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七人の令嬢  作者: 夕景孤影
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28. イライサ「馬鹿みたい」


「イライサ様のことをそんな風に言うのはやめてください!王子様だけはイライサ様のお気持ちが分かるはずですよね?」


私の名前?どうしてここで私の話を?

てっきり二人で甘い言葉でも囁き合っているのかと思ったら、どうもそんな雰囲気ではなさそうだ。思わず呼びかけようとした声を呑み込んで、様子を窺ってしまう。


「もう昔の彼女じゃない。まるで宰相の言いなりの操り人形じゃないか。あの老人はイライサを使ってこの僕まで支配しようとしているんだ」


「お祖父様の存在が大きすぎて誰よりも苦しんでるのはイライサ様です!いつも完璧でいなくちゃいけない、誰にも弱みを見せられない、だからいつも一人ぼっち……でも王子様だっていつも完璧な姿を求められる辛さをご存知じゃないですか!だったらその辛さを二人で分かち合うことだってできるはずです!」


「僕は何度も手を差し伸べようとしたけど……彼女は誰の助けも求めてなんかいない。いつも冷たく人を見下すような目をした彼女をもう見ていたくないんだ!」


自分でも気付かないうちに、私はそんな目をしていたのだろうか?そうかもしれない。私はルシエットやその周りの気楽そうな令嬢たちをどこか見下して、軽蔑していたかもしれない。王子のことさえ聞き分けのない子供のようだと侮って、私は一つ上の目線から教え諭そうとしていた。まるでお祖父様みたいに。


私は王子の言葉に少なからず動揺し、その場から逃げ出そうと思った。でも続くルシエットの言葉が私の足をその場に留まらせた。


「違います!イライサ様はそんな方じゃありません!ただいつも完璧でいようとして息をつく余裕も無くて……本当の顔に戻れないでいるだけなんです!でもイライサ様のことちゃんと見てれば分かります。時々浮かべる優しい顔や寂しい顔……たまには自分の本当の気持ちを誰かに話したいんじゃないかって。あたし、この方ともっとお話したい、お友達になれたらって……」


この子は何を言ってるんだろう。私はルシエットのことなど眼中に無かった。どうして皆がこの子を気にかけるのか、楽しそうにこの子のことばかり話すのか、全く理解できなかった。

知性も品性も足りない、取るに足らない平民出の娘が、寂しそうな私を哀れんでお友達になりたい?呆れた思い上がりだと腹が立った。そしてやっぱり彼女を見下してしまっている自分が嫌になった。


まるでお祖父様みたいな考えだ。王子の言う通り、私はまるでお祖父様の考えをなぞって動く人形のようだ。宰相セルゲイ・ミロスラフの孫という仮面ではなく、本当のイライサ・ミロスラフを見ようとしてくれていたのはこの子だけだったのに。


「ルシエット……」


気が付くと私は二人の前に歩み出ていた。


「イライサ様!?」


悪戯を見つかった子供のような声を上げるルシエット。この子は本当に自分のしていることが分かっているのだろうか。


「もしかして今の聞こえてました!?あの、違うんですあたし!お友達なんて身の程知らずだって分かってます!ただあたしがそうなれたらいいなって勝手に思ってるだけで……えーっと、妄想?そう!妄想みたいな……」


何の心配をしているのやら。今問題なのはそんなことじゃないでしょうに。

私の呆れた視線に気付いてルシエットはようやく今の状況を理解する。


「……あっ!!いや違います違います!これはそのっ、お二人の結婚を邪魔しようとかそんなとんでもないこと全然思ってなくてっ!ホントに全然っ!あたしはただ王子様に分かってほしくって!絶対にイライサ様を大切にされた方がいいってこと……だってあたしなんかじゃいっつも馬鹿なこと言ってばっかりで、王子様のお悩みとか全然分かってあげられないしっ!ホントに王子様のことを分かれるのはイライサ様しかいないから!だからあたし、お二人にもっとお互いのこと大切にしてほしくてっ!」


何をそんなに必死になっているんだろう。私と王子がどうなろうとあなたには何の関係も無いでしょう?ろくに相手もしなかった私のことを自分のことみたいに本気で考えて……馬鹿みたい。


でもそれがルシエットなのだ。ようやくこの子のことが分かった気がする。


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