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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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本戦 2


「…………あぁ」


 刃は視線を左下に泳がす。今は1番、聞きたくなかった単語だ。


「ん? どうした、少年よ?」


「いや……その……行き方は知ってますが……」


 刃は言葉を詰まらせた。多分だが、この人もI-Gの関係者なのだろう。

 大方、外国からわざわざ見に来たという感じか。だから『Jアリーナ』に行きたがっているんだ。

 行き方は確かに知っている。しかし、その行き方はもう死んだ。自分だけでなく彼まで絶望の淵に叩き込むのは気が引けるのだ。


「本当か!? 行き方知ってるんだな! どこだか知ってるんだな!」


「まぁ……俺達もついさっきまで行こうとしてましたから……そこ……」


 ハァとため息を着く刃に対し、男は目を輝かせる。


「お前最ッ高だぜ! なら案内してくれ! 俺様がそこまで連れてってやる!」


「いや……その、実はそこへ向かえる電車が人身事故で止まったらしくて、動く見込みが1時間後らしいですからどうやっても──」


「そんな待てるかよ! それに言っただろ!」


 そう言って彼が刃の腕をガシッと掴むと、


「っ!?」


 刃の身体に痺れが走る。いや、体が全て雷の膜に覆われていたのだ。


「(な、なんだこれ!?)」


俺様が(・・・)連れてってやるってな!」


 そしてその男に引っ張られるまま、刃と藍の体は空を舞った。


「なっ!?」


 あっという間に刃の視界にあったものはミニチュアのように小さく写り、空にあったはずの雲には手が届きそうになっていた。

 簡単に言えば、宙に浮いていたのだ。


「行くぜ!」


 そして加速。そのスピードは辺りの景色を一瞬でただの色に変えて見せた。



「(すげぇ……翔矢より疾い! けど……)」


 刃は気付いてしまった。空から見えた電車と方角からして、こっちは……。


「逆方向ですぅぅうぅう!!!」





「…………」


 一方、光は『J-アリーナ』に向かうバスの中で携帯のディスプレイに表示された電話番号を睨んでいた。


「……刃君から、まだ連絡ない?」


「あっ、な、なんでもない! そんなんじゃないってば!」


 亮の言葉で意識を戻すと携帯をしまう。


「……あいつはいつもギリギリだよな、色んな意味で」


 その流斗の言葉にほぼ生徒は頷いて同意。


「……でも……すごいよ、刃は。こんなときでも……変わらないんだもん。私は緊張して、眠れなかった」


 蓮の言い方は『物は言い様』と言うやつだ。


「あいつはただデリカシーが無いだけよ」


「……そう言われてみれば、そうかもね」


「そうなのよ、実際」


 バス内の全員が苦笑。もう1人、変わらず寝ている特待生を除き。




          ✩




「へぇ……くしゅん!」


「どうした、風邪か?」


「こんな寒いとこにいるからですよ!?」


 刃は凍える身体を温めるため、両腕で藍を抱きしめる。ここはニホンの北東部。現在の気温は3度。


「そうか? 俺様がいたとこはここよりもっと寒かったが」


「アーーイ!」


「そんなことより早く戻りましょう! 開会式に間に合わなくなります!」


「おぉそうだな! んじゃ行くか」


 そういうと再び刃の二の腕を掴んで飛ぶ。


「いくぜぇ!」


「だから……そっちじゃなあああぁぁぁい!!!」


 刃の嘆願の声は男が風を裂く音に掻き消された。




          ✩




「……………」



 あれから約1時間。光は険しい顔で携帯のディスプレイとにらめっこしていた。


「ひ……光ちゃん……まだ、刃君から連絡は……」


──バキッ!


「ヒィッ!」


 今度は亮の言葉にも返さず、強く握りしめたせいで携帯が軋んでいる。


「……あの糞馬鹿ナマクラ刀、一体どこで何してやがるのよおおおおっ!!!」


 今、光達がいるのは本選開会式の入場門。そう、あのとき刃を待っていた場所である。

 その場所でよもや同じ人間をまた待つ羽目になるとは、さすがに誰も思っていない。


「もう、いい! 待ってられない!」


 とりあえず現状だけでも確認するために、光はその番号へ電話をかけたのだった。



          ✩



「……おい」


「……はい」


「……ここはどこだ?」


「アーーイ!」


  刃達3人はただっ広い原っぱに。


「いや~……もしかして、また間違えたか? アッハッハッハッ!」


「もしかしなくても間違えてます!」


「アーーイ!」


 刃は嘆息と共に盛大に肩を落とした、その時だった。


──ピリリリリ……!


 携帯の着信音。電話ということは、相手は限られている。ディスプレイを見ると『大門寺光』の文字。

 いや、落ち着け火野刃。話せばきっと分かってくれる。今回ばかりは情状酌量の余地はあるはずだ。

 せめて半殺しくらいまでには持っていかなくては。刃は覚悟を決めて電話に出る。




「…………はい」


『死に方の希望はある?』


 進捗、ダメです。




「……せめて、半殺しにはなりませんか……」


「お前、一体誰と電話してるんだ?」


「幼なじみです」


「その会話からは微塵も感じられないが」


 いかん。このままでは会場に着いても身の危険がある。なんとか生き延びる術を見つけなければ。


「待ってくれ光! あとちょっと! あとちょっとでそっちに着くから!」


『ふーん。じゃあ5分ね。それ以上は待たない』


「そ、そこをなんとか! 光様! 光大明神様! こっから会場までじゃ5分は無理です!」


「……会場?」


 刃と光のやり取りを聞いていた彼が、その単語に反応を示した。


「……おい。まさかその電話の相手、『Jアリーナ』にいるのか?」


「え? ま、まぁそうですけど」


「でかした!」


「え!? ちょっ!?」


 彼は刃から無理矢理に携帯を奪い取ると、光に向けて言った。


「おい、電話を切らずにそのままにしとけ。すぐに連れていくからよ」


 そう言って携帯を刃に投げて返すが、今のは一体どういう事だろうか。


「あの……今のって」


「俺様はな、電波を体で読み取れるんだ。つまり電波がどこから来ているかも掴むことが出来る」


 そうして彼は燈気を練り、紋字を唱える。


「『肆紋字フォーススキル電子通信ネットワーク』!」


 無数に張り巡らされた電気の網がその電波を捉える。


「ふ、肆紋字フォーススキル!?」


 肆紋字フォーススキルは使える人はいるが、ここまで大規模に使える人は見た事がなかった。

 彼は……何者なのだろうか。


「さてボウズ……たしかお前は、『5分』って言われたんだったな」


「え? あ、はい。そうですけど」


「なら、そいつに言っておけ」


 そうして彼は燈気を一気に膨れ上がらせた。




「2分もあれば、十分だってな」


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