51 レゼンデの浜辺に行ってみた
「ここがレゼンデの町か」
俺は西大陸への定期船が出ているレゼンデの町に着いた。
レゼンデは大きな港を持つ海に面した町だ。
「まずは定期船の場所を探さないとだな」
町に入った俺は大小の船が停泊している港に向かう。
港に着くと『定期船案内所』という看板の建物があった。
ここで定期船の切符が買えるのかな。
俺はその『定期船案内所』に入ってみる。
中の受付の人に訊いてみた。
「あの、西大陸のセラフ法王国まで行きたいんですけど、ここで定期船の切符を買えるんですか?」
「ええ、そうですよ。でも本日の定期船はもう出発してしまったので一番早い定期船は明日の午前中になりますが」
そうか。今日の定期船はもう出発してしまったのか。
「明日の定期船の切符は買えますか?」
「はい。買えますよ。どの船室の切符を買いますか?」
「切符に種類があるんですか?」
「ええ、セラフ法王国には明日の午前中に出発の船に乗ると明後日の午前中にセラフ法王国に着きます。船内に一泊するので寝る船室によって切符のお値段が変わります」
へえ、西大陸に行くには船で一泊しないとなのか。
「ここに船室の種類があります。個室、中部屋、大部屋に別れます。個室は一人用で中部屋は数人泊まれるので家族が使うことが多く大部屋は他人と同じ部屋ですが一番値段は安いです」
受付の人が料金表を見せながら説明してくれる。
う~ん、とりあえずお金はあるし個室にしようかな。
俺の顔を知ってる人間はいないとは思うけど念のために西大陸に着くまでは油断できないし。
「じゃあ、個室をひとつお願いできますか?」
「はい。分かりました」
お金を支払って船の切符を購入した。
さて、明日までは定期船はないから少しレゼンデの町を歩いてみるか。
せっかく海のそばまで来たんだから浜辺の方に行ってみよう。
定期船案内所のある港から離れて浜辺がある場所に行ってみた。
俺は海を見るのは初めてではない。
他の国に行った時に海を見たことがあるしローゼン将軍に「何があるか分かりませんので」と言われて泳ぎも教えてもらった。
だけど実際には海で泳いだことはない。
浜辺に行くと白い砂浜に青い海が広がっている。
海で泳いでいる人たちもいた。
「足だけでも海に浸かってみるか」
浜辺に行き自分の靴を脱いで足を海に入れてみる。
冷たくて気持ちがいい。
「ジルヴァニカ帝国にも海があったら俺も泳ぎを楽しめたかな」
少し離れた所で泳いでいる人たちを見ながら俺は少し羨ましい気分になった。
そして俺は浜辺の中央部分に大きな天幕が張られているのに気が付く。
あの天幕は何だろう。
少し近付いて確認すると天幕の周囲には兵士のような人たちがいる。
もしかしたら誰か貴人が海に泳ぎに来ているのかもしれない。
すると天幕から二人の人物が出て来た。
俺はその人物を見て驚く。
わ! ドルデン皇帝だ!
二人のうちの一人は俺がよく知ってるこの国の皇帝のドルデン皇帝だった。
俺は慌てて顔を海の方に向けて靴を履く。
ドルデン皇帝は自分に背中を向けている俺には気付かないようだがもう一人の人物との会話が聞こえてきた。
「父上。たまには海を見ながらの休息もいいですね」
「そうだな。皇宮にいるだけでは息が詰まるからな。お前に『たまには海に行きませんか』と誘われた時は驚いたが息抜きにはなるな」
俺はチラリとドルデン皇帝と話している人物を見た。
30歳ぐらいの男性でこちらも見覚えがある。
ドルデン皇帝の第二皇子のゼールデン皇子だ。
「少し海で泳ぐかな」
「ええ、今日は波も穏やかですし泳いでも危険はないでしょう。私はもう少し天幕で休みます」
「うむ。分かった」
ゼールデン皇子は天幕の中に戻りドルデン皇帝は一人で俺の方に近付いて来る。
わわっ!! 俺の正体に気付かれたらどうしよう!?
俺は皇帝を辞めたとはいえ表向きはラッセンド宰相たちは俺を病気療養中していて他国の人間は俺が皇帝を辞めたことは知らない。
アイデ帝国に許可なくジルヴァニカ帝国の皇帝の俺が入国していたらアイデ帝国側は何か思惑があるのではと不信感を抱くだろう。
ジルヴァニカ帝国とアイデ帝国の間に波風を立てたらセルシオが皇帝になった時に大変だ。
ドルデン皇帝は俺に気付いたようで俺のそばまで来る。
「ん? そこの者。少し話をしていいか?」
皇帝の言葉を無視するわけにはいかない。
俺は覚悟を決めてゆっくりとドルデン皇帝を振り返った。
「何でしょうか?」
「ん? まさか!?」
ドルデン皇帝は驚いて目を見開いた。
「あなたはザカルド6世殿か!?」




