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王女の命令で堅物将軍を騙すはずが、なぜか手を組んで反撃することになりました  作者: RiePnyoNaro


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その29『ベルの秘策』

エルンハルトが会議室を見渡すと、大臣のひとりが手を挙げて言った。


「わしが侍従に記録させておった。

後で提出しよう。」


ハリーは


「ありがとうございます。

犯人が映ってるかもしれないですね。

では、今日の会議はここまでとします。

進展があればご報告します。それでは解散!」


出席者が次々と立ち上がる。ハリーが慌てて


「あっ、言い忘れましたが、証拠保管室の封印魔法は新しい厳重なものにしましたので、入室希望の方は僕にお知らせください。」


会議室からぞろぞろと人々が退出した。


王女付き魔術師レオンは会議室を出る前に、エルンハルト、ベル、ハリーに視線を走らせた。


レオンは心の中で舌打ちした。


婚約発表会の最中を記録した水晶だと?


そんなものがあるのか?……まずいな。


オレがディアナに向けて手をかざし、発火魔法を使ってる場面が映ってる可能性はどれくらいだ?


大丈夫だ。焦るな。


あの大勢の中で、そんな姿が映ってる可能性は限りなく低い。


チッ!それにしてもハルマンの奴め!


証拠保管室の封印魔法を変えただと?


舐めるなよ!


オレだって昇級試験に受かれば、もうすぐ上級魔導士だ。


実力はハルマンと変わらないはず。


王妃様だってオレの実力を評価して王女付き魔術師に任命したんだ。


だが…もし、水晶にオレの姿が映っていればどうなる?


王女付き魔術師の職をクビになるだけじゃ済まないんじゃないか?


王族傷害罪で牢屋にぶち込まれ、魔術師資格を剥奪されて王宮を追い出され野垂れ死にするんじゃないのか?


地位も名誉も財産も、下手すりゃ命まで奪われちまう!


何とかしなけりゃならない!


……そうだ!


本当に『時限発火魔法』の痕跡を王女のドレスに残すってのはどうだ?


証拠保管室に入って。


いい考えだ。


エルンハルトたちはディアナのドレスに『時限発火魔法』がかけられていたと考えてる。


それなら期待に応えてやれば、容疑者の範囲が広がる。


犯人は婚約発表会に出席する必要が無いからな。


学生や素人の魔法研究家まで誰でも犯人になりうる。


チッ!やることが山積みだ。


まず、侵入する前に『時限発火魔法』を発明し、証拠保管室の新しい封印を解く方法も見つけなければならない。


だが、オレならできる!


傍系とはいえ王族のオレなら。


庶民の家柄のハルマンにできるなら、オレにだってできるはず。


やってやるよっ!


レオンは歯ぎしりしながらも、足早に自分の部屋に戻った。


◇


ベルは会議室に居残ったハリーとエルンハルトを前に、思いついたばかりの『犯人捕獲方法』を提案する。


ハリーに向かって


「ちょっと難しいと思うんですけど、こういうのはどうですか?」


それを聞いたハリーは腕組みして


「う~~~ん。できるとは思うけど…一晩はかかるかな。

明日でも間に合うと思う?」


ベルは目を輝かせパチパチと拍手し


「大丈夫ですっ!

たった一晩でできるんですかっ!

