表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/21

8話 オンボロ橋とおもちゃの山

 俺が目を開けると、目の前にキツネの大きな顔があった。どうやら俺は仰向けに倒れていたようだ。キツネは俺の顔をまじまじと見ていた。


「こうやって再会するのも二回目だね」とキツネは顔を俺から離して言った。


 俺は体を起こして周りを見渡した。すると、ドングリ池の傍でリスが虹色に光る玉を高く持ち上げているのを目に入った。その玉はリスと同じくらいの大きさであり、光を放つというよりは、七色の発光体が玉の中で複雑に絡み合いながらうごめいているようだった。その不思議な美しさは、翠色に輝く(にじ)()や、あまりにも透き通りすぎているドングリ池に劣ることなく、またも俺の口を呆然と開けさせた。そして虹の水晶は、リスやコマドリだけでなく、敵だったヘビさえも見とれさせたのである。


「僕の勘は正しかったみたいだよ。どうしてかわかんないけど、君には自分の名前を思い出してほしいと思ったんだよね」とキツネはにっこりと笑みを浮かべて言った。


 俺はキツネの言葉に違和感のようなものを覚えた。しかし、その正体はわからなかった。何か矛盾しているような、奇妙な感覚を持ったのだ。


「それで、きっと君は自分の本当の名前を思い出したんだよね? どんな名前なのか教えてよ」


「ああ、思い出したよ」俺はゆっくりと立ち上がった。そこで他の動物たちは俺が目を覚ましたことに気付き、皆こちらに顔を向けた。そして、俺ははっきりとした声で名乗った。「俺の名前はルカ。誰かが俺をそう呼んだ」


「おい、あいつはニンゲンじゃなかったのか?」とヘビがリスの耳元で小さく尋ねる。

「うるせぇ、とにかくあいつはルカなんだで」リスはヘビの方も向かずに適当に答えた。


「ルカ! 君はルカ君っていうんだね!」キツネはキャッキャと自分のことかのように喜ぶ。

「ラララ~、ラララ~♪」コマドリも歓喜の歌なのだろうか、翼をばたつかせて歌った。


 俺は申し訳程度に微笑んだ。しかし、その笑みは不満を隠したものだった。皆は喜んでいるが、俺にはまだ疑問が残っていたのである。自分の名前は判明した。気を失っているときに見た夢のようなものに現れた二人も、おそらく自分の両親だろう。では、自分はどうしてここにいるのだ? そして、両親はどこにいるのだ?


「それじゃあルカ君、虹の水晶も手に入れたことだし、次は根っこ広場に行こうか」キツネはテンションが上がっているようだ。常に体を上下に揺らしている。

「うん、行こう。俺ももっと自分のことを知りたくなった」



 俺たちは一列に並んで再び森の中を歩んでいた。前からキツネ、俺、そしてどういうわけかついてきたヘビと、それに乗ったリスという順である。ヘビは移動する前に、リスを背中に乗せて移動することを条件に自由の身にされたようだ。コマドリはドングリ池までの道のりと同様に俺たちの上空を飛んで移動した。


「根っこ広場に行くにはオンボロ橋を渡る必要があるんだけど、高い木に登ったルカ君なら大丈夫だよね?」とキツネが歩きながらこちらを向いて尋ねた。

「大丈夫だと思う」

「おいおい、あまりオンボロ橋を甘く見ない方がいいで」後ろからリスがせせら笑うように話しかけてきた。「オンボロ橋は足場が悪くて、揺れも激しいで。オイラは小さいから大丈夫でが、あんたはそこそこでかいから怖いでー」

「でもあそこはどんなにボロボロでも壊れることはないじゃ。だから足さえ踏み外すことがなければ大丈夫じゃ」ヘビは同行するようになってから急に親切になった。その態度にリスは若干気味悪そうな顔をした。

「オンボロ橋は面白い遊びもできるから、ちょっと遊んで高さに慣れてから渡ることにしよっか」キツネは顔を前に向き直す。そしてワクワクした語調でこう言った。「ふふふ、ちょうど見えてきたね」



 オンボロ橋は本当にボロボロの吊橋だった。今にも壊れてしまいそうで、逆にこの状態に保たれているのが不思議なほどだ。高さもなかなかのものである。川の流れは穏やかであるが、橋から落ちたらひとたまりもないだろう。川沿いには流れてきた動物たちのための石の階段が設けられているが、いたるところに苔がむしてある。どうやらこの橋といい、階段といい、かなり昔に作られたもののようだ。そして、一番気になるものが橋のすぐ傍にあった。一本の釣竿と、けん玉やお手玉といった人間が扱うおもちゃの山である。


「これは、一体?」俺は思わず心の声を漏らしてしまった。

「やっぱり気になった? これらはね、川から釣れた謎のものだよ」キツネはウインクをして答える。そして、おもちゃの山からおしゃぶりのようなもの――いや、おしゃぶりそのものを取り出して俺に見せた。「ほら、触ってみて。ここ柔らかいんだよ」


 俺はなぜか、懐かしい感じがした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