その21『婚約阻止作戦』
ベルは将軍宅に向かう途中、小瓶を握り締めて独り言を呟いた。
これがもし毒だったらどうするの?
ベル、エルンハルト将軍に毒を盛るつもり?
ううん!
そんなはずないわ!
だってディアナ王女も将軍のことが好きだもの。
危害を加えようとしないはず。
じゃ何なの?これ?
う~~~ん。
あっそうだ!
コニーに聞いてみる?
薬屋の娘だし、薬に詳しいはずよね?
早くしないと15時に間に合わないっ!
思い立って駆け足で、コニーの薬屋へ向かった。
◇
ベルは薬屋に駆け込み、弾んだ息のまま店内を見回す。
カウンター越しにコニーを見つけると
「ねぇ!コニー!この薬の成分ってわかる?」
小瓶を持ち上げてヒラヒラする。
コニーがベルに気付いて何か答える前に
「あっ!ベルじゃない!どうしたの?」
たまたま居合わせたジョアンナが話しかけた。
ベルは幸運!!と目を輝かせジョアンナに
「これ!エルンハルト将軍に飲ませろって命令されたんだけど、毒かどうか心配で。
コニーに調べてもらおうと思ったんだけど、聖女さまならすぐにわかる?」
小瓶をジョアンナに渡す。
「毒っ?物騒ね。
ちょっと待ってて。
分析魔法で調べてみる。」
ジョアンナは小瓶を両手で包み込み、目を閉じた。
30秒…
1分…
3分…
ベルは落ち着かない。
15時まであと何分?
時計を見るとあと30分しかない!
王女様の命令に背いたら弟と妹が飢えてしまう!
ソワソワしてると、パッとジョアンナが目を見開き
「これは媚薬よ!
xxx草と○○イモリとxx鉱石とxx〇xを混ぜて焼いた灰からできていて、作り方は……」
「あぁっっ詳しい成分はいいからっ!
び『媚薬』なのっ??!!」
ベルの知識では『媚薬』とは『惚れ薬』のこと。
ジョアンナがうなずき
「そうよ。飲んでから一時間後に効果が現れるの。そのとき、最初に目にした異性に恋をするのよ」
「えぇっっ??!!
そ、そんな都合のいいものがあるのっ?!
世界中の非モテの憧れ、ストーカー垂涎の品じゃないのっっ!!
狙った相手を捕まえ放題じゃないのっ!!」
ベルが驚いて唾を飛ばす。
ジョアンナが楽しそうに笑い
「そんなにうまくいかないわ!
だって丸一日で効果が切れるもの!
その間に結婚までこぎつけるなんて、なかなかうまくいかないでしょ?」
それもそうね。
とベルは納得し
「じゃ、将軍に飲ませても大丈夫かな?」
ジョアンナは唇に指をあて
「うーーーん」
と口に出すのをためらい
「もし1時間後に王女様を見たらどうなると思う?」
「え、それは、将軍が王女様を好きになるんでしょ?
でも明日には効果が切れるから、別に何ともならな……」
まで声に出して突然、ベルは思い出した。
「あっ!書斎の机の上の書類っ!!」
叫ぶと、ジョアンナが
「何っ?何の書類?」
ベルが蒼白な顔で
「王女様は1時間後に将軍に姿を見せて、将軍を惚れさせてあの『婚約誓約書』に署名させるつもりだわっ!」
コニーが会話に加わり
「公式な書類?ダメじゃん!阻止しなきゃ!」
ジョアンナが
「う~~~ん。でもどうするの?
あっ!いいアイデアがある!」
「どんな?」
「理由を話して将軍に飲んだフリをしてもらうのよ!
で、王女に一目惚れしたフリをしてもらって、だけど婚約誓約書にはサインしないようにってお願いするのは?」
ベルが首を横に振り
「ダメッ!それはたぶん無理っ!
エルンハルト将軍は演技が下手なのっ!大根なのっ!すぐにバレちゃうっ!」
ベルは将軍の、間の抜けた大声を思い出した。
軍事情報が偽物と王女に見破られたときのあのクサい演技ときたらっ!!
もしかして唯一の欠点?かもしれない。
コニーが困った顔で
「じゃあどうするの?」
ベルは『う~~~ん』と腕組みして考え込んだ。
そしてすぐに、ニンマリ笑った。
「あのね!いい考えがある!今からね、ゴニョゴニョ…‥」
耳打ちすると二人は
「いい考えね!さっそく集めるわ!」
というわけで、王女の『媚薬婚阻止作戦!』を実行に移すことにした。