すごいっ!やっぱり当代最高の天才魔術師ですっっ!!」


ハリーは緩みきったデレデレ笑顔で頬をポリポリ掻き


「いや~~~、そこまでいわれると、さすがに照れるけど~~~」


エルンハルトが眉間にしわを寄せ目尻をピクピク痙攣(けいれん)させ


「そういうセリフはちゃんと完成させてから言うんだな。」


ギロッと睨みつける。


ハリーは楽しそうに口笛を吹き


「ねぇベル!完成のご褒美には何をくれるの?デートがいいなぁ~~」


エルンハルトは唾を飛ばし


「ハルマンっ!図々しいぞっ!」


ベルは顎に指をあて考え込む。


「う~~~ん。そうですね~~~。」


ハリーはゴクッと息を呑む。


ベルがぱっと顔を上げ


「ハリーさんには今一番欲しいものを上げます!」


「何っ!?まさかっ……」


ハリーは目を見開き、興奮で頬を染めた。


エルンハルトは顔をこわばらせ、ベルを見た。


首をかしげ


「引火事件の犯人をプレゼントしますね」


というと、ベルはニッコリほほ笑んだ。



◇


 ハリーは『ドレス引火事故調査チーム』の設置とともに、王宮の端に位置する倉庫を証拠保管室として使っていた。


会議から三日後の深夜、レオンは密かに証拠保管室を訪れた。


扉の前であたりを見回す。


記録で調べて見つけた封印解除の呪文を唱え、杖でドアノブを叩き、封印を解除しようとする。


しかし、何度別の呪文を試しても封印が解ける気配がなかった。


十数回目の呪文を唱え、しばらく待った。


諦めようとしたその時、カチッ!と音がし、ドアノブが回り、扉が開いた。


中に足を一歩踏み入れようとしたとき、レオンの警戒心が首をもたげた。


まさか…‥‥?


室内の気配を窺(うかが)う。


誰かが見張ってるとか?これは罠?


そうだ、とすぐに打開策を思いついた。


『熱感知魔法』の『波』を杖の先から放ち、周囲を走査した。


人の体温など熱を発するものがあれば手ごたえを感じる魔法だ。


しばらく杖を周囲のあちこちに向けて探ったが、手ごたえは無かった。


レオンはホッとため息をつき、証拠保管室内に入った。


真っ先に目についたのは、奥の机に置かれた二つの木箱だった。


確認すると、一つには燃え残った王女のドレス、もう一つには水晶玉が入っている。


壁際には所狭しと棚が並んでおり、木箱が納められていたが、レオンに必要なのは現在調査中の引火事故に関する王女のドレスと水晶玉のみ。


レオンはためらわず取り出し、まず水晶玉の映像を確認する。


呪文を唱え水晶を杖で指すと、婚約発表会の最中の様子が水晶玉の中に映し出された。


この水晶玉を提出したオルロック大臣の背中が映っており、大臣が振り向き


「ちゃんと撮れてるか?

ザっと会場の様子を撮ったあと、ジョアンナ王太子妃さまを中心に撮るんだぞ。」


侍従の声が


「はい」


その後、水晶玉には会場の様々な場所が映しだされた。ジョアンナ嬢が登場してからはほぼ彼女だけを追っていた。


「きゃーーーーっっ!」


と悲鳴が上がり、そこから移動して、以後は火のついたディアナ王女を映していた。


レオンがディアナを雪魔法で救う場面はあったが、発火魔法をかけている姿は一切映っていなかった。


レオンは安堵のため息を漏らした。


よし。これは問題無し。


次は、ドレスに『時限発火魔法』の痕跡を残せば、容疑者が増えオレたちへの疑いは減るだろう。


レオンは、この三日間、必死になって『時限発火魔法』の開発に取り組んでいた。


魔法をかけると物が一定時間、時を刻むようになる『時刻魔法』。


これは時計の針を動かすときに使用する。


魔法をかけると物が発火する『発火魔法』。


これは蝋燭を灯(とも)す時や調理するときに必要である。


『時刻魔法』と『発火魔法』を組み合わせればできそうだ、という手ごたえはあった。


だが、一定の時間を刻んだ後、発火魔法を起動させる(トリガーをひく)アイデアがどうしても思い浮かばなかった。


最終的に『時限発火魔法』を発明できなかった。


だが、ここまで来て何もせずに帰るわけにはいかない。


レオンは苦肉の策を編み出した。


『時刻魔法』と『発火魔法』をドレスにかけ、ドレスについた火をもみ消せばいい。


両方の魔法の痕跡があればそれらしくなるんじゃないか?


何もしないよりましだろう。


これで捜査は混乱するはずだ。


レオンは燃え残ったディアナのドレスにそれぞれの魔法をかけ、すぐにもみ消した。


ふぅっ。


額の汗をローブの袖でぬぐい、レオンはそっと証拠保管室を抜け出した。


◇



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