第十八話
2026年7月7日
「はあ、終わったー怖かったよー」
「でも、面白かったでしょ?」
「まあ、後半は、そこそこ?」
「何で疑問形なのよ」
うふふ、と真美は嘘みたいにかわいらしい笑い方をする。
「ゆいはさーあんなばっかり見て怖くないの?」
「あんなのって……。うーん、どうだろ。あんまりかも」
「すごいねー! やっぱりいっぱい見てるからってこと?」
「うーん、というか、怖くないからいっぱい見た、ようなところもあるし」
「へー」と自分から振った話にもう興味はないようだ。
怖くないから見てる、というのはそうかもしれない。別にこういう作り物の怖い奴じゃなくても、あたしは教室に虫が出ても驚かないし、感動する系の作品を見ても心が動いたことはないし……。でも、そんなこと言ったらカッコつけてるみたいで、誰かに伝えたことはないんだけど。
笑いが表情に三割ほど残った状態で、ふと立ち上がる。
「はあ、ちょっとあたし飲み物買ってくるね。なんか、欲しいものある?」
「えー、ありがと。じゃーあ、アイス買ってきてもらってもいい? チョイスはお任せするからさ」
「うわ、センス試されてんじゃん。こういうとき何買ってきても不正解なんだよな」
アウターを羽織って、かちゃりとドアを開ける。
「そんなことないよー。ちゃんと正解はあるって」
「はいはい、分かったから」分かったから、は体の角度的にほとんど外に向かって言ってるようなものだった。真美は察してもらたい体質なんだな。
部屋にスマートフォンを忘れてないことを確認する。ちょっと前から、なんかかっこいい感じがして、現金を捨ててID決済にしてみたけど、決済音が心地いいだけで何か利点がある感じはしない。
そのまま、着信履歴を見る。あの人はバレたくないとか言っていつもLINE使わないから、もう親との連絡でしか使わない標準の電話アプリで連絡を取る。
やっぱり、15分前に着信があった。一応周りに注意してその番号にかける。歩きながらスマホを耳の近くにやり、そこから聞こえてくる規律の取れた呼び出し音の中に彼を見つける。
「お、おつかれー。今どんな感じー?」
「いま、映画見終わって、コンビニに飲み物買いに行ってるー。ふふ、ちょうど電話来てるかなと思ってさ」
そうくんの声を聞くと安心する。
「この後いつぐらいに来れるの?」
「えー、気が早いよ」
そうくん、前のときは都合が合わなくて会えなかったから、かなり、溜まってるのかな。
「お酒買って、で、あの子お酒入ったらすぐ寝ちゃうからー、一時前ぐらいにはそっち行けそうかも」
「えー俺待ちきれねえよ」
「そんなかかんないって、もうちょっとのしんぼ、だから」
「はいはい、じゃあ、期待して待ってるわ」
それに応答して電話を返す。
あたし期待されてるんだ、親友の彼氏に。




