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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第2章

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第2章 - 第2話


◆◆◆



 王都を出発して、数時間が経った。


 馬車を囲むように歩く十人の間には、なんとも言えない、ちぐはぐな空気が流れていた。



 ギシ、ギシ、と車輪が軋む。ばらばらと続く、砂利を踏む足音。それ以外に、音はない。


 最低限の指示や意思疎通以外、誰も口を開こうとしなかった。



 初任務ということもあり、隊列の一番後ろにはパウルが帯同しているが、特に口出しはしない。


 十人を見守るように、ただ無言で歩いている。



 別に、十人はいがみ合っているわけではなかった。


 ただ――初任務の緊張、周りへの警戒、そして素性も知らない同期。


 どう歩調を合わせればいいのか、分からなかった。



 その重い沈黙に、最初に口を開いたのはトジだった。


 


 「……あ、あのさ、みんな」




 ぎこちなく、首だけで振り返った。




 「……せっかくだから、もうちょっとお互いのこと、知り合わない?」




 数歩分の、長い沈黙。


 それを破ったのは、最後尾からの気だるげな声だった。




 「ふゎ……賛成っすー」




 のんびりと欠伸をしていた少年が一人、片手を挙げる。




 「おいら、みんなの名前まだ半分くらいしか覚えてないんで。ちょうどいいっす」




 腰の水筒をぷらぷらと揺らしながら、ゆるい口調で口を開く。




 「おいらはカイト・レイン。水魔法を使うっす。なるべく、危険なことと、疲れることは遠慮したいっす。無理せず、ほどほどが信条なんで、まあ、ゆるーくよろしくっすー」




 「はいはいっ! 次はアタシニャ!」




 気の抜けた挨拶に被せるように、小柄な影がぴょんと跳ねた。


 ぴんと立った耳が揺れ、腰の尻尾がぶんぶんと左右に振れている。




 「アタシはミーナ・フェリス! 猫の獣人族だニャ! 村の代表として、念願の守護者になったニャ!」




 みんなをぐるりと見回して、にっと白い歯を見せて笑う。




 「難しい作戦とかはちょーっと苦手だけど、みんなの役に立てるように頑張るから、よろしくニャ!」




 その無邪気な笑顔に、張り詰めていた空気が、少しだけほどけた。



 続くように、凛とした少年が一歩、列の中央へ進み出る。




 「では、自分も」




 背筋を定規のように真っ直ぐ伸ばした男が、視線を前方へ固定したまま口を開く。




 「自分の名前は、グレン・スザク。得意なのは槍術と、火魔法です。護衛任務という重責――必ずや、完璧に遂行してみせます」




 あまりに生真面目な宣言に、わずかに空気が硬くなりかけた。


 だが、それをふわりと溶かすように、白銀の髪が日の光を弾く。




 「ふふっ。みんな、個性的で頼もしいわね」




 一人の女性が、口元に上品な笑みを浮かべた。




 「私はシエル・アイシクル。得意なのは氷魔法よ。……みんなと仲良くやっていきたいから、よろしくね」




 柔らかな笑顔、その物腰に列の空気がまた一段と和らいだ。




 「じゃあ、次はオレだな!」




 待ちきれないとばかりに、ドラゴが胸を張った。




 「オレはドラゴ・ヴォルガッシュ、竜人族だ! どんな敵が来ても、この大剣で全部まとめてぶっ飛ばしてやる! よろしくな!」




 背中の大剣を親指で示し、にかっと豪快に笑う。


 その隣で、サシャがやれやれと肩をすくめた。




 「……ほんと、そればっかりね」




 呆れたように呟く。


 そして――彼女の番が、回ってきた。



 サシャは、ほんの少しだけ歩くペースを落とした。


 帽子のつばに指をかけ、深く被り直す。けれど、目元までは隠さない。


 吸い込まれそうな緑色の瞳を、まっすぐ前へ向けたまま、彼女は静かに口を開いた。




 「私は、サシャ・ルミナス」




 声は、凛と澄んでいた。




 「得意なのは、光魔法。……それから、もう知ってると思うけど」




 少しだけ間が空く。




 「私は――魔人族よ」




 はっきりと言い切った。



 その瞬間――、和みかけていた空気が、ぴたりと止まった。




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