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王女の命令で堅物将軍を騙すはずが、なぜか手を組んで反撃することになりました  作者: RiePnyoNaro


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15/22

その15『獅子の石像破壊事件』

ベルはジョアンナ、コニーとともに将軍の邸宅を訪れた。


庭の小道を歩く。


花壇の横にある『獅子の石像』は相変わらず立派だった。


対応してくれた執事にベルが将軍との面会を申し出ると


「残念ですがお会いになれません。」


ベルは怯(ひる)んだ。


やっぱり砦で私を助けてくれたのも、将軍には当たり前の親切心だったのね。


でも、二人を連れてきてしまったのに、無駄足にさせるわけにはいかない。


ジョアンナとコニーの視線を背中に感じ、もう一度


「私はベル・ヴァルナ―です。

国境の砦で将軍にお世話になった者です。」


親しい関係を匂わせるように、ゴリ押ししてみる。


執事は表情を変えず


「旦那様は近頃王都に出没する魔物を退治するために、外出されております。

お帰りはいつになるかわかりません」


ベルは困った。


どうしよう?


いつ帰ってくるかわからない将軍を、ここで待たせてもらうわけにはいかないし。


でも、二人をがっかりさせたくない。


せっかく噂じゃなく私を信じてくれた、貴重な(奇特な?)人たちなのに。


ベルは記憶の中から曖昧な知識を引っ張り出した。


「あの、魔力のある人は『念話』ができるんですよね?

執事さんが使えるなら、将軍に直接聞いていただけますか?」


執事はうなずき


「確認してまいります」


と奥に引っ込んだ。


ジョアンナが


「『念話』のためには念話魔法をかけた水晶が必要だけどね。」


コニーが


「あ~~~!魔力って羨ましい!

私はなぜか家族で一人だけ魔力ゼロだったの」


寂しそうに微笑んだ。


ベルは一瞬、耳を疑った。


え?そんな人が私以外にもいるんだ。


でも分かり合える人と知り合えて嬉しいっ!


ついはしゃいで


「そうなんだ!

私も魔力ゼロなの~~~!

ホント羨ましいよね!

魔力って!なんでもできて!」


コニーが目を輝かせギュッとベルの手を握り


「だよね!

魔力があれば変な男たちに誘拐されそうになっても反撃できるし!」


え?


ベルはビックリした。


まさか……


おそるおそる


「覆面男たちに誘拐されそうになったの?」


コニーがうなずき


「父さんと母さんが魔法で撃退してくれたの!」


ベルが自分を指さし


「私もされそうになったことがある!

もしかして誕生日はx年x月x日?」


コニーが目を丸くして


「えーーーーっっ!!

なぜ知ってるの?」


「私も同じ誕生日なの!

しかも誘拐されそうになったのも同じ!」


「うそーーーーっっ!!気が合う~~~~!」


二人で手を握り合ってピョンピョン飛び跳ねる勢い。


気が合う?ってちょっと意味が分からないけど。


でもベルは確信した。


全世界で魔力が復活した日に生まれ、魔力がゼロであること。


それが『運命の子』の必須条件。


候補が5人にまで絞られている。


そして魔力が存在しない敵国・F国が『運命の子』を仮死状態にしようと狙っているらしい。


私も国境の砦で覆面の男たちに誘拐されかけた。


おそらく、コニーは『運命の子』候補のひとりだーーー。


だって、それ以外の理由で魔力ゼロの人を攫(さら)う理由ってある?ないよね?


え?そういうことにしといてやる?うん。そういうことでよろしく。


そうこうしてると、執事が屋敷の奥から玄関に戻ってきた。


首をひねりながら


「意外なことに、将軍は今すぐお帰りになるそうです。

応接室へどうぞ。」


◇


三人でおしゃべりしながら将軍の帰りを待っていると


コツッコツッコツッ!!


忙(せわ)しない足取りの大きな足音がする。


バタンッ!と扉が開き、エルンハルト将軍が部屋に入ってきた。


肩で息をしている。


慌てて帰ってきたようだった。


ベルが顔を上げる。


エルンハルトは三人に視線をさまよわせた。


ベルと目が合うと、エルンハルトの顔に思わず笑みがこぼれた。


すぐに厳粛な表情に戻る。


将軍は三人に近づき


「ようこそ。

わざわざお越しいただいて。

しかも三人のお嬢さんたちが。

何の御用かな?」


コニーがポッと頬を染める。


サッと立ち上がり薬の包みを手渡し


「ご注文の薬草です!

飲み方をご説明しますね。

ええっと、まず水に薬草を入れて、沸騰しない程度の熱を加えて30分煎じます。

そして…」


説明の途中でエルンハルトは包みを執事に手渡した。


「ありがとう。何度も飲んでるからわかってるよ。

そちらのお嬢さんはジョアンナさんだね?

王子の婚約者の。

用件は何かな?」


ジョアンナが嬉しそうにちょっと高めの声で


「まぁ!知っていただけてたのね!

嬉しいですわ!

用件…?は、そうですね。

古傷が痛むなら痛み止めの『回復魔法』を施術して差し上げます!

