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I'tem(アイテム)~最弱のヒーローの物語~  作者: 西野大河
第3章 I-G
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デート・パニック 2


          ✩



「まさか、こんなことになるとは……」


「アーイ!」


 そんなことがあって、刃と藍は『桜ヶ峰駅』の前にある丸やら円錐やら四角やらを組み合わせたオブジェの前にいた。

 これが芸術と言うのなら、俺には芸術なんて一生わからねぇな、なんて思いながら。


「……しかし、藍のこと言えなかったけど家に置いてくるわけにもいかないし。どうしよ……」


 本当は光の家に言って預けたり出来たら良かったのだが、朝の美瑛との約束が無くなった時に今日は大丈夫になったと連絡してしまった手前、もう一度頼みに行くというのはしにくかった。

 おそらく亮の性格を考えると藍がいても大丈夫だとは思うが、さっきの電話の亮はどこか感じがおかしかった。

 なんと言うか、いつもよりも積極的だったというか……。


「……やっぱ、亮がデートしようとか言ったの、幻聴だったんじゃないか?」


「失礼だなー、そんなわけないじゃん」


「だよなー。そんなことあるわけ──!?」


 オブジェに背を向けて立っていた刃は、後ろから声をかけられるとは思わなかった。


「りょ、りょ……う?」


「ばぁ! 驚いた?」


 刃が急いで振り返ると、そこにいたのは確かに亮だった。オブジェの端から顔を覗かせているその顔を見間違うはずが無い。

 しかし……そう思っても確認せずにはいられなかった。


「なぁ、亮」


「なに、刃君」


「りょ……亮、だよな?」


 いつも見ている亮と今日見ている亮は、まるで別人だった。もちろん、いい意味でだ。


「あははは、なにそれー」


 そう言ってひょこっとオブジェの影から出てくる亮。

 昨日会ったときの亮の服装は亮のイメージにぴったりで、清楚な感じのスカートも犬を引いている姿も様になっていた。

 しかし、今日はそんな純白女の子モードとは打って変わって、カジュアルスタイル。


 白のタンクトップの上に黒のVネックニット。それに水色の斜め掛けバックを掛ける。

 頭にはグリーン系のチェックのキャスケット。その中に髪を上げて纏めているみたいだ。

 下もスカートではなく、フルレングスパンツ。その中に手を突っ込んで、亮は微笑みかけてくる。


「……今日も寒いね」


「あ、あぁ。そうだな……」


 首を傾けて、ニッコリ笑ってそう言う亮。なんだろうか、今日の亮には何故かいつもよりも色気を感じる。


「そんなにジィッと見ないで。恥ずかしい」


「えっ!? わ、悪い!」


 いきなりの「恥ずかしい」発言で何故かこっちまで恥ずかしくなってしまった。


「……それで、その子は?」


「あぁ、言い忘れたんだけど実は……」


 そう言いかけたところで、違和感に襲われる。


「『この子は』? 藍に決まってるだろ?」


「あ……あぁ、藍ね! そうだったそうだった!」


「……それに、今日は藍に飛び付かないんだな。それに『藍ちゃん』じゃなくて藍って呼び捨てにするのも珍しいような──」


「そ、そんなことないってば!」


 そう言うと亮は刃が抱き抱えていた藍を奪いとり、頬をすりすり。


「今日もかぁわいいなぁ~、相変わらず、藍ちゃんは!」


「……あい?」


 いつもだったら喜ぶ藍の表情も微妙そうだ。でも、あれはどこからどう見ても亮本人に見えるし。


「(……考え過ぎ、か?)」


 とりあえず、今は考えていても仕方ない。今は藍のことを誤魔化しておかなければ。


「てか悪いな。藍のこと言い忘れて。じ、実は今俺ん家で預かってて……」


「そっか。わかった、大丈夫!」


「……え?」


 そこで刃の疑念はさらに強まる。やっぱりおかしい。

 藍は藤先生の親戚だという話になってるのに、うちで預かっているなんて理由をやけにあっさり受け入れている。


「それより、今日は一緒に付き合ってよ。ちょっとお買い物したいんだ」




          ✩




「かっわいぃ~! この色、このデザイン!」


 そういって亮は黒のシャツやら最新のファッションに興味津々。目をキラキラ輝かせる。


「……こういう店、めちゃめちゃ居づらい」


「アーーイ!」


 ましてや子ども連れ。亮とこんなお洒落な店に入るとは思わなかった。


「どうかな、刃君。似合う?」


 そう言って刃に服を自身にてがって見せてくる亮。正直に似合っている。似合っているのだが……。


「あっ、あぁ。似合うよ、とっても……」


「やったぁ!」


 ただ、亮の趣味とは少し違う感じがした。今までのは見た目で言えば少しクールな服で、亮はもっと可愛い服が好きなんだと思っていたが……。

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