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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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デート・パニック 5


「「…………」」


「「…………」」


 刃と亮、光と流斗。その両者の間にゲームの軽快な音楽とは正反対の重い時間が流れる。

 刃はこの重い空気に冷や汗が止まらない。


「り、亮、今の発言は一体……」


「……刃君はね」


 その空気を最初に破ったのは、亮だった。


「……貴女の用事より、私を選んでくれたんだ。あなたより……私を選んだの! この……三条 亮を!」


 亮は刃の腕を解き、自身の胸に手を当ててそう言い放つ。


「お、おい亮、お前今日どうしたんだよ。 やっぱりなんかおかしいぞ」


「何が? 刃君、私のこと好きって言ってくれた。あれは嘘だったの!?」


「好きって……あ、あれは亮が魅力的な女の子だって意味で──」


「……なまくら、あんた……最低じゃないの?」


 その光の言葉は刃の心に深く刺さる。


「……あんた、自分の言ったことに責任も取れないの?」


 感情のないその静かな言葉に、刃は妙な苛立ちを覚える。


「……なんで、お前にんなこと言われなきゃなんねぇんだよ?」


「事実を言ったまででしょ。亮は嘘をつけるタイプじゃないし、むしろ嘘は嫌いなタイプよ。あんたの言うことより信用できるってだけ」


 刃は硬く拳を握りしめた。その言い分が何か……無性にイラついたから。


「……だから……何でただの幼馴染(・・・・・・)のお前なんかに言われなきゃならないんだって言ってんだよ」


 ピクッと光の眉が跳ねる。


「……あーら、無責任野郎が何吠えてるのやら。そうやって話題逸らして最終的に有耶無耶うやむやにしようって魂胆見え見え。あ~やらしいやらしい! 本当に最低」


「いい加減にしろよ……お前になんでそんなことまで言われなきゃいけないんだよ! お前は俺の保護者でも何でもねぇ! ただの幼なじみだろ!」


「えぇそうよ! あんたと私はただの幼なじみよ! 別にあんたがどこで何しようが私のしったことじゃないわ! 私が言ってるのは亮のためだけよ! 誰があんたのような軽薄な男の心配してやんなきゃいけないのよ!」


「それがお節介だってんだよ! これはこっちの問題だ、お前が口だしする筋合いはこれっぽっちだってねぇ!」


 ゲームセンターの中に2人を止める店員も客もいない。流斗と亮もそれぞれの後ろで傍観している。

 そんなことはお構い無しに刃と光は顔を近づけて睨み合っていた。


「えぇそうでしょうね! あんたが将来、糞な大人になろうが私の知るところじゃない! ただそれで泣かされる人がいるのが耐えられないだけなのよ!」


「お節介だって言ってるだろうが! もういい、埒があかない。亮、少しこっちで話そう」


 そう言って刃は光に背を向ける。


「……こっちだってもういいわよ。流斗、私たちも行きましょ。こんな最低野郎はほっといて」


 光も背を向ける。ただ、その場で2人とも一向に歩き出さない。


「……さっさと行けよ」


「あんたらが先行けば?」


 その場にさらに重い時間がのしかかる。流斗は2人を厳しい目で睨み、亮は想定以上に気まずいことになってしまっておどおどするのみ。


「……あぁわかったよ! それじゃあデートをお楽しみになってください、大門寺さん(・・・・・)!」


「えぇ、そちらもね! 火野君(・・・)!」


「えっ、ちょっと刃君!?」


 そう言って刃は亮の手を引き歩き出す。


「(……引き止めも、しないのかよ)」


「(……刃の、馬鹿)」




──ドオオオオオオオオオオンッ!!!




『!?』


 全員の身体が揺さ振られ、皆その場に体を崩す。


「なっ、なんだ!?」


 その後にジリリ……と火災警報機の音。ただ事ではないことは明らかだった。


『皆さん、ただいま3階ゲームコーナーより火災が発生致しました。焦らず、係員の誘導に従ってください!』


「!?」


 災害が起きたことを知ると、そのアナウンスで刃達は立ち上がる。


「急いで避難するぞ! 外に出ろ!」


 外に出る前に、刃にはしなければならないことがある。


「亮と光は先に出ろ!」


「先に出ろって……刃君はどうするの!?」


「俺は藍を見つけたらすぐに出るから、大丈夫だ」


 そう、藍をコインゲームの場所に置いてきていた。急いで合流して避難しなければ。


「!? 藍がいるの!?」


 光はそれを聞くと真剣な面持ちで刃の腕を掴んだ。


「私も行くわ。来るなっていっても行くからね!」


「……お前は昔から、こうと決めたら聞かないもんな。わかった」


「俺も行くぞ。足手まといにはならん。お前は先に出てろ。ここから先は俺達だけで行く」


 流斗は亮にどこか冷たく言い放つ。なんとなく、いつもの流斗らしくない。何か、怒っているような感じだ。


「えっ……でも、元はといえば私が無理に言ったからこうなったの! 私も藍ちゃんを助けに行かせて!」


「悪いが、赤の他人(・・・・)は信用できない性質タチなんだよ」


「……っ!?」


 その言葉に亮はビクッと身体を震わせ、一歩後ずさる。


「な、何言ってるの流斗君。赤の他人って、私達クラスメイトじゃ──」


「お前、亮じゃないだろう?」


「「……え?」」


 光と刃は首を傾げた。目の前の女子が……亮ではない?


「……とにかくここからは3人で行く。お前は外で救急隊の人でも来たら俺達のことを報告してくれ」


「…………」


 何も言わない亮をその場に残し、少し後ろ髪を引かれる思いで刃は奥のコインゲームコーナーに急ぐのだった。



          ✩




「……流斗、さっきのはどういうことだよ」


「さっき……ってのは、俺があいつに言った言葉のことか?」


「そうだよ……なんで彼女が亮じゃないなんて」


「あれは亮じゃない」


 そう、流斗はもう一度はっきり断言する。


「……根拠があるの?」


「いや。姿を変えていた可能性もあるが、刃に3秒以上触っていた時点で『擬』の可能性は消えてる」


「じ、じゃあどうして──」


「今はその話は後だ」


 そういうと流斗はコインゲームコーナーの前で足を止めた。そのすぐ近くには黒い煙を吐き出す2階への階段。


「先ずはこの辺を探す! 2人は右を、俺は左だ」

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