いつでも将軍のお望みのときに家へいらしてください。

もちろん初回は無料です!」


目を輝かせてる。


国内で一・二を争う有名人(セレブ)に会えた!というミーハー根性っぽい。


将軍は表情を崩さず


「ありがとう。

で、ヴァルナ―さんのご用件は?」


ベルをジッと見つめる。


穴が開きそうなほどに。


将軍の真剣なまなざしに、ベルの心臓が跳ねた。


けれど、あの言葉が脳裏によみがえった瞬間、胸の奥がチクリと痛んだ。


「べ、別に…何もありません。

お二人が将軍にお会いしたいとおっしゃったので、お連れしただけです。」


エルンハルトは張りつめた糸が切れたように表情を曇らせ、ベルから視線を逸らせた。


目的を果たした三人は将軍邸を去ろうとソファから立ち上がった。


エルンハルトはベルに近づき小声で


「ベル、話がある。」


ビクッとベルの肩が震えた。


「わ、私は話したくありません!」


ベルは逃げ出そうとした。


そのとき、応接室に慌てて駆け込んできた庭師の男性が


「だ、旦那様!

庭の『獅子の石像』が壊されてます!」


エルンハルトは素早く庭へ歩き始めた。


「犯人を見た者は?」


「いませんっ」


「物音を聞いた者は?」


「叫び声が二・三回ありました」


ベルとジョアンナとコニーは顔を見合わせ


「私たちも行こうっ!!」


事件の匂いにドキドキワクワクハラハラしながら将軍の後ろについていった。


庭の小道の途中にある花壇のそばまで来ると、『獅子の石像』の顔の一部が壊れ粉々に砕けた石の破片が散らばっていた。


エルンハルトは石のかけらを拾い観察する。


次に『獅子の石像』本体を調べた。


そして花壇や庭を歩き回った。


庭師も同様に地面を見ながら犯人の痕跡を探した。


ベルの第一印象は『獅子の顔の部分だけを壊すなんて、誰がなぜ?』


気になってジッとしていられなくなったベルも、思わず捜査に参加する。


まず『獅子の石像』の顔だったと思われる、破片を手に取って調べた。


キラッと光るものが石の中に混じってることにベルは気づいた。


これは何……?!


金属光沢のあるものが石の破片に混ざっている、とベルは記憶にとどめた。


エルンハルトは庭の、とある場所にしゃがみこんで地面を調べていた。


ベルもその場所に近づいてみる。


すると、芝の上に茶色いドロッとした液体が大量に落ちているのが見えた。


匂いは?


気になったベルがしゃがみこんで地面に鼻を近づけると、エルンハルトがギョッとしたように


「ベル!

そこまでしなくてもいいんだ。

俺にまかせておけ」


ベルはその生臭い何とも言えない匂いに戸惑った。


知らない匂い。


「嗅いだことのない匂い…何でしょうか?」


エルンハルトはベルの意外な一面を見て驚いたように眉を上げ


「これはおそらく現在王都の様々な場所に出没してる魔物の体液だ。」


「なぜそれがここに?」


しゃがんだまま腕組みして考え込んだベルのそばで、エルンハルトは立ち上がり


「叫び声を聞いたとき、硬い物がぶつかる音は聞いたか?」


庭師は


「いいえ。

ですが一度、叫び声と同時にパンッという音を聞いたような……」


ベルも立ち上がり


「私たちがここへ来たときはまだ石像は壊れてませんでした!」


エルンハルトは


「ふむ。

俺が帰ってきたときもまだ壊れてなかった。

ということはつい先ほどの出来事か。」


と呟くと顎に指を添え考え込んだ。


ジョアンナが


「魔物が石像を壊したんですか?」


コニーが


「なぜ魔物が石像を壊すの?

きっと将軍に恨みを持つ者の仕業よ!

クビになった兵士とか?」


ベルは思わず


「将軍を恨む者なんていませんっ!

勇敢で誠実で正義感があって、強くて逞しくて優しいんだから!」


と口にした直後、ふと我に返って赤面した。


ジョアンナとコニーは目を丸くしてたし、エルンハルトはベルを見てほほ笑むと、楽しそうに口笛を吹き始めた。


ジョアンナは小さく叫び声をあげると


「あっ!きっと魔物が空から落ちてきて石像にぶつかって壊れたとか?」


コニーが


「たまたま?偶然?

でそのあと飛び去ったの?

それよりやっぱり将軍アンチが忍びこんで壊した方があり得るわ!

警備をもっと厳重にした方が…あっもしかして内部犯の犯行?

使用人の中に恨みを持つものが…」


議論が白熱してる。


ベルは金属光沢のある物質を含む破片をエルンハルトに手渡し


「こんなものを見つけました!

犯人を見つける手掛かりになりますか?」


エルンハルトは破片を手渡され、それを確かめると目を見開き


「これは銀鉱石の破片だ。

あの『獅子の石像』を注文した際、銀鉱石を使うよう指示したのをたった今思い出したよ。

……なるほど!そういうことか!」


ベルは


「え?

何が起きたか、もうわかったんですか?」


エルンハルトがうなずき


「ヒントは、『獅子の石像』が銀鉱石からできていたこと。

人の叫び声と同時に聞こえたパンという音。

魔物の体液が落ちていたこと。

そして犯人が素早く跡形もなく消え去ったこと。

これらのことから、推理できるが、わかるか?」

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