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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第1章

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第1章 - 第6話



 「次は、体力測定だ」




 移された先は、見上げるほど高く切り立った絶壁の下だった。


 首が痛くなるほど仰がなければ、てっぺんは見えない。




 「お前らには、この崖を登ってもらう。そのタイムを計る」




 ざわつく受験者たちに、パウルは続けた。




 「ただし――登る間、魔力の使用は一切禁止だ。純粋な体力のみで登れ」




 そして、全員に、銀色の腕輪が渡される。




 「これには、さっきの結晶のかけらが仕込んである。魔力が流れれば、光る。光った時点で、スタート地点からやり直しだ。さらに――十分を超えたら、強制終了。そこまで登った高さが、記録となる」




 十分。その制限が、絶壁の高さを、いっそう残酷に見せた。




 最初の五十人が、崖の下に並ぶ。


 号令とともに、一斉に登り始める。



 だが、進まない。


 岩肌は無情なほど手がかりが乏しく、半分も行かないうちに、握力の尽きた者が次々と落下していく。



 短い悲鳴。砂を巻き上げて転がる音。


 十分以内に登りきれたのは、たった六人。


 それも、八分台、九分台という、ぎりぎりのタイムだった。



 ところが、次の組から空気が変わった。


 筋骨隆々の肉体に鋭い眼光、そして額から角のようなものが生えた男。


 周りからは鬼人族と呼ばれていたその男は、岩を蹴り砕くような跳躍で、わずか三分台でてっぺんに到達した。




 「……ふんっ」




 喜ぶ素振りは、まるでない。それどころか、まだ登れずにいる者たちを、冷たく見下ろしている。



 さらに、しなやかなバネで五分台を出す獣人族の女。重装備のまま六分台でねじ登る国軍兵たち。実力者は、たしかにいた。


 だがそれでも、全体の多くが、崖の中腹で力尽きていった。




 例の魔人族の少女の番も来た。


 魔力を封じられた彼女は本領を出せず、途中で静かに手を止める。




 「……体力勝負は、私の専門外よ」




 誰に言うでもなく呟いて、涼しい顔で地面に降り立つ。


 取り乱しも、悔しがりもしなかった。



 そして、ドラゴとトジの番が来た。




 「おい、あいつ……さっきの魔力ゼロの奴だぜ」




 「どうせ、体力もダメだろ」




 陰口が、ちらほらと聞こえる。だが二人は、まるで気にしていなかった。




 「トジ、競争な!」




 「うん。負けないよ!」




 ごつん、と拳を突き合わせる。



 パウルの号令がかかる。


 号令とともに、ドラゴが岩肌を掴み、一気に駆け上がっていく。周りから歓声が上がった。



 だが――それより、すごいものがあった。



 隣を登るトジだ。



 崖のわずかな出っ張りに足をかけ、その脚力で一気に押し上げる。


 出前で鍛え抜いた体幹は、微塵もぶれない。



 さらに街中の人を縫うような動きで、右に左に、次の足場をどんどん見つけ、とにかく凄まじい速さで、まるで地面を駆けるように飛び移っていく。


 下から見上げる受験者たちが、ぽかんと口を開けた。さっきまで嘲笑っていた連中が、声を失っている。



 二人は、ほぼ同時に、てっぺんへ手をかけた。



 結果は――トジ、四分二十六秒。ドラゴ、四分二十九秒。


 わずか、三秒差。




 息を切らせたトジの顔に、会心の笑みが広がる。




 「やった……勝った!」




 「くっそー、負けたー!」




 悔しそうに、けれどどこか誇らしげに、ドラゴが笑う。


 トジは、誰かを見返そうなんて、これっぽっちも考えていなかった。


 ただ、友人との競争に、夢中だっただけだ。



 最終組まで終え、十分以内に登りきれたのは、わずか三十五人。


 三百人を超える受験者の、およそ十人に一人だった。



◆◆◆



 受験者たちは、再び最初の広間へ集められた。



 一次試験の、合格発表。


 パウルが、名簿を手に、番号を読み上げていく。




 「二十七! 五十九! 七十二!……」




 先ほどの鬼人族の男や魔人族の女、国軍兵たちの番号も、当然のように呼ばれた。


 そして、二人の番が近づいてくる。トジが、両手を組んで祈った。




 「――三百三十四! 三百三十五!」




 呼ばれた瞬間、トジが両手を突き上げ、天を仰いだ。




 「やったああ!」


 「よっしゃあ!」




 ドラゴと、思いきりガッツポーズをぶつけ合う。魔力ゼロの絶望からの、見事な大逆転だった。




 「言っただろ、トジなら大丈夫だって!」




 「うん!」




 だが、喜びに浸る間もなく、番号を読み終えたパウルが次の言葉を口にする。




 「合格者は、以上。――では、続けて二次試験の説明に入る」




 ドラゴが、ふっと不敵に笑った。




 「へっ。休ませてはくれねえらしいな」



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