありがとう。少し外の空気を吸いたいのだけれど……」


「……お医者様の許可があるまで、お部屋は出られません」 


 リリアナは嫌な予感がした。


「もう良くなったわ……」



「その……陛下の許可があるまでは、お部屋を出ることは叶いません」


 わずかに開いたドアの外では、衛兵なのか、人の気配がする。

 リリアナは身体から力が抜けた。


(監視されている……)



 侍女が差し出したお茶から、湯気が漂う。

 リリアナは侍女を下がらせた。



 ふと、部屋が寒々しいことに気づく。

 いつも、途絶えることのなかった火が消えている。魔鉱石は、リリアナに触れさせないためか、すべて取り払われていた。


 冷えた手を温めようとティーカップを両手でつつむ。


(あたたかい……)



 音楽が忌避された事実を調べるには、王家の隠し書庫にアクセスするか、町での聞き込みをしたい。


 だけど、この状況でどうしたら外に出られるだろうか。


 

(私の味方になってくれそうな人……)


 リリアナは、首を軽く振った。


 ユリウスは、オスカーに仕えている年月のほうが圧倒的に長い。相談したら密告される可能性も考えねばならない。


 侍女のソフィはどうだろうか。

 協力してくれたとして、それがバレたら迷惑をかける。



「自分で、どうにかやるしかないわ……」



 ◇


 その日から、リリアナは注意深く時間と人を見るようにした。

 いつ、どの侍女が来るのか。廊下の見張りが薄くなる時間帯はいつなのか。



 侍女には素知らぬ顔をしてオスカーや、彼の亡き母親について探りを入れた。

 侍女たちはリリアナに同情的だった。



 どうやらリリアナは、"王の怒りをかって、閉じ込められた悲劇の王妃"ということになっているらしい。



 それを逆手に取り、リリアナは涙ながらに反省してみせた。


 二週間ほどが経過した。


 若い侍女が持ってくる薬――きちんと飲んでいるはずなのに、どこか胸が苦しく身体が重かった。


 オスカーは、一切部屋に姿を見せない。

 リリアナが抜け出さないとわかると、皆気が緩んできたのか、以前より見張りの精度が落ちている。



(罠かもしれない……けど、今しかない……)


 今日からオスカーは、遠方の貴族に会いに泊まりがけで城を出ていた。


 部屋に侍女のソフィが朝食を持ってきたタイミングで、リリアナはしおらしく言った。


「なんだか今日は身体が重くて……お昼はいらないわ……」


「まぁ……お医者様をお呼びしましょうか?」


 リリアナは静かに首を振る。


「いいえ、一人になりたいの……私に許されるのはそれくらいでしょう……?」



 我ながら下手な芝居だなと思ったが、優しいソフィは目に涙をためている。



 「お可哀想な王妃様……夕方までゆっくりお休みください」


 そう言うと、部屋を出て行った。

 彼女を騙すのは気が引けたが、「今は前に進むしかない」とリリアナは自分に言い聞かせ、ベッドから飛び起きた。


 

「古いドレスが役に立つなんてね……」


 リリアナはメアリーのお古の中でも、ことさら貧相なものに身を包み、ブロンドの髪をぴっちりまとめ、帽子を目深にかぶった。


 暖炉に残っていた すす をドレスや顔になすりつけると、王妃には見えなかった。


 窓を開けて、下を覗き込んだ。

 やはりこの時間には兵はいなかった。


「いざとなると高いわね……」



 リリアナは、あらかじめ古いドレスを裂いて作っておいた布ロープを、窓脇の飾り金具に固く結びつけた。

 結び目を二度、三度確かめる。



 窓枠に手をかけ、そっと身を外へ滑らせる。身体が宙に浮いた瞬間、思わず身を縮めた。


 下を見ないよう石壁に足を引っ掛け、一段ずつ身体を下ろしていく。



 やがて足先に草の感触が触れた。リリアナは静かに身を離し、音もなく地面に降り立つ。


 見上げれば、はるか頭上に自室の窓。胸は早鐘のように鳴っていた。

 捕まれば、もう二度と自由はない――その予感が背筋を冷やす。


(――出られた)


 久しぶりの外の空気を胸いっぱいに吸い込み、リリアナは城の裏門へと歩き出した。





――――――――

あとがき


こんにちは雪城 冴です。

いつもありがとうございます!

ついに終わりが見えまして、本作品は4章で完結予定です♪


あと14話です☺


引き続きお楽しみいただけたら幸いです✨️


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