104 リネットの夢のお告げを証明してみた
「あら、ジーフじゃない。こんな所で何をしているの?」
「そんなの母上を探しに来たに決まってるじゃないですか!」
ジーフ王子は声を荒げる。
すると寝ていたヤクルも騒ぎで起きたようだ。
「う~ん、ジーフ様、いかがなされましたか?」
目を擦りながらヤクルは起き上がりリネットを見て大きく目を見開いた。
「リネット王妃様!?」
「まあ、ヤクルまで一緒だったの?」
ヤクルは飛び起きる。
俺も背中に嫌な汗を掻きながら恐る恐るリネットに訊いてみた。
「リネットってこのハルファ王国の王妃様なの?」
「正体がバレたら仕方ないわね。一応私の夫はハルファ王国の国王のオスカスよ」
わわ! やっぱりリネットって王妃様なんだ。
どうしよう!王妃様とヤッちゃった!
さすがの俺も驚きを隠せない。
王妃とヤッたなんてバレたら大変だ。
リネットの顔を見た俺にリネットは目で俺に「余計なことは言うな」と合図してくる。
俺は僅かに頷いた。
うん。リネットとヤッたなんて絶対に言えないよね。
王妃とヤッただけでも問題だけど俺がジルヴァニカ帝国の皇帝なんてバレたら戦が起こりかねないもんね。
自分ではジルヴァニカ帝国の皇帝を辞めたつもりの俺だが世間的にはまだ俺は現役の皇帝という扱いだ。
その俺が他国の王妃とヤッたなんてことになったらジルヴァニカ帝国は大混乱になるだろう。
でもバレなきゃいいよね。誘って来たのはリネットの方だもん。
そういえばリネットは「家出中」だと言っていたけどどうして王妃様が「家出」なんかしたんだろう?
「リネット王妃様はなんで家出なんかしたんですか?」
「それはオスカスが私の言うことを信じてくれなかったからよ」
リネットは不満そうな顔をする。
「母上! 父上とケンカしたくらいで後宮を抜け出すのはやめてください! どれだけ心配したと思ってるんですか!」
「別にいいじゃない。私の剣術の腕前はそこいらの賊に負けるわけないのはジーフだって知ってるでしょ?」
「そ、それは…」
ジーフ王子は言葉に詰まった。
引き締まった身体つきしてるなと思ったけどリネットは剣術の腕もいいのか。
「リネット王妃様。ジーフ王子様は王妃様を心配して秘密裏に王妃様を探しにここまで来たのです。どうかこのまま後宮にお帰りください」
ヤクルはリネットを説得するがリネットは首を横に振る。
「イヤよ。私は自分の夢のお告げが正しいことを証明するまで帰らないわ。だって夢で見た洞窟には「赤ジェネル」がたくさんあったのよ。あれだけの鉱脈を発見できれば王家にとって莫大な利益になるんだもの」
「また、その話ですか、母上。赤ジェネルは通常は洞窟などでは採れません。地面の深い場所にあるんですから」
「だから、その洞窟はすごく深い洞窟なのよ。私は夢で見たんだもの。大きな崖の近くに洞窟の入り口があるはずなんだから」
「それは夢の話でしょう?夢の話を父上が信じてくれなかったからって王妃が一人で後宮抜け出すなんてありえませんよ」
う~ん、リネットは赤ジェネルがある洞窟の夢を見てその夢の話をオスカス国王が信じてくれなかったから家出したのか。
ん? 洞窟にある「赤ジェネル」ってもしかして…
俺はセリアからもらった赤ジェネルの洞窟の場所を記した地図と赤ジェネルが入った小箱を荷物から取り出した。
「ねえ、リネット王妃様。その洞窟ってこの地図の印のところ?」
「え? え~と…そう! ここよ! この崖の位置と洞窟の場所は夢で見た通りだわ!」
やっぱりそうか。
「でもなんでハリーがこんな地図を持っているの?」
「えっと、知り合いの人からこの地図とこの「赤ジェネル」を貰ったんだ。その人は迷ってこの洞窟で赤ジェネルを見つけたんだって」
俺は小箱に入った赤ジェネルもリネットたちに見せる。
「本当に赤ジェネルだ。まさか母上の夢のお告げが当たっていたのか?」
「だから言ったじゃない、ジーフ。私の一族は神に仕える一族だったのよ。夢で神のお告げを受け取ったりしてたんだから」
得意そうにリネットは胸を張る。
「ハリー殿。この地図を我々に貰えないだろうか? もちろん父上に話してお礼は必ずするから」
確かに俺がこの地図を持っていても自分で「赤ジェネル」を採掘できるわけじゃないからオスカス国王に渡してもいい。
だがハルファ王国にとってはこれは「宝の地図」だ。
それなりの見返りを貰ってもいいだろう。
「それなら条件があります。この地図は俺が直接オスカス国王様に渡したいです。そして俺の希望するモノを直接オスカス国王様に伝えます」
「…分かった。ハルシンに着いたら父上にハリー殿が会えるようにする」
ジーフ王子は渋々承諾する。
よし! これでとりあえずはオスカス国王と会えるからどんな人物かによって地図と取引きするモノを決めようっと!
最悪、リネットとのことがバレたらこの地図と取引きしてもいいしね。




