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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第1章 ──「出会いと、守護者試験」

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第3話 ──「二丁拳銃と、小さなお守り」


◆◆◆


 白竜麺を平らげ、おかわりまで頼んだドラゴ。


 のんびりしているとリコイがふと、暖簾の向こうへ目をやった。




 「……トジのやつ、遅いな」




 「そうなのか?」




 「ああ。あいつの足なら、とっくに戻ってる距離なんだがな」




 ドラゴは箸を置いて立ち上がる。




 「暇だし、ちょっと見てくるよ」




 暖簾をくぐると、街はすっかり夕暮れとなっていた。




 近くを歩いていると広場の方から、子供の泣き声が聞こえた。


 ドラゴは、駆け出した。



 広場に着くと人だかりができていた。



 その中心には、地面に座り込んで泣きじゃくる女の子。


 その前に、庇うように立つトジ。



 そして、二人と向かい合うように、図体のでかい男が三人。


 遠巻きに、街の人間が様子を窺っている。




 「誰か、守護者呼んでこいよ……」




 「関わりたくねえよ、あんな連中に」




 そんな声がするが、誰も一歩を踏み出そうとはしない。


 人垣は、ただじりじりと後ろへ広がっていくだけだった。



 トジの声が響いた。




 「だから、この子もちゃんと謝ってるだろ!? こんな小さい子ども相手に、恥ずかしくないのかよ!」




 先頭の男が、薄く笑う。




 「俺はなあ、差別のない、平等な世界ってやつを目指してるんだ。女だろうが子供だろうが、関係ねえ。そっちが先にぶつかってきた以上、けじめはつけてもらわねえとな」




 言葉だけ聞けば、立派だ。だがその瞳の奥は、ぞっとするほど冷えていた。




 「……それの、どこが平等だよ」




 トジが拳を握る。




 「差別のない世界ってのはな、誰もが笑って暮らせる世界のことだろ!」




 「はっ。方向性の違いってやつだ。関係ねえ奴は、引っ込んでな」




 男が、抱えていた太いこん棒を、無造作に振り上げた。


 トジと女の子の頭上へ、それが落ちてくる――


 トジは、女の子を抱き寄せて、背を丸めた。



 ガキンッ!



 鈍く、重い金属音。


 振り下ろされたこん棒は、横から滑り込んだ赤い大剣に、真っ向から弾き返されていた。




 「ドラゴ……!」




 ドラゴは大剣を肩に担ぎ、にっと笑う。




 「トジ! その子はオレに任せろ! あんな奴ら、やっちまえ!」




 一瞬、トジの目が見開かれた。


 魔力がない自分に対し、なんの躊躇いもなく戦えると信じてくれた。



 その意味が、胸の奥にじわりと熱を灯す。


 これまで、誰も言ってくれなかった言葉だった。




 「……ありがとう、ドラゴ!」




 トジは、腰の左右から二丁の拳銃を引き抜いた。



 銃身が、周囲の空気を吸い込むように低く唸る。


 目に見えない魔力が、二つの銃口へと圧縮されていく。



 見物の輪が、ざわりと揺れた。



 次の瞬間、トジの姿が消えた。


 いや、消えたように見えた。


 石畳を蹴り砕く、乾いた音。地を這うような低い姿勢から、まっすぐ三人へ突っ込んでいく。




 「な――速っ……!?」




 男たちがこん棒を振り下ろす。



 だが、当たらない。


 トジは、その巨体の間を紙一重ですり抜けていく。



 魔力で身体を強化したわけじゃない。


 出前で鍛え抜かれた脚と体幹、そのバネだけで、トジは重力すら忘れたように跳んだ。




 「すっげえ……!」




 ドラゴは、思わずその光景に見とれていた。



 広場の噴水の縁を蹴る。


 木の幹を駆け上がる。


 街灯の柱を支点に、空中でくるりと身を翻す。



 三人の視線が、まるで追いつかない。


 上へ、横へ、後ろへ。三つの顔が、ばらばらに泳いだ。




 「ど、どこだ……どこにいやがる!」




 そして、頭上、背後、あらゆる方向から、トジが二丁の銃口を突きつけた。




 「――『銃連弾(じゅうれんだん)』!」




 光の弾が、四方八方から襲い掛かる。


 響き渡る破裂音。そして光の軌跡が、広場を縦横に走った。




 「ぐあっ!」




 男たちは弾を防ぎきれず、何発も身体に受ける。


 一発一発の威力は大したことないが、確実にダメージを与え、やがて、なすすべもなく膝から崩れ落ちる。




 「く、くそ……っ、やりやがったな……!」




 一人がこん棒を杖代わりに、よろよろと立ち上がる。




 「こうなったら、こっちも本気で……」




 「――おい! お前ら、そこで何をしている!」




 遠くから、鋭い声が飛んだ。


 広場の入り口に、守護者らしき人影が見える。



 男たちの顔色が、さっと変わった。




 「ちっ……ここで目を付けられるのは良くないな。行くぞ」




 捨て台詞を残し、三人は転がるように逃げていった。



 静かになった広場。


 トジが女の子に駆け寄り、その頭をそっと撫でる。



 やがて両親らしき人影が、泣きながら娘を抱き上げていった。


 去っていく間際、女の子が振り返って、小さく手を振った。



 ドラゴとトジは、肩で息をしながら、どちらからともなく顔を見合わせる。


 そして、ふっと噴き出した。




 「お前、マジですごいな! めちゃくちゃ強えじゃねえか!」




 「そんなことないよ。ドラゴこそ、あの重そうなこん棒を、軽々と受け止めてたじゃない」




 「あのくらい余裕、余裕。それより――」




 ドラゴは、トジの持っている拳銃を指さした。




 「その拳銃、どうなってんだ? 魔力を撃ってなかったか?」




 するとトジは持っていた二丁の拳銃をドラゴに見せた。




 「実はこれ、魔具なんだ。空気中の魔力を吸い込んで、圧縮して、弾にして撃ち出してくれるんだよ」




 「へえ、そんな魔具があんのか」




 「魔力のない僕でも使える、大切な相棒で……僕の、お守りなんだ」




 「お守り?」




 「うん。昔、商人だった父さんと母さんが旅をするときに、護身用に使っていたものなんだ。だから父さんと母さんが護ってくれてる感じがして……」




 するとドラゴが、トジの肩にがっしりと腕を回し、顔を近づけてニッと歯を見せた。




 「へへっ、そりゃ最強のお守りだな!」




 「ありがとう!」




 二人は、どちらからともなく拳を突き合わせた。




 「なあ、トジ」



 ドラゴが笑う。




 「二人で最強の守護者になろうな」




 「……うん!」




 暮れきった空に、一番星が瞬いていた。



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