第三十三話
2028年9月26日
「はっ!」
目が覚めた。
これこそが本当に現実。明晰夢でも明晰夢世界でもない僕が本来在るべき世界。
体の半身にかけられたシーツをうざったく撥ね除けて、10年ぶりに外へと歩き出す。
乾いた部屋の空気を肌身に感じながら、やけに大きな窓を眺める。
外は変わらない。いや、変わっているのかもしれないけど、僕には分からない。
病室から外を見ていると、誰かが僕の一室に入ってきた。
「え? 候樹、お前」
変わっている。これは前を覚えているからなのかもしれないが、強くそう感じたのは確かだ。
「あ、父さん」
やけにあっさりした僕の返答には数秒戸惑っていたが、やがて僕と話すときの自分の振る舞い方を思い出したのか口を開いた。
「目覚めたんだな」
「らしいね」
10年ぶりの再会でありながら淡々と言葉を交わす姿は、傍から見れば奇妙に映るだろう。
しかし、これが親子の会話なのだ。
もう一度ベッドに戻って、そこに腰かける。父は近くにあったなんでもない椅子に収まった。
「お前が寝ている間、いろいろなことがあった」
ありきたりな、しかし自分で食べたことはなかったフルーツ盛り合わせと共に父の話を聞いていた。
「全部を話していたらキリがないから、いま最も重要だと思うことだけをかいつまんで話そう」
ああ、おそらく僕が聞かされたことだな。
「いま、人類は絶滅しそうなんだ」
予想は当たったが、父のさらっとした言い方に意表を突かれた。
102340年5月8日
「あ、当時のそこら辺の細かい事情はこれを読んだ方が早い」
博士は、僕が今どこを読んでいるのか把握しているようだ。
「はあ、ありがとうございます」
勧められるままにそれを読み始める。




