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王女の命令で堅物将軍を騙すはずが、なぜか手を組んで反撃することになりました  作者: RiePnyoNaro


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その4『狙われたベル』

 エルンハルト将軍の後ろに続いてベルは部屋に入った。


執務室とその隣には寝室が続いている。


砦の中なのですべて石づくりだった。


ベルは疑問をエルンハルトにぶつける。


「そもそも、どうして敵国と戦争してるんですか?」


執務机に座ったエルンハルト将軍は呆れたような表情。


ベルはちゃんと勉強しなかったことを後悔した。


頬が赤くなった。


将軍は肩をすくめ


「我が国G国には魔力を持つ人間がいるが、敵国F国には存在しない。

力の不均衡は敵国の恐怖をあおる。

常に我が国に怯えているF国は、攻撃で牽制してるんだ。」


ベルは昔を思い出した。


幼いころの魔力適性試験を。


魔力が高ければ無償で魔術学校に通え魔術師の道が開ける。


『魔法使い』になれば就職先はいくつでもある。


エリートが集まる王室専属顧問魔術師なんてのもある。


だから10歳~12歳の少年少女は全力で『魔力適性試験』に臨む。


だけど結果は『魔力レベル★1に及ばない最低レベルで判定不能』。


★4以上が魔術学校合格。


★が5以上なら大魔法使いになることも可能。


私の父でも★2はあったのに、私と母は★1未満の判定不能。


結果を知ったときはやっぱり落ち込んだ。


学校の成績も平均よりチョイ下だし、運動能力も下から数えたほうが早い。


な~~~んのとりえもない。


まぐれで王宮侍女に合格したのが、人生最大の幸運(ラッキー)だった。


そうだわ!


やっぱりディアナ王女に逆らえないっ!!


クビになったらどうやって家族を支えるのっ??!!


焦りと不安がよみがえった。


緊張した声でベルが


「そういえば、先ほどの敵兵も剣だけの攻撃でしたね?

そこは我が国とは違いますね。

我が国の兵士は魔力★3以上は必須ですから。

将軍ももちろん魔法をお使いになれるんですね?」


最後はヨイショ!が入り気味で語尾が上がる。


エルンハルト将軍はまんざらでもなさそうにいかめしい表情を緩め


「そうだ。

我がG国兵士は剣だけではなく魔法による攻撃も訓練している。

俺は魔力は普通だが、剣技と軍事・兵法学は極めている。」


ベルはふと疑問がわき


「敵国のF国は魔力なしでどうやって治療したり薬を調合したりしてるんでしょう?

治癒魔法が必要でしょう?」


「何でも錬金術から派生した『科学』で薬を作り病気やケガを治療してるらしい。

最近は火をつけると爆発が起きる粉を作りだしたとも聞く。

我が国では魔法使いが杖の先から攻撃エネルギーを出すように、筒につめた金属玉を爆発で飛ばすらしい。」


「へぇ~~~~!凄いですね!」


素直に感心しつつ思わず顔がニヤケる。


だって!


将軍と気軽に話せるなんて!


ディアナ王女の命令の軍事機密を入手(ゲット)!も簡単そうっ!!


と思ったけど、もしかして全部打ち明けたら協力してくれる?


ソワソワして上目遣いでチラチラ見てると、何を思ったのか将軍がオホンと咳払いし


「あ~~~~用足しか?

我慢してたんだな?

この部屋を左に曲がってまっすぐ行った突き当りだ。

客人用女性便所があるのはそこだけだから注意するように。」


は?


え?


便所?だと思われたっ?!


恥ずかしくなって焦る。


プッと頬を膨らませた。


ぶっきらぼうに立ち上がり、部屋を出ていく。


後ろから


「女性便所がついてるのが君の部屋だ!

客人用の部屋だ!」


大声で叫ぶ。


通路を通る兵士が全員私を振り返る。


女だとわかると不審そうな顔またはニヤケ顔。


もっと真っ赤になり俯きながら、早足で部屋に逃げ込んだ。


 ◇


 事件があったのはその夜中のことだった。


ベルは兵士の服からチュニックとズボンに着替え、ベッドに横になった。


慣れない環境


やっとウトウトと眠りに入りかけた時、入口からヒソヒソ話す声が聞こえた。


ベルは聞き耳を立てた。


誰?


軍隊の中で女が珍しいから?


このまま襲われるの?


嫌っ!!


剣は――


壁の剣置きね?


ベルは飛び起きた。


だが、その一瞬早く――。


バンッ!


黒い覆面の三人の男が扉をあけ放ちなだれ込んだ。


ベルがあっ!と叫び声をあげる間もなく、慣れた手つきで手足を縛り、二人の男の肩に担ぎあげられた。


さるぐつわで声を封じられた。


そうされなくても、ベルは恐怖で全身が硬直し声を出せなかった。


『私は死ぬんだ!

このあと隠れ場所に運ばれ、強姦されて?

それともこのまま砦の上から投げ落とされて?』


恐怖で呼吸が浅くなる。


だけど、あまりの興奮で痛みは感じなかった。


「簡単だったな」


「簡単すぎるだろ」


「本当にコイツが『運命の子』なのか?」


――運命の子?


