妖精ちゃんと
「落ち着いたかしら?私の名前はエミリー、この森と泉を守っているの」
「…夏目環です。何が起きてるのか全くわからなくて…!」
「ナチュ…ナ、ツメタマキ?素敵な名前ね、それよりも敬語なんてやめてちょうだい」
「環、が名前です。…本当に助けてくれてありがとう」
「お礼なんていいのよ!この泉に人が来ることなんてほとんどなかったから、お話ができて嬉しいのよ」
そう言ってエミリーはパチリとウインクをした。
「ここにいる子たちも全員紹介したいところなんだけど、まずは説明が先ね」
思ったよりも冷静な自分にびっくりしてる。
周りの妖精たちを見ると、大きな目をキラキラさせてこちらの話に耳を傾けていた。
…みんなかわいいなあ。
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「…ということなの。わかったかしら?」
「…」
ぜぇーんぜーんわかりません。うん。
…簡単に言っちゃえば、この世界と地球は繋がっていて、何百年に一回とかで地球から人が来るんだって。
大ききんが起きた時とか戦争が起きた時とか、大きな出来事のたびに。
…私が来たこの時は特に何も起きていないらしい。
ちなみに前回落ちて来た人の名前は、サクラダさんという方らしい。他にも名前を聞いたら、明らかに日本人じゃない人もいた。
そんでサクラダさんは、魔王を倒すために勇者となって戦ったそうな。サクラダさんほんとに日本人?
んで、魔王を封印して国のお姫様と結婚したらしい。なにそれすごい。
あと一番大事なことなんだけど、こっちの世界から地球に戻った人は過去の歴史の中で一人もいないんだって。
「みんな帰りたがるのよ、でも…難しいわね」
「そっかぁ…どうしよっか」
「…あっ!この国にはとっても力の強い魔術師がいるって噂を聞いたことがあるわ。なんでも不老不死らしいの。その人なら…もしかしたら何か知っているのかもしれないわ。」
進路に迷っててどうなってもいいと思ってたけど、まさか魔法もある異世界に来るとは。
そう簡単に18年間育った場所と家族と友人を捨てられるわけではない。
向こうではどうなってるのかな?捜索届とか出されちゃってるのかな。
--いい?環。物事には全部理由があるの。よく見て考えて、行動しなさい。あなたには私がついてるからね--
昔父が亡くなった時、母に言われた言葉を思い出した。父を亡くして、一番辛いのは母だろうに。私には決して涙を見せなかった強い母。
…私お母さんに似てるんだよね。負けず嫌いなとこ。
「ねえエミリー、私決めたよ。どうにかして地球に戻るよ」
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「って言ってみたけど…何してるんだっ」
私は大きなベッドの中で、ふかふかのお布団に包まれながら叫んだ。
「んー何よータマキー?うるさいじゃなーい」
「タマキちゃん…子供…早く…寝る…」
「あ…うん、ごめん」
妖精たちに怒られて、口を閉じた。
どうなったのかというと、エミリーに色々教えてもらったあと、地球に帰ると燃えていた私に、彼女や他の妖精がたくさんの料理や飲み物を運んできて、パーティが始まった。
エミリーいわく、私のことを歓迎してくれているらしい。
なんの肉かわからないステーキや、紫色をしたキノコが浮いたスープ。
見た目はアレだけど、すごい美味しかった。妖精ちゃんたちが小さな体で魔法を使ってせっせと準備をする姿は、控えめに言って超絶可愛かった。
アルコールの入った飲み物でもあったのか、私は酔いつぶれてしまったらしい。
後から聞いたんだけど、「お前は立ってるだけでいいよな!それだけで生きる価値があるんだから!くそ!お前になりたい!葉っぱなんかつけやがって!」と、木に向かって延々と悪口を言っていたらしい。
この国は18から成人らしいのでセーフ?未成年飲酒ダメ絶対!
まあ、色々あったけど妖精ちゃんたちとの仲も深まった。
後半の記憶がほとんどないのは秘密。
イスも机も私が寝ているベッドも、エミリーたちが魔法で作ったらしい。
そこらへんの木に手をかざしたと思ったらキラキラの光が出てきて、目を開けたらなんと私のサイズのイスができていた。
魔法すごすぎない?私もやりたい。
ってことで、私は今、妖精ちゃんたちと一緒にベッドで横たわってます。
何言ってるかわからないって?私もわからない。
気づいたら辺りは真っ暗になっていて、明かりは広がる星空だけ。
仰向けで寝ながら空を見ると、たくさんの星が見えた。
「…うわ、綺麗な星空…」
「…んん?タマキ?起きちゃったの?」
「起こしちゃった?ごめんエミリー。ここの星空、すっげぇ綺麗だなって思って」
「でしょ〜星は私たち妖精の力の源なの。とっても綺麗よねぇ…」
そう言ってエミリーは再び目を閉じて眠ってしまった。
写真でしか見たことのないような星空、月は2つあるし、よく見たら空の色も濃い紫だけど、なぜかひどく懐かしく感じた。
ホームシックならぬアースシック?
帰るって決めたけど、何をすればいいんだろ?
とりあえず、明日の朝になったら考えよ、今日は寝る。
「おやすみ…みんな…」
私は深い眠りに落ちた。




