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あ、野生の魔物が飛び出してきた!!


(なんで!? どうして? )


 直は頭の中で苦悶する。

 ナオはブオドに所謂お姫様だっこをされて運ばれている。

 端から見ればなにもおかしくは無い光景だが、直からすれば不自然極まりない。


(こんな、漫画アイツに見せられたことがある気がする)


 直と同じクラスに通う、オタクの知り合いがこういった「入れ替わり」や「女体化」といった本を見せてくれたが、その中の主人公達は次のコマでは既に慣れた生活を送っていたが……


(いやいや、無理無理無理!!)


 しかも、直の身に起こったのはそれだけではない。体が小さくなっているという「幼児化」までおまけに付いているのだ。

 だが、今すぐ戻りたい……とは思えない。

 目の前にいる両親は確かに本物だ。体も心も、そして魂も目の前の夫妻が自分の両親だと確信してしまっている。

 もし、元に戻れるとしても目の前にある二人を再び失うとしたら……

 とても、怖かった。



 林道も中ほどと言うほどという所で異変は起きた。

 ナオは未だにブオドに抱えられたままであった。

 違和感に気がついたのは抱えている張本人であった。


「リオ止まれ……」

「あなた? 」


 ブオドは貴族の男子である。幼少の頃から騎士の真似事ぐらい習い事でやってきた。今でも剣を振り続けている。

 だからこそ、森の奥からの気配に気がついた。

 ガサゴソと草木が揺れ始める。

 ソレは隠れながらも顔をチラリと見せた。


「ウッドゴブリンか!」


 ブオドが腰にかけていた、片手剣を抜く。幾度と無く彼の身を守り続けてきたその剣を……今は再びこの世に生を受けた彼の娘を守るために……強く、握り締める。


「キキキキキ」


 ウッドゴブリン達が一斉に威嚇の声を上げる。

 剣を抜くブオドに対して、直にはそれが危険な物だと感じることは出来なかった。

 それは自分にだけ警戒が向けられていないからであった。

 ウッドゴブリン達がしているのは、両親に対してだけである。


「ナオ、リオ下がっていろ……」


 ブオドがナオを地面に下ろしてリオに託す。


「あなたに加護を……"ナイ・ラー・デフ"」


 リオは首からかけた宝石の付いたペンダントを握り締めて"謳"う。魔法を使うための触媒と呼ばれるモノが、リオの誕生石とペンダントの装飾品のみという簡易的な物しかないので発動した魔法は簡単な物でしかない。だが、ブオドの身を包む加護はそれでも大きな落石を弾き返すほどの効果を持っている。


「……助かる」


 ブオドは苦し紛れにそう呟く。次から次へと集まってくるウッドゴブリンの数は明らかに一人で倒せる量を超えている。


「はぁああ!!」


 そこにブオドでもリオでもナオでも、またもやウッドゴブリンでもない声が響いた。


「間に合ったみたいだね。パパ」


 その人物は高く跳び上がって、ブオドの側で膝をついて着地する。


「シャルド!」

「シャル」


 ブオドと比べるとスラリと背が高く、クセッ毛の金髪を持つ男がそこにいた。ただ、スマートでもひ弱なのではなく、逞しさすら感じる。

 シャルドと呼ばれたその男は、細く鋭いレイピアを引き抜くとブオドの背後をカバーするように立った。


「事情は後で聞くとして、ママと姉様を守るよ」

「ふん、元よりそのつもり……お前の手など借りない」

「年を考えなよ」


 二人はそう軽口を叩いた。

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