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七人の令嬢  作者: 夕景孤影
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27. イライサ「お好きになさいませ」


「ルシエットはただ愉快なだけの子じゃないよ。僕にとって必要な人だ。僕は彼女をツェスタナに連れて行こうと思っている」


思わず耳を疑った。

ツェスタナは王族専用の保養地で、王家の直系が妻を娶る時はまず、そこにあるブロド・ツェスタナ教会で祝福を受ける慣わしだ。当然ながら王子がそこに伴う相手は正妃に限られる。


「……正気ですか?陛下は何と?」


「父は関係無い。もちろん君のお祖父様もね。僕が人生を共にする伴侶は僕が決める」


どうやら冗談ではなく、決意は固いようだ。私は軽い目眩を覚える。


「少しは大人になられたかと思ったのですが……お忘れですか?私たちはそんな勝手が許される立場ではありません」


「立場立場……君はいつもそればかりだ。その口はお祖父様の口か?君の人生はお祖父様のものか?自分のことも自分で決められない者が国の未来を決められるのか?一体何のための……誰のための立場だ?」


いつになく喧嘩腰の王子に私は呆れ、冷静な対話を諦めた。これ以上何を言ったところで耳に入らないだろうし、どうせ王子がどう考えたところで認められるはずがない。


「……お好きになさいませ」


睨みつけるような王子の視線を受け流し、私は嘆息した。


結局、王子の希望が叶うはずもなく、ルシエットとの結婚は認められなかった。それどころか、怒ったお祖父様は王子の希望を跡形も残さず踏み潰すかのように、直ちに私と王子の婚約を正式決定した。

お祖父様が一度下した決定は国王でさえ覆せない。まして王子が何と言おうと結論は変わらない。


半年後にはもう結婚式だと一方的に知らされて、さすがに私も驚いた。でも心の準備ができていなかったわけではない。それにどのみち私の心模様など最初から問題ではなかった。


そして私は王子と共にツェスタナに向かった。

道中の馬車の中で、王子は一言も口をきかなかった。別に会話が無くても構わないけれど、結婚相手がへそを曲げた子供では先が思いやられる。私はこの先ずっとこの方と歩調を合わせて歩んでいけるだろうか?この方は本当にこの国の輝かしい未来を築く王となれるだろうか?私はその助けとなれるだろうか?

今のところ、私たちの前途は一寸先も見通せない夜闇の中にあるように思えた。


教会から祝福を受ける前には数日ツェスタナの離宮に滞在し、関係を深めるのが通例だった。いわば婚前ハネムーンのようなものだ。しかし王子は離れの部屋に閉じ籠もり、私と顔さえ合わせようとしないまま三日が過ぎようとしていた。


頭が冷えるまで少しそっとしておいた方がいいと思い、無理に会おうとはしなかったが、さすがにこれでは埒が明かない。そろそろこれからのことを建設的に話し合わなければ。そう説得するため王子に会いに向かった。そこにルシエットがいた。


庭園に囲まれた王子の部屋のテラスに、王子と並んで語らうルシエットの姿があった。まさか密かに連れてきていたなんて。


お祖父様がこんなことを知ったら大変なことになる。それともそれが狙いだろうか?私に恥をかかせてミロスラフ家を侮辱することで、宰相の権力と真っ向から対立するつもりなのかもしれない。


もしそんなことになったらお祖父様はどんなことでもやりかねない。王子を廃嫡にするか、場合によっては今の王を退位させて自分の意に沿う傀儡を立てることさえあるかもしれない。この国の真の支配者が誰か、国中が知っている。


王子自身の身の破滅だけでなく、国の体制さえ危うくするような愚行だ。こんなことはやめさせなければ。そう意を決して二人に呼びかけようとした時だった。ルシエットが急に大きな声を上げた。


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