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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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デート・パニック 3


「じゃあこれも買いっと!」


 そう言って亮は服をレジに持って──


「って、ちょっと待て亮! それ全部買う気か!?」


「うん、そうだけど?」


 レジの上には服の山。デスクから落ちそうなくらい乗っかっている。


「いくらなんでも買い過ぎだろ!? いつ着るんだよ、そんな大量の服!?」


「毎日、交換して着るに決まってるじゃない。変な刃君」


 キョトンとした表情で言ったかと思えば、そう言ってクスクス笑う亮。


「いや……だからってそんなに買うことは──」


「わかってないなー刃君は。女の子はいつだって可愛くありたいものなんだよ。それにこのブランド好きなんだもん! かわいくない、これとかこれとかぁ!」


 そういっていくつも取っ替え引っ替え、服を見せてくる。その生き生きとした表情はいつもの亮からは考えられなかった。


「アイ!」


 藍も可愛い服を見るのは好きなようで、亮に同意したように応える。


「意外だな、亮がそんなに服に興味があるなんて。もっとぬいぐるみとかのイメージだったよ」


「あぁそうなの! 部屋とかぬいぐるみまみれでさぁ。ホント少しは服にも興味を──」


「は?」


 亮はそこで自らの口を塞ぎ、ごまかすように机の上の服を集める。


「こ、これくださぁい! この最新のやつ~!」


──この違和感は気のせい、か? ホントに。


 会計をしに行った亮を見届けながら刃が首を捻っているときだった。




「ねぇねぇ流斗! こっち来てよ、かわいいのがあるわよ!」


「(……ん? この声って……)」


 どこかで聞いた事ある声。しかも今聞いた名前すら聞き覚えがあった。

 いや、きっと気のせいだ。確かに出掛けるとは聞いていたが、そんな偶然あるわけが──


「おい光。そんなヤケになって買ってるとすぐに資金が底を突くぞ」


「…………」


 そっと体を棚の影に隠しながら、刃は声のした方を覗いてみる。


「だってー! こんなに可愛いのよ!? やっぱり買いたくなるのは女の子のさがってやつなのよ!」


「やれやれ……」


「(ヤッベェェェ!? 光と流斗がいる!?)」


 まずい。こんなとこで鉢合わせたら気まずいなんてものじゃないし、流斗の邪魔だってしたくない。


「亮! こっち来てくれ、早く!」


「えっ? あっ!?」


 急いで試着室に亮の手を引いて入り、カーテンを締める。


「じ、刃君!? いきなりどうしたの!?」


「アーーイ!」


「頼む2人とも! 少しだけ静かにしててくれ!」


「ムグッ!?」


 刃は咄嗟に亮の口を右手で、藍の口を左手で塞ぐ。

 口を塞がれた亮は怒りからか顔を真っ赤にしているが、今はそれどころではない。どうにかやり過ごさなければ……!



          ✩



「うわーっ! このピンクのTシャツもかわいい~!」


「……お前は本当にピンクが好きだな」


 流斗は光が買った服を両腕溢れんばかりに持たされていた。誘って断られた刃の代わりに。


「うん! てか、ごめんね流斗。ホントはあの暇人に手伝わせようと思ったんだけど……」


「いや別に、今日はそれといって用事もなかったからな。刃も用事があるならしょうがないだろ?」


「まったく、あの暇人の用事なんてたかが知れてるけどね」


 当の本人がその服を見ている隣で聞き耳を立てていることなど、2人には知る余地もない。


 誤算だった。まさか今日、光が来たがっていた店が亮と被るなんて……。


「でも流斗のおかげで助かるわ。私の『激』で持てる数なんて限られてるから」


「それはいいが、あんまり買い過ぎるなよ」


 最新のデザインが並んだ棚の服を容赦なく掴み取って見る光に流斗はそう注意。

 「わ、わかってる」と言って戻す光だ。


「むしろ悪いと思ってるくらいだからな、お前には」


「えっ、なんで? 持ってもらってるし私の方が悪いじゃ──」


「……『相手が刃じゃなくて』って意味だよ」


「(……え?)」


 試着室の中から聞いていた刃には、流斗の言葉の真意を捉らえられない。

 しかし光にはわかっているようで、光は呆れたように笑った。


「……なんだ、そんなこと。別に大丈夫なのに。それに刃がダメだったから流斗、ってわけじゃないわ。元から2人に頼む予定だったの。捕まったら翔矢も呼ぶ予定だったんだけど、あいつ逃げたのよねー」


 そう言って笑いかけてくる光に流斗は一瞬心臓を高鳴らせると、困ったように少し顔を反らす。


「な、ならいい。変なことを言って悪い」


「ううん。それよりここで買いたいものは買ったから、今度は大通の店に行きましょ?」


 そう言って2人の声が遠ざかっていくのを確認してから、刃達は更衣室から出てきた。

 楽しそうだった。周りから見てもあの2人はお似合いだ。美男美女のカップル。非の打ち所なんかあるわけない。

 邪魔なんて、できない。


「光……か。ふぅ~ん、可愛い子だね」


 と、亮のそのセリフに刃は疑問を感じる。


「……声でわかっただろ? それになんかその言い方おかしくないか?」


「……ねぇ、刃君」


 亮は試着室の地面から一段上がった段差から降りると、こっちに笑顔で向き直った。


「今日は……デートって言ったでしょ?」


「え? あっ、あぁ」


「だったら、今度は刃君がお勧めの場所に連れてってほしいな」


「ん、んなこと言われても、俺はデートなんてしたことないし……」


「じゃあ、あの子。光と一緒に行く場所。そこに連れてって」




          ✩




「……あのさ、刃君」


「……おう」


 言われて刃は亮を連れてきていた。刃が光とよく来る場所、おそらく光と一番よく遊んでいる場所。


「……ここ、なの?」


「……あぁ」


──行き付けのゲームセンターの前に、2人して立っていた。


 わかってる、きっと間違ってる。亮はゲームなんかしないし、多分、興味もない。


「わっ、悪いな亮。やっぱりどっか別のとこに──」


 そう言って亮に向き直ると、


「はぁぁぁあぁぁ……!」


 さっきより目を輝かせていた。

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