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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第6章

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第6章 - 第2話


 門が閉じた先にあったのは、拍子抜けするほど狭い部屋だった。


 ひんやりとした石畳が床一面に敷かれ、灯りもないのに、ぼんやりと明るい。


 ただそれだけの、何の変哲もない四角い空間。



 ミーナがきょろきょろと首を巡らせ、ぴょこんと猫耳を傾けた。




 「あれぇ? こんな狭いとこで、いったい何やるんだニャ?」




 その言葉が、合図だった。


 ふっ――と、足元の石畳が淡い光を放つ。



 次の瞬間、ぐにゃりと景色が歪んだ。


 まるで水たまりに映った風景を、棒でかき混ぜたみたいに。




 「うわっ、なんだ!?」




 ドラゴが思わず身構える。



 誰もが目をぎゅっとつむり、また開けたとき――


 そこは、もう狭い部屋ではなかった。



 見上げるほど高い天井。


 どこまでも続く、丸いドーム状の広大な闘技場。


 たった今まで立っていたはずの石の壁は、跡形もなく消え去っていた。




 「おおっ、これはすごいな!」




 ライラが目を輝かせ、ぐるりと天井を見回す。


 その隣で、ゴウエンが静かに腕を組んだ。




 「映像のまやかしじゃないな。部屋そのものが、本当に広がったんだ。とんでもない魔法だ」




 一同が呆然と立ち尽くしていると、どこからともなく声が降ってきた。


 ぶつ切りで、抑揚のない、妙に気味の悪い声が。




 『コレカラ、シレンヲ、カイシ、シマス』




 「うわっ、なんか喋ったっす!」




 カイトが珍しく飛び上がった。




 『マズハ、メノマエニアル、ウデワヲ、ソウチャク、シテクダサイ』




 声に合わせて、床の中央がせり上がる。


 現れた石の台座の上には、ひんやり光る銀色の腕輪が、ぴったり六つ並んでいた。



 六人がそれぞれ手首に通す。


 かちゃり、と小さな音を立てて、腕輪はぴたりと肌に吸いついた。




 『マズハ、キョリカンノ、トックンデス。ペアハ、カナラズ、タガイニ、ゴホ、イナイニ、イテクダサイ』




 「五歩……?」




 サシャが眉をひそめる。


 杖を握ったまま、半歩ぶん、横へ間合いを測った。




 「近すぎでしょ。後ろから撃つ私には、ちょっと……」




 『デハ、ソコノ、アカガミト、クロボウシ』




 声が、二人を指名した。


 ぐん、と足元の石畳がせり上がり、ドラゴとサシャは闘技場のど真ん中へと押し出される。



 ドラゴは大剣を肩に担ぎ、サシャは杖を軽く握って、二人は並んで立った。




 「まあ、よくわかんねえけど、サシャの近くにいりゃいいんだろ?」




 ドラゴがにっと笑って、親指で自分を差した。




 「サシャ、オレからあんま離れんなよ?」




 「気持ち悪い言い方しないでよ」




 サシャがじろりと睨み返す。




 「離れないようにするのは、逃げ回るあんたのほうでしょ。せいぜい私の足を引っ張らないでね」




 「あぁ? 誰が逃げ回るって――」




 二人がぎゃあぎゃあ言い合った、その時だった。


 二人の目の前の地面が、ぼこぼこと盛り上がる。


 土の塊がむくむくと形を変え、ずん、と一体の人型へと立ち上がった。



 全身が固い土でできた、ずんぐりとした巨人――ゴーレムだ。




 「お、なるほどな。要するに、こいつをぶっ倒せばいいんだろ? わかりやすくていいや!」




 ドラゴの目が、ぱっと輝いた。


 考えるより先に、足が動く。


 大剣を構え、一直線にゴーレムへと駆け出した――




 「あ、ちょっ、待ちなさいよ馬鹿ッ――」




 サシャの制止は、間に合わなかった。


 二人の距離が、ぐん、と開く。五歩を、超えた。




 ――バチィィィッ!!




 「「ぎゃあぁぁっ!?」」




 腕輪から、鋭い光がほとばしった。


 全身の骨という骨が、内側からビリビリと震える。


 髪の毛が逆立ち、息が一瞬で詰まった。



 ドラゴもサシャも、まるで操り糸を切られた人形みたいに、その場にどさりと倒れ込む。




 「いっ……痛ーい! なによこれ、なんなのよ!?」




 サシャが涙目で頭を抱える。




 「て、敵の攻撃か!? いつの間に魔法を――」




 とんちんかんなことを言うドラゴに、外野からカイトの間延びした声が飛んだ。




 「二人とも、よーく見るっす。ゴーレムは何もしてないっすよ。離れすぎてるんす、五歩以上」




 「……あ」




 ドラゴが、ぴたりと止まった。


 ゆっくり振り返れば、サシャは遥か後ろ。


 自分がひとりで突っ込んだせいで、二人の距離はとっくに開ききっていた。




 「いやー……あれは痛そうだニャ」




 ミーナが、ぺたんと耳を寝かせて苦笑する。



 倒れたまま、サシャがぎりぎりと牙を剥いた。




 「この馬鹿ッ! 全部あんたのせいじゃない! 何にも考えずに突っ込むなって言ってるでしょ!」




 「わ、わりーわりー!」




 ドラゴはばつが悪そうに頭をがしがし掻いて、それでもすぐに不敵な笑みを取り戻した。




 「でもよ、仕掛けがわかりゃ楽勝だろ。要するに、二人で突っ込みゃいいんだ。サシャ、行くぞ!」




 「……ったく、最初からそうしなさいよ」




 ぶつぶつ言いながらも、サシャは立ち上がる。


 今度は、二人は五歩の間合いを保ったまま、じわじわとゴーレムに迫っていく。



 ゴーレムが、丸太のような腕を振りかぶった。




 「サシャ、合わせろ!」




 「言われなくても!」




 ドラゴの大剣が、横一閃。同時にサシャの杖から、まばゆい光の矢が放たれる。


 剣がゴーレムの胴を断ち割り、光の矢がその胸を撃ち抜いた。


 土の巨人は、ばらばらと音を立てて崩れ落ちる。




 「ふっ、なんだ。楽勝じゃねーか」




 ドラゴが大剣を肩に担ぎ、得意げに鼻を鳴らした。


 ――が、その笑いは長く続かなかった。



 ずず……ずずずっ。


 地響きが、足元から這い上がってくる。


 崩れたゴーレムのそばで、地面がふたたび盛り上がっていく。



 今度は、一つではない。左右から、二つ。


 むくり、むくりと、二体のゴーレムが土を割って這い出してきた。



 サシャが、ふっと口の端を上げる。




 「……なるほどね。そうやって、どんどん増えていくわけ」



いつも読んでくださり、ありがとうございます。

1点、お知らせです。


この作品をより読みやすく、面白くするために、

第1章から少しずつ、表現や描写を見直していきたいと思います。

話の展開が変わるわけではないので、読み直していただく必要はありません。


ただ、それに伴い、しばらくの間は最新話の更新が不定期となります。

もしかすると週1更新くらいになるかもしれません。

楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。


これからも「ドラゴ・ライズ」をよろしくお願いします。

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