↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/67

第6章 - 第6話


 ぶつ切りの声が、ふたたび闘技場に響き渡る。




 『サイゴノ、シレンヲ、カイシ、シマス。コレヨリ、ペアノ「マリョク」ヲ、ツヨク、ムスビツケマス』




 「魔力を結びつける……? どういうこと?」




 サシャが眉をひそめた。



 手首の腕輪が、これまでより一段と強く光る。


 銀色だった表面に、脈打つような赤い筋が走った。




 『ドチラカガ、キズツケバ――モウヒトリモ、オナジ、イタミヲ、ウケマス。フタリデ、ヒトツノ、カラダ、デス』




 「うわ……痛みまで、分け合うってことっすか」




 カイトが、げんなりと顔をしかめた。




 「待って。それって……」




 サシャの声が、わずかに硬くなる。




 「片方が深い傷を負えば、無傷のもう片方も、同じダメージを負うってことよね。二人がかりで戦う意味が、ほとんど消える――」




 「……そんなの、ひどすぎるニャ」




 ミーナが、ぺたんと耳を伏せた。




 『ナオ、コノシレンハ、イママデノ、シレンヲ、スベテ、クリアシタモノ、ダケ、チョウセン、デキマス』




 その言葉に、闘技場が、しんと静まった。


 すべての試練をクリアしたのは――ライラと、ゴウエンの二人だけ。



 ドラゴが、ばっと顔を上げる。




 「おい、待てよ。じゃあオレたちは――」




 声が、途中で止まった。



 自分の手首を見る。


 腕輪は、もう光っていない。


 試練の資格を失った者の腕輪は、ただの銀の輪っかだった。



 見ているしか、ない。



 ライラが、すっと立ち上がる。


 ゴウエンも、無言で巨大な盾を担ぎ直した。


 二人は、迷うことなく中央へと歩み出る。



 その瞬間。


 ドォン――と、闘技場全体が、激しく揺れた。



 地面が割れ、中央から、何かがせり上がってくる。



 二体。



 今までの土のゴーレムとは、まるで違う。


 見上げるほどの巨体。



 全身を覆う、黒く光る装甲。


 そして、その目には、ぎらりと赤い光が宿っていた。



 一体は、丸太のような両腕を持つ。


 もう一体は、自分の背丈ほどもある巨大なハンマーを担いでいた。



 ただの石像じゃない。


 生きている。


 そう錯覚させるほどの、ぴりぴりした殺気が、全身から立ちのぼっている。




 『フタリノ、バンニンダ。ドウジニ、ハカイ、シナケレバ――ナンドデモ、フッカツ、スル』




 外野のドラゴが、ごくりと唾を飲み込んだ。




 「おい……あれ、ヤバくねえか? 今までの奴らと、放ってる空気が……まるで違うぞ」




 誰も、軽口を叩かなかった。


 あれは、ただの訓練の的じゃない。


 本物の、化け物だ。



 ライラが刀の柄を握り、ゴウエンがその背に寄り添う。


 いつも通りの、布陣。




 『ソレデハ――ハジメ』




 合図と同時。


 二体の番人が、地を蹴った。



 巨体が、信じられないスピードで突っ込んでくる。


 あんな図体で、なぜこんなに速い――そう思う間もない。




 「はあっ! ――『紫雷閃(しらいせん)』!」




 ライラが、紫電をまとって一体に斬りかかる。


 今までのゴーレムなら、簡単に両断されていた一撃だ。



 だが、番人は――その巨体からは想像もできない身のこなしで、ひらりと刃を躱した。




 「なっ……!」




 外野で、サシャが息を呑む。


 そして、番人の丸太のような腕が、裏拳となって振り抜かれた。




 「くっ!」




 ライラは間一髪、刀の腹を盾にして受け止める。



 だが、防ぎきれない。


 凄まじいパワーに、身体ごと後ろへ弾き飛ばされた。


 腕に、ビリビリと痺れが走る。



 その、瞬間だった。


 ずっと後方で、援護の構えを取っていたゴウエン。


 彼の腕が、びくんと跳ねた。




 「ぐっ……!?」




 ライラの腕を襲った痺れが、そのまま、ゴウエンの腕にも流れ込んだのだ。


 何もしていないのに、いきなり全身に走った衝撃に、巨体がぐらりとよろめく。



 たたらを踏んだ、その一瞬の隙。


 もう一体の番人が、ゴウエンの頭上に回り込んでいた。


 両手で振りかぶった、巨大なハンマー。




 「ゴウエン、上だ!」




 ライラの叫びと同時に、ゴウエンは歯を食いしばった。


 背丈ほどもある『大地の塔盾(タワーシールド)』を、頭上へ掲げる。


 盾の表面に魔力が走り、分厚い岩の層がみるみる覆っていく。




 「――『剛岩の盾(ストーン・シールド)』!」




 ――ズガァァァン!!


 凄まじい音とともに、ハンマーが盾に叩きつけられた。


 岩の層に、ばきりと深い亀裂が走る。



 盾は、なんとか砕けなかった。


 だが――殺しきれなかった衝撃が、腕を伝って、ゴウエンの身体を内側から打つ。




 「ぐぅっ……!」




 腕の骨が、ぎしりと軋む。


 内臓が、ぐらりと揺れた。



 その瞬間。


 離れた場所で、ようやく体勢を立て直し、反撃に移ろうとしていたライラ。


 その顔が、ぐにゃりと苦痛に歪んだ。



 ゴウエンの痛みが、そっくりそのまま、流れ込んでくる。


 踏み込もうとした足から、がくんと力が抜けた。




 「しまっ……!」




 膝が、折れる。


 ライラの動きが、ぴたりと止まった。




 「……待ってよ」




 外野のサシャが、杖を握りしめたまま、かすれた声を漏らす。




 「ライラが攻撃をもらえば、ゴウエンの動きが止まる。ゴウエンが庇えば、その衝撃でライラの足が止まる」




 カイトが、ぽつりと続けた。




 「……それ、どっちかが動くたびに、もう片方が止まるってことっすよね」




 ライラがダメージを受ければ、ゴウエンの足が止まる。


 ゴウエンが痛みを負えば、ライラの剣が鈍る。



 庇おうとするほどに、二人は、互いの手足を縛り合っていく。


 その、致命的な隙を――番人たちは、見逃さなかった。



 二体が、同時に動く。


 動きの止まったライラめがけて、丸太のような腕とハンマーが、容赦なく振り下ろされた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。