何、それ。


私のこと?


「正確には『運命の子候補』だけどな。」


「内偵者の話では、今日砦に来た女だそうだ」


「なら、間違いない」


「こいつを連れて帰ればいいんだな」


「チッ。面倒だな。なぜ殺さない?」


「上からの命令だ!」


「弱らせてもいい。だが、絶対に殺すな!」


ベルは乱暴に肩の上に担がれ、簡単に運ばれてる自分が情けなかった。


抵抗したくても怖すぎて手足に力が入らない。


けど恐怖の興奮で心臓は爆打ちしてる。


どうすればいい?


いつ隙ができる?


砦の端まで来ると、屋根のない通路に出た。


このまま下に降りる階段を探して降りるの?


それともロープか縄梯子(なわばしご)で降りるの?


砦の石壁は国境になっていて、降りると敵国F国の平野が続いている。


あたりは真っ暗で砦のかがり火がまばらに灯(とも)る。


「怪しいやつっ!止まれっ!」


後ろから味方兵の叫び声。


覆面男たちは一瞬ひるんだ。


今だっ!


ベルは体をくねらせ、男たちの肩から飛び降りようとした。


「えっ?」


えぇっっっーーーーーーーっっ!!!


気付いたときには宙を舞っていた。


手足を縛られたまま。


砦から地面に落ちる途中の。


男たちの肩から滑り落ちることには成功した。


だけどっっ――――!!!


このままじゃ確実に……死ぬっっ!!!


あーーーーー!!!


気を失いたいっ!!


気を失えば痛くないのにっ!!


なぜっ?!


意識がはっきりしてるのっ?!!


バカなのっ?私っ!!


自分を責めながらも、半分あきらめの境地でベルは砦から落下しつつあった。


 そのころ、エルンハルトは砦から20ヤード(18m)ぐらい離れた場所を歩いていた。


気が付くと黒ずくめの覆面男たちの肩から人の形をした何かが滑り落ちた。


危ないっ!!


直感がエルンハルトに告げた。


エルンハルトは魔力を全開にした。


手のひらを落下する方向へ向けた。


だが――


間に合わない


エルンハルトには、それがわかっていた。


エルンハルトの魔力では安全なレベルまで速度を緩めることはできない


わかっていたが、全力で魔力を放出した。


「……くそっ!」


何かがエルンハルトに強いた。


絶対に引いてはならないと。


まだ足りない。


もっと!


もっとだ!


「止まれーーーーっっ!!」


落下物が空中でぴたりと停止した。


地上すれすれの高さで。


エルンハルトがホッとして魔力を緩めるとボソッと落ちた。


慌てて駆け寄る。


砦の上に犯人たちの姿は見えなくなっていた。


「縄梯子でF国に降りたようです!」


駆け付けた警備兵が上から叫んだ。


エルンハルトはベルに近づき、素早く手足の縄を解いた。


「なぜ君がF国に狙われたんだ?」


ベルは口から飛び出しそうだった心臓がやっと落ち着いてきたのを感じた。


震える両手でエルンハルトの腕をがっしり掴んだ。


何か大きいものに縋り付きたかった。


ゆるぎない頼れるものに。


ふぅっっと大きく深呼吸をする。


「わ、私だって、知りたいです!

なぜ狙われたのかっ!!

お、女…だからですか?」


声が震える。


エルンハルトは驚いたように目を見開き、安心させようと手を重ねた。


「もう大丈夫。

怖かったんだな。

奴らは去った。

心当たりが無ければ女性だからかもしれない。

俺の執務室で寝るといい。

簡易ベッドを用意させる。」


ドキッ!


恐怖とは違う種類の動悸がしてベルは真っ赤になった。


焦って『何か言わなくちゃ!』


と必死で思い出し


「あっ!そういえばっ!

犯人たちは『運命の子』がどうとか言ってました!

候補の一人が私だとかなんとか…」


エルンハルトが目を見開き、すぐに眉根を寄せ険しい顔になった。


無精ひげを触り考え込んだ。


しばらくじっと考え込んでるので心配になったベルが恐る恐る


「あのぉ…‥『運命の子』って何ですか?」


エルンハルトは思考を中断されハッと我に返った。


「知らないのか。

そうか。

民間人には秘匿された情報だったな。

でも君がそうなら知る必要がある。

よし、教えてやる。

俺の部屋に行こう。」


エルンハルトが立ち上がった。


ベルは震えを押さえるために脚をパン!と叩いて力を入れ立ち上がった。


エルンハルトはそれに気づき


「歩けるか?手を貸そうか?」


ベルは首を横に振った。


「大丈夫です!

ひとりで歩けます!」


ベルの意識の中で何かが変わろうとしていた。


『運命の子』―――。


それが何であれ、


きっと、


私を変えてくれる。


王女の言いなりになっていた私を。


きっと


もっと


強い私へと―――。


ベルはやっと、


自分を


未来を


信じ始めていた―――。


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