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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第2章

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第2章 - 第5話


 左右の壁を転がる岩石の音が、渓谷にこだまする。


 空を埋め尽くす、巨岩の雨。逃げ場はない。



 目の前に広がる絶望的な光景。だが、十人は――怯まなかった。




 「オレに任せろ!」




 真っ先に飛び出したのは先頭にいたドラゴだった。大剣に赤い魔力が宿る。


 地を蹴り、空中へ跳ぶ。

 



 「『竜の爪』!」




 一閃。頭上の巨岩が、真っ二つに割れた。




 「へへっ、どうだ!」




 しかし、両断された岩は、左右の岩壁にぶつかり、その衝撃で新たに別の落石を生み出す。


 その瓦礫の雨が、後ろの仲間たちに降りかかろうとする。




 「ちょっと、被害をふやしてどうすんのよ! 『光の盾(イージス)』」




 すかさずサシャが杖を掲げた。


 光の壁を頭上に展開し、落石を弾く。




 「わりぃ、わりぃ!」




 一方、右ではライラが叫ぶ。




 「ゴウエン、右を護れ! 私が前を――」

 



 「おうっ、まかせろ!」




 ゴウエンが背中に担いでいた巨大な盾を構え、地面に叩きつけた。




 「『大地の城壁(テラ・ウォール)』!」




 ズン、と分厚い土の壁が、轟音とともにせり上がる。横の壁面から転がってくる岩を、まとめて受け止めた。



 ――だが。


 壁を生み出すために地面が変形し、周りの足場が歪む。

 



 「えっ……うおっ!?」




 後衛から水魔法を放ち、落石を砕いていたカイトの体勢が大きく崩れる。


 攻撃は外れ、落石が近くに降り注ぐ。




 「ゴウエン!? こっちの足場まで持っていかないでほしいっす!」




 「あ、すまねぇ!」




 左翼ではグレンが自身の槍――『朱炎』を構えた。 




 「――ここは、自分が!」





 穂先に、凄まじい炎が渦を巻く。




 「『朱雀炎武(すざくえんぶ)』ッ!」




 噴き上がった炎が、迫りくる巨岩を真っ向から焼き払う。


 だが――狭い道での炎は思った以上の広がりを見せ、すぐ隣で凄まじい跳躍とともに岩石を蹴り出していたミーナをかすめる。

 



 「あちちちっ!? 熱いニャー!」

 



 毛を逆立てて、ミーナが転げ回る。




 「し、しまっ……ミーナさん、申し訳ありません……!」




 血の気の引いたグレンが、慌てて炎を引く。




 「私が一気に岩石を砕くわ!」




 中央にいたシエルは両手をかざす。




 「『氷華の剣(エペ・ド・グラス)』!」




 馬車の頭上に大量の鋭い氷の剣が生成される。


 シエルが手を振りかぶると、一斉に落石に向かって放たれる。



 次々と砕かれる岩石。しかし、その剣は前線で岩石を切り裂いていたガロウをかすめる。




 「うおっ……!? ちぃっ、邪魔をするな!!」




 「ご、ごめんなさい!」




 個々の能力は申し分ない。


 しかし、誰もが「自分がなんとかする」と動き、その全てが自分たちの首を絞めていた。



 トジは全体を見渡し、この状況をどうにかしなければならないと焦っていた。


 すると、頭上の落石に気づくのが遅れた。



 急いで後ろに大きく飛び、回避するトジ。


 しかし――



 着地した、そのすぐ頭上に、影が差した。


 これまでとは比べ物にならない大きさの巨岩だった。



 馬車から少し離れていたため、当たることはないだろうと誰も破壊することなく落下して来ていた。




 「あっ!!」




 時が、止まったように感じた。

 

 逃げられない――トジは、ぎゅっと目を閉じた。



 その瞬間、黒い影が、横から飛び込んできた。




 「――どけぇっ!!」




 猛スピードで突き飛ばされ、トジの体が地面を転がる。


 入れ替わるように、その男は――両腕を頭上へ突き上げ、落ちてくる巨岩を、真っ向から受け止めた。


 パウルだった。


 肉と岩がぶつかる、鈍い音。

 

 両腕の筋肉が、千切れんばかりに盛り上がる。岩の重みに、ミシミシと骨が軋んだ。

 



 「ぐ……ぅおおおおっ!」




 踏ん張った足が、地面にめり込む。膝がぐらりと折れた。


 口の端から、つぅ、と赤いものが伝う。




 「パウルさんっ……!」




 トジが、悲鳴のように叫んだ。


 パウルは、岩を支えたまま、ぎりっと歯を食いしばる。


 血走った目で、トジを睨みつけた。




 「……っ、聞け……」




 絞り出すような、声。




 「必ず……お前たちの手で……要人を、護り抜け……!」




 その瞬間、支えていた腕が、限界を迎えた。


 巨大な岩塊が、パウルの体を呑み込み、地面深くに沈み込む。


 沈みこんだ岩石は全く動かない。




 「おい、嘘だろ……?」




 ドラゴが、呆然と立ち尽くす。


 誰もが、目の前の光景を受け止めきれずにいた。



 その瞬間、ヒュッ――と鋭い風切り音が静寂を裂いた。


 一本の矢が、馬車の車輪を撃ち抜く。


 乾いた破壊音とともに、車輪が粉々に砕け散り、馬車が、ガクンと傾いた。

 


 そして、落石によって舞い上がっていた土煙がゆっくりと晴れていく。

 

 その向こうに、影が見えた。



 一つ、二つ、三つ。……いや、もっと多い。


 崖の上、道の前後に、顔を布で覆い武器を構えた男たち。その数は十を超えている。


 誰一人、声を上げない。ただ無言で、ぴたりと足並みを揃え、十人と馬車を完璧に包囲していた。



 十人の新人たちは――本物の死線に立たされていた。



第2章もここまで読んでいただきありがとうございます。

各章10話前後の想定のため、ちょうど折り返しくらいです。

引き続きよろしくお願いします。

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