―NAO―
――聞いてくれ、信じられないだろうが、オレは今、幻想やおとぎ話のような絢爛なファンタジーの世界に来ている。
直の頭にそんなどこかで聞いたようなキャッチフレーズが流れる。
広大な敷地の中に建つ大きな豪邸の窓から深窓の令嬢よろしく、ナオエリューシア・デユーイーン――愛称ナオはため息を零す。
墓地での一件のあとナオは、この豪邸に連れて来られた。まずは、風呂……というよりも旅館のような大浴場に連れて行かれリオと侍女に土まみれになった体と髪を隅々まで洗われた。
その際、直としての自分が少女となっていることを再認識したのは言うまでもない。
(思い出したくない……)
男としての直からすれば、それはもう悪夢だった。自分の体だというのにナオの白磁の裸体を見るだけで顔が上気してしまう。
その後は、何人もの医師が家に招かれ往診が何度も続いた。
結果、直は両親とまともに会話する機会も無く自分の置かれた環境を未だに理解出来ずにいる。
分かっているのは、ここが自分の常識では存在しない科学ではなく魔法と言う名の神秘がある場所だと言うことだ。
そして、鏡を見れば直とは似つかないナオエリューシアという少女が今の自分自身であり、またナオと呼ばれていると言うことぐらいであった。
(あの二人も来ないしなぁ……)
両親だと認識したブオドとリオの二人とは、あの日から二日まともに顔を合わせることが出来ずにいる。
(寂しい)
そう思う。
自分が今思っていることが直自身のモノなのか、それとも少女ナオエリューシアのモノなのか分からない。
第一自分自身に何が起こったのかがさだかでないのだから。
(まずは情報収集しないとだな)
豪邸ということもあり書庫の一つもあるだろう。
ナオは意気揚々と立ち上がり、一人で書庫を目指ことにする。
ドアを開口一番、豪華な赤い絨毯が飛び込んでくる。
ここはそんな場所だ。
(この光景はいつ見ても慣れないなぁ)
生粋の日本人である直からすれば、この西洋風の貴族邸のような光景は違和感しかない。
気持ちだけは場違いだと感じながらも、形は様になる少女が赤い花道の上を歩く。
ナオはベージュの踝まですっぽりと覆われているドレスを見に纏っていた。飾り気はあまりなく、唯一ある胸元のリボンの色もドレス同じくベージュの物である
(歩き難っ!!)
少しでも大きく歩を踏み出そうものなら裾を踏みそうになる。自然と小幅で足を擦らせる歩き方となる。それがまた大人しく見える様になっていた。
廊下は長い。窓から見たとおりここは二階である。
ナオの為に用意された部屋は日当たりが良く夕方になるまで日が入る部屋だった。
(だとしたら書庫は反対側か?)
常に日当たりが良いと言うことは、ナオの部屋は南側である。窓が無いという可能性もあるが書庫があるとしたら北側ではないかと思った。
小幅でゆっくりではあるが周りに対する警戒を怠らない。
ここには直の敵が存在する。
その名は侍女。
またの名をメイドという。




