14話 根っこの暴走と勇気持つ者たち
昇竜の勢いで宙へ躍り出た根っこたちを見て、リスとヘビは目を見張った。一方、アライグマは一瞬だけ目の前の根っこが昇るのを目で追ったのち、鋭くこちらへ目を向けた。傍にいたキツネも虚をつかれたような顔で俺の方を見た。俺は固い意志を持ち、ただアライグマ一点を見つめていた。――嘘を叫んだのは蛇ではなく、俺だったのだ。
「貴様、どういうつもりだ!」アライグマが俺の方を見て激しく咆哮する。
「そうだで、何しているんだで!」リスも振り返り、動揺しつつも俺を責め立てる。
キツネは何も言わなかった。目を丸くして俺を見つめ、俺の考えていることを一生懸命くみ取ろうとしている様子だ。
「何もそこまで追い詰めなくてもいいじゃないか」俺は盾にしていた岩に足をかけ、その上によじ登る。「君が小さい動物を大切にしようとしているのはわかるし、それが正しいということも理解している」
「ちょ、あんた待てって――」
「ルカ君! 根っこに捕まっちゃうよ!」
リスとキツネは俺の進行を止めようとする。しかし、足場が悪く、言葉をかけることしかできなかった。
アライグマは俺が何者なのか知ろうと老いた目を凝らす。アライグマは俺と出会ってから今まで、俺の存在をほとんど気にしていなかった。
「だけど、信念というのは、たとえそれが正しいことだとしても、他者に強制していいものではない。強制された者の行動はすべて服従となり、その者の本質は何も変わらないからだ」岩から飛び降り、アライグマに向かってゆっくりと歩み寄る。
そこで俺は根っこに捕らえられた。胴体に太い根っこが絡みつき、一瞬にして自由が奪われてしまう。叩いても引き離そうとしても根っこはびくともしない。足が地面から離されてしまっているため、逃れることも不可能だ。根っこは絶えず荒ぶっているため、激しく振り回されてしまう。このままではしばらくもしないうちに、気を失ってしまうだろう。
「あっ!」不意にリスの叫び声が聞こえた。ちょうどリスたちの姿が見えた。どうやら揺れのせいで虹の水晶が転がっていってしまったようだ。リスはそれを追いかけているところだった。
今度はヘビが何かを叫んだのが聞こえた。しかし、嵐のように根っこが動き回るため、よく聞き取れない。
*
アライグマにはヘビの言ったことがよく聞こえていた。ヘビは「本当のことを言うんじゃ! 嘘を撤回すれば根っこは放してくれる!」と言っていた。だが、根っこに捕まっている者に伝わっていないのは明らかだった。
また、アライグマは根っこに捕まった者が数メートル先まで振り回されてきたとき、あることに気付いた。
「あれは、リント……!? いや、若干顔が違うし、声に至っては全然違う」アライグマは小声で言ったつもりだったが、普段と変わらない声量で言っていた。
「あれはルカじゃ! ニンゲンじゃよ!」ヘビがアライグマの独り言に対して指摘する。
「何っ、やはりやつはニンゲンなのか!」アライグマは驚きの声を上げた。
一方でキツネはふとリスの方を振り返ったときに、リスが転がっている虹の水晶を追いかけているのに気付いた。そして、同時にリスに迫る危機的な状況にも気付いた。虹の水晶が根っこの暴走によって生じた洞穴に向かって転がっていたのだ。その奥には光が見えず、暗い闇だけがこちらを覗いている。中に入ったらどこまで落ちるか計り知れない。リスは水晶を追いかけるのに夢中で、洞穴に気付いていない様子だった。
コマドリさんを呼ぶべきか! キツネは一瞬考えたが、上空からでは間に合わないと断じた。キツネは一か八かで駆け出す。しかし、その瞬間に悟った。水晶が穴に落ちるのは避けられない、と。水晶は既に穴に入りかけていたのだ。それでもリスは水晶を追いかけている。キツネはさらに強く地面を蹴った。そして、落ちた水晶を追って洞穴に入ろうとしていたリスの尻尾を口で挟み、間一髪でリスが洞穴に落ちるのを阻止した。
「あ、穴があったのかで……」リスは大汗をかいていた。
「心臓が口から出てくるかと思ったよ」キツネも息を切らしていた。そしてこう付け加えた。「今でも出てきそうだ」
一方でアライグマはヘビの首をがしりと掴んでいたところだった。
「な、なにをする気じゃ!」ヘビは動揺する。
「ヘビ、今回はニンゲンの顔に免じて許してやる。その代わり、オレを手伝え!」アライグマはカウボーイよろしくヘビを振り回し始めた。そして、ルカを捕らえている根っこに目掛けてヘビを放った。すると、ヘビは自分でも驚くほど伸び、見事根っこに巻き付いた。アライグマは地面を蹴り、ゴムのように縮むヘビを利用して根っこに飛び移った。




