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七人の令嬢  作者: 夕景孤影
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40. ザフィーラ「早く滅びないかな」


夢にしてはリアルすぎるし、頭もはっきりと冴えている。むしろ意識を失う前よりもずっと。もしかしたら元の世界の私はあのまま過労死して、ゲームの中の世界に転生した?……最近はそんな設定のゲームもやたら増えてるけど、さすがに無いだろう。きっと夢だ。昏睡状態の私は、夢の中でヒロインになりきって攻略の続きをしている。仕事熱心にも程がある。


でもそう考えると、ザフィーラになっているのは納得するしかない。今まさにザフィーラシナリオの攻略中だったからだ。

攻略中、ということはつまり、まだクリアしていないということ。それどころか、まともなハッピーエンドの一つも見つかっていない。あらゆる選択肢がバッドエンド、それも死につながっている。何度も言うけど、このシナリオを考えた奴は馬鹿なんだろうか。


とりわけ現在進行中の全方位攻略ルートは行くも地獄、戻るも地獄。どっちを向いても悲惨な末路ばかりが待ち受けている。たとえ夢でも絶対にあんな死に方はしたくない。攻略のプロとして、何が何でもハッピーエンドルートを見つけ出さなくては。


単純な選択肢総当たりではろくな運命に辿り着けない。それはすでに検証済み。おそらくカギを握るのはザフィーラ以外のヒロインの攻略状況だ。

七人のヒロインの物語はそれぞれに関連し合っている。一人ずつ攻略することもできるけど、複数のシナリオを同時進行すると、一方のヒロインが別のヒロインを助けたりして世界の歴史の流れが変わっていく。


そこで気になるのはザフィーラの設定にある災厄の預言。美しすぎるあまりに争いの種となり、やがて帝国を内側から滅ぼしてしまうとされている。

ひょっとすると、それこそがザフィーラの生き残る道なのかもしれない。どの皇子と結ばれても酷い目に遭うのなら、むしろ全皇子がいなくなれば自由の身になれるのかも。


とはいえ、いくらザフィーラが傾国の美女でもさすがに女の取り合いだけでこの大帝国が滅ぶとは思えない。ワシリウスなりオウランなり、敵対する国々の力が必要だ。

そのためにも、フリーダやユエたちに頑張ってもらわないと。彼女たちの立ち回り方次第ではワシリウスやオウランの方が先に滅んでしまうパターンもあり得る。


そしてさらに重要なのは、この二国をつなぐキーパーソンの存在。洋の東西を股にかける貿易商のアユラ、そして西の玄関港、リベルタの命運を握るルイザ。この二人の活躍によって、巨大なバラクシャー包囲網が完成するかもしれない。


残念ながら今の私はザフィーラシナリオに固定されてしまっていて、別のヒロインの攻略に関与することはできないようだ。なんとか彼女たちを手助けして、望む方向にシナリオを進めることができないだろうか……

そこで一人、手駒に使えそうな皇子に思い当たった。あいつなら簡単な口車でどうとでも操れそうな気がする。しかも多分、そう遠くないうちに、もしかしたら今夜中にもここにやってくる気がする。

問題は誰に何をどう伝えるか。メッセンジャーボーイに託す手紙の中身を考えないといけない。私はベッドから跳ね起きて机に向かった。


それにしても……どうせゲームのヒロインになるなら、やっぱりザフィーラ以外がよかった。だって……

攻略対象が全員ヒゲ!

全皇子がヒゲ!

まだティーンエイジャーのクルンバトでさえ似合わないちょびヒゲを生やしている。

バラクシャーではヒゲを生やしていないと大人の男と認められない。いやヒゲダンディーが好きな人もいるんだろうけど、あいにく私は好きじゃない。というより苦手。そもそも女を巡ってすぐに刀を抜くような連中とまともに付き合えるはずがない。いつまでこの夢が続くか分からないけど、できれば早くこの国を脱出したい。


私は攻略中のゲームでは推しを作らない主義だ。特定のキャラに思い入れがあると攻略の勘が鈍る。それでもこのゲームは登場人物が多いから、好みのタイプのキャラがいないわけじゃない。


最多の攻略対象が登場するルイザシナリオでは、やっぱりジャレトが大本命。とにかく有能で絶対的に頼りになって、兄とも幼馴染ともつかない曖昧な距離感をキープしつつ、甘えるのが苦手なルイザを徹底的に甘やかす。実にツボを押さえている。


ヒュリックはフリーダ専用機だからとりあえず置いといて、わりと気に入ってるのは副官のホルツ。司教様大好きフリーダを健気にサポートし、息の合った相棒的ポジションに甘んじながらも、時々のぞかせる断ち切れない想い。こういう報われないキャラほどついつい応援したくなる。どうせ攻略するならヒゲよりそっちがいい。ああ、早く滅びないかな、バラクシャー。


物騒な物思いに耽りつつ、ちょうど必要な準備が一通り終わったところで夜も更けて、予想通りの侵入者がやって来た。先刻の騒ぎでヤフディンがブチ破ったままの天窓からロープを垂らし、スルスルと降りてきたのは第十皇子のクルンバトだ。

私はベッドからシーツを引き寄せて顔の半分を覆い、ザフィーラの演技を再開する。


「いけません、皇子様。約を違えてここに来られては、太子様や他の皇子様たちがどれほどお怒りになるか……」


「何も恐れはしないさ。ザフィーラ、僕と一緒に行こう!君は自由だ!」


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