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フィアー ザ・メイド 

 メイド……清掃、洗濯、炊事などの家事労働を行う、女性使用人のことである。(参考:Wikipedia)

 

 それは決して、喫茶店で働くバイトではないし、もちろん出会いがしらに冥土に送ってくるような殺し屋でもない。

 本来なら決して恐れる必要の無い人物、それがメイドである。

 ナオは廊下の角まで来ると、侵入者のように少しだけ顔を出し廊下を確認する。

 直が彼女達を恐れるのには理由がある。

 メイド達は皆そろってナオに対して過保護なのだった。

 着替え、風呂、トイレ等全てに彼女らは付き添い世話を焼いてくる。気持ちだけは17歳でいる直からすればこれは脅威でしかない。

 目が覚めた時に両親がいる。これは喜ばしいことである。

 自分の知らない家族……年上の弟がいる。まぁ、家族が減るよりはいいだろう。

 ここは、科学ではなく魔学が発達した世界である。家族が存在していることを考えたら、それもいい。

 それでも家族より長く関わった、ある人物がいないのが気に掛かるが……。

 だが、幾つのことを肯定しても、納得出来ないことが一つだけある。


(なんで、オレが小さい女の子なんだよ)


 この一点に尽きる。

 しかも、いちいち行動一つ一つを介助されていると、嫌でも実感せざるを得ない。

 だから、ナオはメイドを警戒する。彼女らも主人の命令……いやそれだけでなくナオを大切だと思うからこそ彼女達は監視を怠らない。

 二階をしばらく歩いていると、目の前にフレンチドアがある。他の部屋が一枚のドアなのに対してこの部屋は二枚のドアになっている。

 両手で力いっぱい押す。

 湿度を招かないために密度の高い重たい木材で作られた扉はゆっくりと開く。そこは、書庫というよりも机があり書斎のようになっていた。

 北側の部屋とはいえ昼ということもあり窓から光が入っている。少し薄暗くあるが文字が読めないことも無いかもしれない。


(よし、アタリだ)


 ブオドが使っているのだろうか、机の上には黒のインクと羽ペンがある。そして所狭しと本棚が並べられている。

 そして壁には、少女の絵が飾り付けてある。

 絵は天使のような白いドレスを見につけたナオエリューシアのように見えた。


(まるで遺影写真のよう……)


 ほのかに微笑む絵からは哀愁が漂う。

 ナオエリューシアは、幼いが美形だ。これからも食生活だけ気をつければ将来は見事な美人になるだろう。まぁそれが自分自身だというのが納得いかないのだが。

 ナオはため息を一つきつつも、絵の近くの本を一冊手に取った。


「読めない……」


 直からすると、見覚えの無い文字で書かれてあった。


「ナ……イド?」


 だが、不思議と読める字と読めない字があった。

 見たことが無い文字で書かれているはずなのに、何故か頭に言葉が浮かぶ。

 ナオは首を傾げる。

 その時、突然声をかけられた。


「そこにいるのは……姉様?」

  

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