第九話
2025年7月31日
面談を終えた帰り道、あの日を思い出しながら歩いていた。
あの日、あの能力に出会えてよかったと、心から思う。
もちろん成績が上がったのもそう。だけど、漫画を記憶していくことで授業中に暇が潰せたり、クラスの女子を合法的に盗撮したりと、とにかく俺の人生は上手くいくようになった。
もし神様が与えた能力だとしたら、こんな使い方絶対良くないだろう。
だが、俺を選んだやつが悪い。俺は与えられたものを存分に活かしているだけだ。与えられた持ち味を活かせ、なんて、耳から流れるような凡庸なキャッチコピーに今は賛同している。俺は、俺の持ち味を活かす。それでこれまでとの差を埋めてやる。
もちろん、次に狙うのは夏休み明けの実力テスト。
……進学校に入ってから、それまで築いてきた自信は地に落ちた。小学校でも中学校でも成績はトップクラスで、自分は天才だって、そう思っていた、というかそう思って当然だった。
ただ、それは田舎の少人数のコミュニティだからで、人が多ければ俺よりもできるやつなんて数えきれないほどで。俺の才能はどこでも通用するようなものではなかった。
でも、今回こうやって初めて二桁に乗る順位をとってみて、あのころのぎらぎらとした気持ちを思い出した。
学生にとって、勉強というのはすべての基盤で、それができれば、他が駄目でも許されるし、逆もそう。だからこそ、きっかけは謎の能力が目覚めたことだったにしろ、改めて、もう一度自分のやるべきことを見つめ直す夏休みにしよう。
自分がこれから過ごす三十日間に対して、燃え上がる闘志を抱いた俺は、ゆっくりと家に帰って、寝る前に今日脳内に収めたクラスの女子の写真を見返すのだった。




