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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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本戦 1


 なんでこうなった、火野刃は述懐する。


「ウオオオオオオオッ!」


「アーーイ!」


 朝の桜ヶ峰町を藍を抱えて駅に向かって全力疾走しながら、刃は思い返していた。

 原因は確実に、昨日の夜のせいだ。あんなことさえなければと。




──それは昨夜。I-G本戦前夜。




『かんぱーい!』


「アーーーイ!」


 刃達、幼なじみ一同と藍は刃宅で本選前日祝いをしていた。

 とはいえ明日も早いし、少しだけという話であったのだが。

 しかし、この頃の年は一番そういうことを守れない時期でもある。


「でな、あの時、刃がなぁ!」


「それを言うなっての!?」


「そんなこといったら翔矢だってねぇ……」


「全くだ」


 そんな感じで盛り上がったところで、


「せや! ワイ今日はいいもん持ってきたんや」


 そう言って翔矢がバックから取り出したのは、どこかで見たことがある銀色の飲み物。


「お、おいこれ」


「せや、ちょっと苦い大人のジュースや」


「いや、お前……ダメだろこれは……」


「えぇやん! 今日だけ、今日だけえぇやん! ただのジュースやって!」


 その翔矢の押しに負けて飲んでしまったのが、今日、自らを追い込む羽目になったのだ。

 畜生、まだ軽く頭が痛てぇ。刃は頭を抱えながら時計を確認する。


『まだ家だと!!?』


 今朝の電話越しに、この流斗の叫び声が頭に響いた。


『あ、あんた今朝、家に行ったら先に行っててって言ってたじゃない!?』


 流斗の携帯を奪ったのだろう。話す光の声が刃の頭の中で木霊する。

 そう、行くはずだったのだ。しっかりバッチ持ったか確認して、母から昔もらったお守りも持って。

 しかし、頭の痛さに負けて甘んじてソファーに「あと3分」といって寝っ転がってしまったのが運の尽きだった。


「ウオオオオオオオッ!!!」


 このざまだよ。


「アーーーイ!」


「藍、頼むから暴れないでくれ! 一刻を争うから!」


 流斗の話では次の電車に間に合えばまだギリギリ間に合うということだ。

 大丈夫、まだいける。刃はそう言い聞かせて駅へと死ぬ気で走るのだった。



『ただいま7時15分頃、東蛙駅での人身事故により、井の中の蛙線は全線運転を見合わせております』


「グフゥ……グフゥゥッ……」


 終わった。刃は人がごった返すホーム外の駅の端っこで両手を着き、泣くことしかできなかった。




          ✩




「…………」


 刃は左手で藍の手を引き、右手で持った携帯のディスプレイに表示されている光の電話番号と睨み合いながら、来た道をゆっくり戻っていた。


「電話なんか……できねぇ」


 今の現状を伝えようにも、どんな雷……いや、爆弾が落ちるかわからない。

 刃はハァとため息を着くと、携帯を2つに畳んでポケットにしまった。


「アイ?」


 不可思議そうに顔を覗き込む藍。きっと昨日までとは違うテンションを疑問に思っているのだろう。

 本当なら、今頃I-Gに出て脚光を浴びている予定だったのに、どうしてこうなった。


「……俺の馬鹿野郎」


 そう呪いながら角を曲がったせいだろうか。


「──ウォアッ!?」


 天罰が降った。目の前にあった硬い壁に真正面からぶつかったのだ。


「痛た……なんでこんな場所に壁なんか……」


「おいボウズ。大丈夫か?」


「……え?」


 刃が顔を上げると、ギョッと目を丸くした。

 目の前にあった……いや、いたのは体格がいい成人男性。壁などではなく、ぶち当たったのはその人の腹筋であったらしい。

 その人の美しいミディアムの銀髪、そして翠色の瞳、そして両頬にある翠色に輝く傷痕が刃の目を奪った。


 そして次に恰好。どこかの制服であろうか、妙にぴっちりした青っぽいズボンに白シャツに黒ネクタイ。

 そして一番上に白のローブを羽織り、その右胸辺りに虎を象ったような紋章がある。

 あれ? このローブ、どこかで見たような気が……。


「ってか、人だぁ!?」


「……はい?」


 そんな意味不明なことを言っているかと思えば、今度は彼は刃の肩を掴んで強く揺する。


「なぁ、ここどこなんだ! ここは何処の国だぁ!?」


「(な、何言ってんだ、この人……)」


 見た感じ、外国の人ではあるだろうが、この国に入る時に入国の手続き等をしているはずで、この国を知らないはずが無いのだが……。

 刃は違和感は覚えたが、とりあえずその問いに返しておく。


「こ……ここはニホンですけど……」


「ホントか!? ホントにホントなんだな!? ここはニホンなんだな!?」


「はっ、ハイそうです! だからそんなに揺すらないでくださいぃぃぃッ!」


「おっ、悪い悪い! つい興奮しちまってさぁ! この頃、懐かしく人と喋ってなかったっつーか人と会わなかったっつーか、牛とかとしか会ってなくてさぁ! この辺でやっと人に会えるようになったと思ったらみんな俺を避けるしよぉ!」


 彼は泣きそうな顔で物申す。そりゃそんな人並み外れた恰好じゃあ仕方ないとは思う。

 しかし、わざわざ地雷になりそうなことを踏み抜くほど、刃の危機管理能力は低くなかった。


「あっ、あと1つ聞いてもいいか?」


「なんですか?」


「『J-アリーナ』ってのはどこだかわかるか?」

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