129 タファールの町に向けて出発してみた
「ハリー殿。この馬がハリー殿の馬です」
王宮内の宮殿の入り口付近まで来るとルイーフ王子が一頭の赤馬を指差した。
やはり砂漠を越えての旅なのでこの国では砂漠に特化したこの赤馬での移動になるようだ。
「分かりました。ありがとうございます。ルイーフ王子様」
「あと、ハリー殿に紹介したい者がいます。ラザック隊長こちらに来てください」
ルイーフ王子の声を聞いて背の高い大柄な男が近付いてきた。
黒髪に黒い瞳の40歳ぐらいの男性で旅装束ではあるが剣を帯剣している。
「このラザック隊長は今回の私の護衛をする警備兵の隊長になります。ハリー殿にももちろん護衛をお願いしますがどうかラザック隊長と協力して行ってください」
へえ、このラザックって人物が警備隊長か。護衛は俺だけではできないもんね。
警備兵と協力するなら警備隊長さんとは仲良くしておかないとだよね。
「初めまして、私はラザックと申します。ルイーフ王子様からあなたが護衛に雇われたことは聞いています。何でも護衛商会の特別ランクの方でいらっしゃるとか。ぜひ一緒にルイーフ王子様の護衛をよろしくお願いします」
少しいかつい顔立ちで大柄な身体だから恐そうに見えたけどラザックは丁寧に俺に挨拶をしてくれる。
俺も笑顔で挨拶を返す。
「俺はハリーです。皆さんの迷惑にならないように気を付けますのでこちらこそよろしくお願いします。ラザック隊長さん」
俺はラザック隊長と握手を交わした。
「では出発しましょう」
ルイーフ王子が輿に乗りその周囲を警備兵が囲み出発の準備ができる。
自分の赤馬に乗った俺は隣りの赤馬に乗っているラザック隊長に声をかけた。
「ラザック隊長。今日の目的地はどこですか?」
「今日はタファールという町まで行きます。そんなに遠い町ではないですが砂漠は何があるか分からないのでハリー殿も警戒をお願いしますね」
「分かりました」
タファールかあ。どんな町かな。
砂漠の町ってことには変わりはないかもしれないけど新しい町に行けることは楽しみだな。
俺はルイーフ王子たちの一行とタファールの町に向けて王宮を出発した。
「ふう、さっきの砂嵐は酷かったな」
ローゼン将軍は砂嵐に襲われて自分の宿に逃げ帰っていたが砂嵐が通り過ぎたので再びハルシンの街をハリードルフを探して彷徨っていた。
手近な者にハリードルフの似顔絵を見せて聞き込みをしてもなかなか情報は得られない。
「困ったな。もしかして陛下はこのハルシンにはいないのだろうか。しかしここからどこに行ったのかも分からないのでは探しようがないしな。ん?」
似顔絵を持って歩いていると前方で人だかりができている。
何だろうと近付いてみると兵士が民に向かって大声で指示を出していた。
「この先の道はこれからルイーフ王子殿下の一行がお通りになられる。無事に通過するまでしばらくこの道を通行することは禁止だ!」
どうやらハルファ王国の王子の一行が通り過ぎるまでこの先には進めないらしい。
王子の一行が通り過ぎるのを待ってもいいがこの砂漠の炎天下の中で立っているのは危険だ。
「仕方ない。それならこっちの道を行くか」
ローゼン将軍は真っ直ぐ進むのを諦めて別の道を歩き始めた。
「そこの素敵な殿方。この指輪を好きなお相手にいかがですか?」
「ん?」
声のした方を見ると建物の日陰を利用して布を広げて指輪や腕輪を置いて売っている女がいる。
ローゼン将軍は指輪を買う気はないが声をかけられたついでにと思いその女にハリードルフの似顔絵を見せて訊いてみた。
「すまんがこの男を探しているのだが見覚えはないだろうか?」
「っ!」
なぜか女の顔が赤く染まった。
「え、ええ。知ってますけど…」
「なに!? 本当か? 名前はハリーというのだが間違いないか!?」
「は、はい…ハリーって名前でした…」
「それでハリーはどこにいる!? 教えてくれたらお礼をするぞ!」
「え、えっと、たしかイデンの町に行くって言ってましたが…」
「イデン?」
ローゼン将軍は持っていた地図でイデンの町を確認する。
イデンの町はゾーマ帝国との国境の近くのようだ。
「ありがとう、娘よ! これはお礼だ!」
女に銀貨を一枚渡してローゼン将軍は地図を見ながら歩き出す。
「もしかして陛下はゾーマ帝国に向かっているのか? とにかくイデンに向かっているのは確かだからイデンまで行ってみるか」
再び砂漠越えをして行かないとイデンには行けないのでローゼン将軍はどこかの隊商に雇ってもらえないか探すことにした。




