45 レミの弟になってみた
「まったく陛下はどこにおられるのか」
ローゼン将軍は酔っ払いの男に訊くのを諦めてハリーの姿を求めて歩く。
「そうだ。この時間だと酒場にいる可能性もある。酒場を覗いて見るか」
近くにあった小さな酒場に入ろうとすると扉が開いて長いウェーブのかかった黒髪の30代前半と思われる女が出て来た。
そして女は店の入り口の明かりを消す。
「すまないがちょっと訊きたいことがあるのだが……」
「なによぉ、もうお店はお終いなんだから」
「ああ、すまんな。黒髪に黒い瞳の若いハリーという男性はこの店に来なかったか?」
「ハリー? いいえ、来ないわよ。もうお客も帰ったしこの家にいるのは私と弟のデイルだけよ!」
「そうか。忙しいところすまんな。ありがとう」
女は扉を閉めて店の中に入って行く。
「仕方ない。今夜は一度大使館に戻るか」
ローゼン将軍は大使館に戻るべく歩き出した。
俺はデイルの日記の続きを読む。
『昨夜は素晴らしい夜だった。レミお姉ちゃんを初めて抱けるなんて夢のようだ。だけど明日には俺は西大陸に出発しなければならない。西大陸で稼いでレミお姉ちゃんを楽にしてあげよう』
そこで日記は終わっている。
最後の日記の日付を見ると今から約10年前だ。
う~ん、このデイルって弟は姉のレミと肉体関係を持った後に西大陸を目指して船に乗って遭難したってことか。
でも姉弟で恋人なんて驚きだな。
アイデ帝国だけじゃなくてジルヴァニカ帝国でも姉妹と兄弟との結婚は禁止されている。
でもいとこ同士とかの近親婚はジルヴァニカ帝国の皇帝家では珍しくない。
血筋や家柄に拘るとどうしても近親婚は増える。
それでも濃すぎる血にならないように姉妹や兄弟は結婚できないようになっている。
俺には弟のセルシオしか兄弟がいないけどもし俺に姉や妹がいたら恋心を持つこともあったのかな。
想像してはみるものの実際に自分に姉や妹がいないのでよく分からない。
でもレミとデイルは愛し合っていたんだもんね。
愛し合ってるのに結婚できないなんてちょっと可哀想だな。
それにデイルが死んでもレミはデイルが生きているって10年間も信じてたんだから一晩だけでもレミに夢を見させてあげたいな。
よし! 俺はレミの弟になろう!
そこへレミがホットミルクを持って部屋にやって来た。
「デイル。お店は閉めて来たわ。デイルの好きなホットミルクも持ってきたわよ」
「ありがとう。レミお姉ちゃん」
ニコリと笑みを浮かべて俺はレミのことを「レミお姉ちゃん」と呼んでみる。
するとレミは涙を流しながら身体を震わせる。
「ああ! デイル! あなたに再びレミお姉ちゃんと呼ばれる日を心待ちにしていたのよ!」
俺は部屋のベッドの上に座る。
レミも俺の横に来てベッドに腰かけた。
レミがホットミルクを渡して来たので俺はそれを飲む。
「甘くておいしいな」
「ふふ、デイルは甘い物が大好きだったものね」
嬉しそうに俺を見るレミを俺は抱き寄せてホットミルクはベッドの脇の机の上に置く。
「ああ、またデイルに抱き締めてもらえるなんて嬉しいわ♡ デイルが西大陸に行くって言って西大陸への船が出るレゼンデの町に出発する前にデイルと初めて結ばれたあの夜を思い出すわ」
「そう。レミお姉ちゃんは俺にまた抱いてもらいたい?」
「ええ、もちろんよ。あの時は子供ができないように外に子種を出して避妊したけど、今度はちゃんとデイルの子種をレミお姉ちゃんの中にちょうだい」
「レミお姉ちゃんの中に出していいの?」
「もちろんよ。デイルの子供がいたら私は最高の幸せよ♡」
頬を赤く染めながらレミは俺を見つめる。
レミにデイルの子供がいたらレミもそれを糧に生きていけるよね。
よし! レミがこれからまた生きていけるようにレミにデイルの子供を与えてあげよう!
愛する人の子供を育てることがレミの生きる希望になるよね。
「俺はまたすぐに出かけないといけないけど俺の子供を産んで子供を育てて俺の帰りを待っていてくれる? レミお姉ちゃん」
「ああ、デイル! あなたの子供がいれば私は何年でもあなたの帰りを待つわ!…んんぅ!?」
俺はレミに口づけをしてベッドに押し倒した。




